監督バズ・ラーマン、主演ニコール・キッドマンという、私が大好きな「ムーラン・ルージュ」コンビの映画なので楽しみにしていたが、いまひとつだったなあ。
旧・東京厚生年金会館、日曜日の夜の試写会に、いそいそと出かけていった。
1939年、夫のいるオーストラリアに行ったイギリスの貴婦人サラ・アシュレイ(ニコール・キッドマン)が、その領地を訪れると、夫は亡くなっていて、彼の代わりに1500頭の牛の大群を9000キロ離れたダーウィンの町まで運ばなければならなくなる。
牛追いの旅のリーダーになるのが、ドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)。
オーストラリアのカウボーイの旅みたいな話にもなるが、これを妨害しようとする悪者がいるわけです。
そして、牛の大暴走が起きる。ここが映画中の、いちばんのハイライトだった…あとで考えてみると、私にとっては、そうだった。
崖に向かって走る牛たち。止めないと、みんな落ちてしまう。このシーンはスリルがあった。
先住民のアボリジニとの混血の子ナラ(ブランドン・ウォルターズ)が、しだいにサラの息子のような存在になっていくが、彼のおじいちゃんが不思議な人で、なんだかスピリチュアル(神霊的)。
いつも孫を見守っている。孫がどこに行っても、絆がつながっている。
ラーマン監督は、そんなパワーをもった民族として、アボリジニに対して畏敬の念を表したかったのか。
映画の後半は、ニコールとヒューの、ちょっと「風と共に去りぬ」ふうなロマンティック&ドラマティックな展開(サラの名字のアシュレイって、「風と共に去りぬ」でも主役級で出てきたしね)があり、やがて太平洋戦争における日本軍の爆撃機による空襲を迎える。
日本がオーストラリアを空襲したなんて知らなかった。なんという無知な私。
観ていて、やはり心はざわつく。戦争だから仕方がないと言い訳はできるが…。
「バズ・ラーマンの映画」として見た場合、なにか普通すぎると感じる。
人物の行動は、いろいろとステレオタイプ(型にはまったような感じ)だし。それを狙ってもいるのだろうことは分かるが…。
オーストラリアの自然や歴史を見せながら、ドラマを展開するだけなら、他のどの監督でもできるのではないか。もうちょっと、彼ならではの何かが欲しかった。超個性的な「ムーラン・ルージュ」に、いつまでも、とらわれていてはいけないのだろうけれど。
ラーマン監督は、人工的に作りこまれた映画のほうが合っているのではないか。大自然を舞台にした映画で特色が出るのだろうか、ということ。
とはいえ、悪くはないですよ。2時間45分もの間、飽きもしなかったし。
劇中で上映されていた映画が「オズの魔法使」(1939年)。
これは嬉しい。ジュディ・ガーランドが歌う場面が映るのは感涙もの。
サラがナラに、こういう歌なのよ、と思い出しながら、あんまり上手でもなく歌うところは、おかしかった。
なにしろニコールの歌の上手さは「ムーラン・ルージュ」で証明済みなのだから、これは一種の楽屋オチともいえる。
また、「オズの魔法使」は、監督がビクター・フレミングで、彼は「風と共に去りぬ」を最終的にまとめた監督でもある、というリンクもあるわけだ。
ニコール・キッドマンやヒュー・ジャックマンを観賞したい方、オーストラリアの歴史(の一部)に興味がある方には、おすすめ。
…とはいえ、私の感想などは、あまり参考にしないでくださいな。
2月28日公開。