第9地区

DISTRICT9
監督 ニール・ブロンカンプ
出演 シャールト・コプリー  ジェイソン・コープ  デヴィッド・ジェームズ  ヴァネッサ・ハイウッド  ナタリー・ボルト  シルヴァン・ストライク  ジョン・サムナー  ウィリアム・アレン・ヤング
脚本 ニール・ブロンカンプ  テリー・タッチェル
撮影 トレント・オパロック
編集 ジュリアン・クラーク
音楽 クリントン・ショーター
2009年 アメリカ・ニュージーランド作品 111分
好き度☆☆☆☆


南アフリカ出身の監督による映画? なるほど、ハリウッド臭が少なくて、刺激的で、とても面白い娯楽作品
カルト的な名作として残るかもしれない。

これが低予算の映画という話を聞いていたせいか、見終わったとき、なぜか「ターミネーター」(1984年)の印象と近い気がした。
メジャーでない、アイデアの面白い、注目すべき作品として残りそうな近未来SF映画、というあたりで?
「ターミネーター」の監督ジェームズ・キャメロンは、いまや大物になって、ハリウッドの大メジャー映画「アバター」(2009年)をつくり、アカデミー賞では「第9地区」と「アバター」が並んで作品賞候補になった。おもしろいものです。

ピーター・ジャクソンが製作に関わったというので、だいぶ以前から、気にはしていた映画。
とうとう公開された、その初日に観てきた。(感想、書くのが遅いよ。)

舞台は、南アフリカのヨハネスブルグ。観ているときは、南アフリカ?と少し意外に思ったのだが、監督の出身地だと知ってみれば納得だ。
街の上空に巨大な宇宙船の母艦が浮かぶ、特異な風景。このビジュアルからして、もう面白い予感。
しかも、はや20年も、そのまま浮いてるだなんて! アンビリーバブル!
自分たちの星に帰れないエイリアンたちは、「難民」となって「第9地区」に押し込まれている。てことは、それまで第1から第8まで、あったのか。
友好的だったら人類と仲良くできるかもしれないが、そうではないからトラブルは多い。人類は、ついに彼らを別の地区に「追い払う」ことにする。

この「第9地区」周辺の情景が、エキサイティング。
エイリアンが普通に地球で人間と同居しているというのが、おもしろすぎ!(同居といっても、隔離されてる気味だけど。)

引越し(追い払い)プランの責任者となった男ヴィカス。
彼をビデオに写しながら、引越しプランの記録映像を撮るという形をメインにして、映画の序盤が進む。
ここで、ヴィカスがしゃべりまくるので、ちょっと、うるさいなあ、と思った
でも考えてみれば、実際にああいう役目だったら、説明のためにしゃべるよね。しかも任命されて、張り切っているから、しゃべるしゃべる。

この引越しプランの最中に、ヴィカスに大事件が起きてしまうのだが、それは書かないでおこう。少なくとも我が家では。
知らずに観るほうが楽しいからね。

エイリアンは「エビ」といわれている。見かけがエビみたいだからだが、それは差別的な呼び方でもある。
この「エビ」、人間が演じているのかと思ったが、胴のあたりの細さなどを見ると、それは無理にも思える。いや、やっぱり入ってるのか。調べればわかるのに調べてない。
さまざまな映像の特殊技術のすごさに驚くには、もはやマヒ状態に近いのだが、それでもやはり、すごいものだと感じる気持ち、わくわく感は持っていたい。

ヴィカスの人間像がいい。ほんっとに普通の人。自分がよければいい、という何とも人間くさいこと。
ただ、彼が陥った状況を考えれば、その行動は、もっともだと言ってあげていいかも。
最後のほうは泣かせてくれるんだけどね。

人類とエイリアンの対立を、地球上の国と国の対立に置き換えてみてもいいと思うが、それは、あくまでも、そのようにも見られる、というくらいに考えておけばいいような気がする。
そんなこと考えなくたって、おもしろいんだから!

ひとりの平凡な男に降りかかった過酷な運命。
特別な存在になった彼を、世間は、どう見たのだろう。
彼自身が語らなければ、真実は伝わらないだろう。
権力がニュースを支配し、操作すれば、なおさらのこと。
(ニュースは、うのみにしてはいけない。)

なんだか、ろくなことを書いていないような、大事なことを忘れているような、もやもや感が。…なんかあったら追記すればいいか。

砲弾を左手で止めた、その姿を、俺は忘れないよ、ヴィカス。
(左手といっても素手じゃないよ。)




〔2010年4月10日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋〕


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