ロード・オブ・ザ・リング

THE LORD OF THE RING : The Fellowship of the Ring
監督 ピーター・ジャクソン
出演 イライジャ・ウッド  イアン・マッケラン  ヴィゴ・モーテンセン  ショーン・ビーン  オーランド・ブルーム  ジョン・リス=デイビス  ショーン・アスティン  ドミニク・モナハン  ビリー・ボイド  イアン・ホルム  クリストファー・リー  リヴ・タイラー  ケイト・ブランシェット  ヒューゴ・ウィービング
音楽 ハワード・ショア
原作 J・R・R・トールキン
脚本 フィリッパ・ボーエンズ  フラン・ウォルシュ  ピーター・ジャクソン
撮影 アンドリュー・レスニー
2001年 アメリカ・ニュージーランド作品 178分
ナショナル・ボード・オブ・レビュー…助演女優(ケイト・ブランシェット、受賞対象作品は他に「耳に残るは君の歌声」「シッピング・ニュース」)・美術・特別映画製作者賞(ピーター・ジャクソン)受賞
ロサンゼルス批評家協会賞…美術・音楽賞受賞
アメリカ映画協会賞…作品・美術・特殊効果アーティスト賞受賞
全米放送映画批評家協会賞…作曲・主題歌(“May It Be” エンヤ)賞受賞
英国アカデミー賞…作品・監督・ヘアメイク・視覚効果・観客賞受賞
アメリカ映画俳優組合賞…助演男優賞(イアン・マッケラン)受賞
シカゴ批評家協会賞…作曲・撮影賞受賞
アカデミー賞…作曲・撮影・視覚効果・メイクアップ賞受賞
評価☆☆☆☆

ジョン・ロナルド・ローウェル・トールキンが1954年に発表した、ファンタジー小説の名作「指輪物語」の映画化。
原作がとてつもない長さのため、3部作で製作され(撮影はすべて終了している)、この作品は、第1部になる。

ミドルアース第3紀。冥王サウロンによって作られた、魔力を秘めた指輪が、長い時を経て、ホビット族のビルボ・バギンズ(「エイリアン」「炎のランナー」のイアン・ホルム)の手に渡る。彼は111歳の誕生日に、指輪を養子のフロド(「アイス・ストーム」「ディープ・インパクト」のイライジャ・ウッド)に残して村を去る。
魔法使いのガンダルフ(「ゴッドandモンスター」「X-メン」のイアン・マッケラン)は、一度は戦いに敗れて消滅したサウロンが復活しつつあり、指輪を取り戻そうとしていることを知り、フロドに指輪を守って村を離れるように進言する。

ここから、フロドにホビット族の仲間3人、そして、馳夫(映画では韋駄天と訳出)アラゴルン(「G.I.ジェーン」「ダイヤルM」のヴィゴ・モーテンセン)を加えて、エルフの里、裂け谷までたどり着く。
しかし指輪は、それが生まれた火山の滅びの亀裂に投げ込み破壊するしかない、ということになり、フロドが引き続き、指輪を運ぶ役目を志願する。ガンダルフをはじめ、さまざまな種族の助っ人を加えて総勢9人となった旅の仲間(これが第1部の副題)は、多くの敵の攻撃を切り抜けて目的を果たせるのか。

なんといっても、ひとつの世界を作り上げたところが、すごい。
空想の世界の話を、まるで実際にある世界のように体験させてくれる。
原作を知らずに比較ができないのも幸いなのかもしれないが、現実世界とはまるで違う世界を、ものの見事に堪能させてくれた。
ロケ地のニュージーランドの豊かな自然が素晴らしい。

そして登場人物たち。魔法使いガンダルフ役のイアン・マッケランは、賢者にふさわしい風格を備え、言うことなしに、はまっている。
彼に対抗する、悪に寝返った魔法使いサルマンに、昔のドラキュラ役者クリストファー・リーを起用したのも、にくいところだ。カリスマ性は、ドラキュラも魔法使いも似たようなものだし。
この2人の、お年寄りバトルも楽しめた。

人間族のアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)とボロミア(「パトリオット・ゲーム」「ゴールデン・アイ」のショーン・ビーン)がいい。
やっぱり同じ人間として、その人間くささに惹かれてしまうのか?

リヴ・タイラーとケイト・ブランシェットが、登場シーンは少ないが、を添える。
リヴちゃんは続編で、どう絡んでくるのだろう。いっぱい登場するのか、しないのか。原作を知らないがゆえの楽しみではある。

ピーター・ジャクソン監督は、ケイト・ウィンスレット主演の「乙女の祈り」でべネチア映画祭銀獅子賞を受けた実力派だが、過去にスプラッタやホラー風味の変わった映画も作っている。
その持ち味が、オークという不気味な風貌の種族に生かされる。
そして、善良な者にも、ほんの一瞬間現れる、「邪悪な心」の強烈なビジュアルは、ぞっとするほど恐ろしく脳裏に残る。

特撮はWETA(ウエタ)デジタルという、ジャクソン監督が設立したスタジオ。ルーカスのILMに、まったくひけをとらない魔法の映像を見せてくれる。

「スター・ウォーズ」は1977年〜1983年の3部作、そして現在進行中の3部作という構成になっているが、それぞれの第1作(つまりエピソード4とエピソード1のことだが)は、その1本だけで、ひとつの出来事に解決がついていた。
しかし、「ロード・オブ・ザ・リング」は、ひとつの出来事の途中で終わる。それは原作の長さのせいでもあり、この1本で完結した物語として評価はできない。しかし、圧倒的な表現力で怒涛の3時間を見せ切り、夢のような世界に遊ばせてくれ、続きに期待を持たせるパワーには、文句なく脱帽する。

第2作は1年後の公開らしい。テレビドラマは1週間待たされるが、この映画はその52倍近く待たされるわけだ。第2部「二つの塔」、第3部「王の帰還」へとファンタジーは続いていく。

まったくもって、壮大なドラマである。
〔2002年3月10日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕



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