ワルキューレ

VALKYRIE
監督 ブライアン・シンガー
出演 トム・クルーズ  ビル・ナイ  ジェイミー・パーカー  トム・ウィルキンソン  トーマス・クレッチマン  ケネス・ブラナー  カリス・ファン・ハウテン  テレンス・スタンプ  エディ・イザード  クリスチャン・ベルケル
脚本 クリストファー・マッカリー  ネイサン・アレクサンダー
撮影 ニュートン・トーマス・サイジェル
編集・音楽 ジョン・オットマン
2008年 アメリカ・ドイツ作品 120分
評価☆☆☆


ヒトラー暗殺計画。失敗するのは歴史の事実として分かっているが、なるほど、そういう点でサスペンスをつくって引っ張るのかと、飽きずに観ることはできた。

映画が始まった早々は、出てくる文字がドイツ語っぽい、たぶん。それが英語に変化していく。「ワルキューレ」というタイトルも同じく。
そしてセリフがドイツ語だ。トム・クルーズがドイツ語をしゃべっている! そのドイツ語が、やがて英語になっていく。
これは、ほんとうはドイツ語なのだけど、分かりやすくするために英語に変更しました、という宣言(言い訳?)をはっきり見せたのだと私には思えた。

英語を使うのは、英語のほうが客を呼べるという理由が当然あるだろう。英語圏の人たちは、外国語で作ってあって英語字幕をつけた映画は、観にこない人も多いのではないだろうか。字幕に慣れている日本人とは違うと思う。吹替版を作るのも、めんどくさいしね。
ちなみに私は、英語圏以外の国が舞台であって本来はその国の言語が使われるべき映画であっても、別に英語でもかまわない、という考えだ。だって、たかが映画なのだから。(されど映画、でもあるが。)

さて、映画の中身だが…。
独裁者ヒトラーに反対する人間が、ドイツ国内にもいるのだということを知らしめるため、ヒトラー失脚を目的にするグループがあった。
かねてからヒトラーに批判的だったシュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)は、彼らの仲間になる。
そして彼が考えたのは、非常時の作戦である「ワルキューレ」を利用するというもの。それがどんなものかは書かないでおくが、まずヒトラー暗殺から始める方法だった。

暗殺計画が、うまく行くか行かないか、というスリルを複数回見せてくれたのはGOOD。
作戦というものはパーフェクトとは限らない。それがよく分かる。それでも、やるしかない状況だったということか。
実際、映画を観ていると、これは暗殺方法という肝心なところで問題がある作戦に思えた。

主演のトムちんは、シュタウフェンベルク大佐をかっこよく演じているが、人物像となると描き方が浅い。映画として、どんなことが起きたのかに力を入れたのだろうが、もう少し、家族のことでもいいから個人的な深みを見せてほしかった。
奥さんのニーナの登場場面は、ほとんどない。「ブラックブック」のカリス・ファン・ハウテンが演じているのに、もったいない。ただ、逆に出番が少ないから、いい女優でなければ印象に残らない、という面もあるけれど。

脇を固める俳優陣は、いい味。大事なところで判断に迷ってしまうビル・ナイ、見るからに二心(ふたごころ)ありそうな(=裏切り心がありそうな)トム・ウィルキンソン、いかにも中間管理職軍人なトーマス・クレッチマン、えらそうなケネス・ブラナー(最初と最後しか登場しなかったような?)、犬のように忠実な部下ジェイミー・パーカーなど。

それなりに楽しめるけど、終わってみると心に残らないなあと。
クーデターの失敗が、どのように生まれるのかの一例を見せてもらったけれど、プラスアルファのものが感じられず…
どきどき感が、暗殺に関する部分以外では不足気味に思えたせいか。
史実を描くのに力を注いだら、娯楽的な盛り上げとは両立しづらいだろうけど…。

音楽と編集を担当するという珍しい形で仕事をしているのが、ジョン・オットマン。本来は音楽のみを担当することが多いが、彼が音楽と編集の両方を担当している例は、調べてみると他に「ユージュアル・サスペクツ」(1995年)、「X-MEN2」(2003年)があった。どちらもブライアン・シンガー監督作品だ。この人、シンガー映画の常連みたい。
編集と音楽を兼任すると、編集しながら曲をつけられて便利かも!?

また、映画館に行くたびに、といっていいくらい予告編をさんざん見せられていたので、映画を観ているときに、あ、ここは予告編にあったぞと、いちいち気がついた。
そして分かったのは、予告編って、映画の中の話の流れと全く関係なく、映画のさまざまな一部分を持ってきて、うまくつないで、予告編として面白く見られるものに再構成している場合がある、ということだった。




〔2009年3月29日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋〕


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