ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

HEADWIG AND THE ANGRYINCH
脚本・監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演 ジョン・キャメロン・ミッチェル  ミリアム・ショア  マイケル・ピット  スティーブン・トラスク  アンドレア・マーティン  アルバータ・ワトソン  モーリス・ディーン・ウィント
詞曲 スティーブン・トラスク
撮影 フランク・デマルコ
衣装 アリアンヌ・フィリップス
アニメーション エミリー・ハブリー
2001年 アメリカ作品 92分
サンダンス映画祭…監督・観客賞受賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー…新人監督賞受賞
ドービル映画祭…グランプリ・監督・批評家賞受賞
ロサンゼルス批評家協会賞…新人賞受賞
サンフランシスコ映画祭…観客賞受賞
シアトル国際映画祭…主演男優賞受賞
ベルリン国際映画祭…テディベア賞受賞
評価☆☆☆★

オフブロードウェイで2年半のロングランを樹立した、話題のミュージカルの映画化。
舞台で主役を演じたジョン・キャメロン・ミッチェルが、映画でも主演、監督をしている。

アメリカ人の父とドイツ人の母を持ち、東ベルリンで育った男の子。
彼はラジオで、アメリカのロックの洗礼を受けて育つ。
そして、父との関係から、ゲイの要素を育て持っていた彼は、アメリカの黒人兵と結婚してアメリカへ渡ろうとする。
だが当時、まず西ベルリンに渡るためにも、全裸の身体検査があった。
彼は半ば強制的にペニス除去手術を受けさせられるが、モグリの医者の手術は失敗、1インチの盛り上がりが残ってしまった。
母の名をもらってヘドウィグと名乗った彼は、アメリカに渡るが、やがて男は去る。ヘドウィグは「ヘドウィグと怒りの1インチ」というバンドを作って活動を始める。

プラトンの「饗宴」にヒントを得た「愛の起源」という歌がある。
人は、かつて背中合わせでくっついていて、4本足、4本腕、2つの顔の生き物だった。しかし、人の力の増大を恐れた神が、それを切り離した。以来、人は「失われた片割れ」(missinghalf)を求めている。
この歌は、線画のようなアニメーションで表現され、印象的だ。

ヘドウィグの人生は、不完全な「片割れ」が、もうひとつの「片割れ」を探し求める旅。
そして最後に彼がたどりつくところは…。

全編にヘドウィグが歌うロックが溢れる。
バンドに参加しているヘドウィグの新しい夫役は、じつはミリアム・ショアという女優さん。ドラッグクイーンになりたい願望を心に秘めた男、という役は、トリッキーだ。
バンドのギタリストは、作詞作曲を担当したスティーブン・トラスクで、実際に、ミッチェルの元カレということらしい。
マドンナが曲の使用許可を頼み、デヴィッド・ボウイはグラミー賞をすっぽかして観劇したというウワサのロックミュージカル。
衣装はマドンナ、コートニー・ラヴのスタイリストであるアリアンヌ・フィリップスが担当し、ヘドウィグのきらびやかな女装ファッションを魅力的なものにしている。

ずっと舞台で演じてきたヘドウィグ役のミッチェルは、さすがと思わせる演技で、ときどきハッとするほど美しかったりする。
しかし、私にはその気はないので、純粋に、いい音楽もある、(失われた片割れ)を追い求め、自己肯定(不完全なままの自分でもいいのだという気持ち)を知る映画だと思った。
〔2002年3月15日(金) シネマライズ〕



映画感想/書くのは私だ 目次へ          トップページへ