おくりびと

監督 滝田洋二郎
出演 本木雅弘  広末涼子  山崎努  余貴美子  吉行和子  笹野高史  杉本哲太  山田辰夫  橘ユキコ  峰岸徹
脚本 小山薫堂
撮影 浜田毅
編集 川島章正
音楽 久石讓
2008年 130分
アカデミー賞…外国語映画賞
評価☆☆☆★


観に行ってしまったよ。アカデミー賞で外国語映画賞をとった日本映画。ミーハーだからさ〜。
受賞効果で、上映館も増え、お客さんもいっぱい。

オーケストラでチェロを弾いている大悟(本木雅弘)。でも、いきなり楽団解散の憂き目に遭い、職を失う。
妻の美香(広末涼子)といっしょに故郷の山形に帰った彼は、「旅のお手伝い」という宣伝文句が書かれたチラシ広告の社員募集を見て面接に。あっという間に採用されるものの、仕事を詳しく聞いてみると、それは納棺という仕事だった…。

納棺師という、あまり知られていない仕事に着目したのが、なんといっても素晴らしい。
私にとっては、ああ、こういう仕事もあるんだなあと目を見開かされる思いだった。
これは、本木くんがあたためていたアイデアだったそう。

奥さんや友人が納棺師の仕事を嫌うのが、よく分からない。いきなり、よりによって、夫が、友が、そんな仕事に?と思ってしまったわけだろうが、あまり説得力がないように感じる。私が一般的じゃないのか? 死に関することが、けがらわしいとは思わないし。
劇中、死んだ人間でメシを食ってる、とも言われてしまう納棺師だが、それが不当な言い分であるのは、いざ彼らの仕事ぶりを見てみれば分かる。
亡くなった人の最後の身支度をきれいに整えてあげるという、人間の尊厳にかかわる立派で大切な役目だと理解するのだ。

ユーモアがあり、たっぷり泣けもする。観終わってから、トイレで鏡を見たら、目が赤かった。
エンディングになって、え、ここで終わり? 早かったなあと感じたし、楽しんで感動しながら観ていたのは間違いない。
山崎努、余貴美子は文句なしに役柄をこなしているし、納棺の儀の所作は美しいもので、芸術のようだと知ることができた。

ただ、たとえば、大悟たちが帰るまで、無人の実家はどうやって維持していたのか、なぜ外でチェロを弾いているのか(心の内面を表現するイメージ的な意味を含んでいるのだろうとは思うが)、なぜ例のDVDを無用心に家に置いておくのか、など説明不足だったり真実味に薄かったりご都合主義的だったりと、甘い物語展開がちょっと気になるが…。

大悟は妻に隠し事をしすぎ。チェロのときだって高価な買い物なのに妻に言っていない。ひとりで全部背負ってしまうところがあるから、と他の登場人物から説明ともとれる言葉があったが、納棺師の仕事のことといい、秘密にしすぎでしょう。
もしかして、妻が理解してくれないから、などと勝手に「言い訳」を作って、面倒なことから逃げているような気さえする。

そんなこともあるけど、アカデミー賞外国語映画部門では、他の候補が笑えるところがない作品ばかりだったという話も聞くし、不況や閉塞感のあるアメリカの今の気分として、心に響くこの映画の受賞は、もしかして当然だったのかも。
選考委員にお年寄りが多そうなのも、死を身近に扱った内容がプラスに働いたか。

本作に出演している峰岸徹さんは去年の10月に肺ガンで他界したが、それを思うと何とも言葉がないような役どころだった。




〔2009年3月7日(土) 新宿ピカデリー〕


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