ダンサー・イン・ザ・ダーク

この映画、じつは、フジテレビの「とくダネ」で紹介されて、芸能人がぞくぞく観に行ってるとか、司会者たちが何と言っていいのか困ったような複雑な感想を話していたのを見たのが、観ようかなと思った直接のきっかけなのです。

ビョークという歌手は知ってはいましたが、曲を聴いたことも、じっくり見たこともありませんでした。
この映画、なにしろ、彼女がすごいです。主人公を演じるというより、主人公そのものになって生きていましたね。

最初は眠くなったんです。寝不足だったし、手持ちカメラでドキュメンタリーのような感じで撮っていて、観ていて疲れたのかもしれません。
ところが、最初のミュージカル・シーンに入って、私の目は、ばっちりと覚めました。それまでとの対比が鮮やかだったんです。彼女の心の中をあらわすものとして、「現実の世界」と「想像のミュージカル」、その落差は鮮やかなんですね。

とくに、ドラマからミュージカルに変わるときの、きっかけの作り方に感心しました。汽車が走るのが線路に響く音、スケッチを書く鉛筆が紙を走る音…その単なる日常の音、その音のリズムが彼女の想像力をかきたてて、音楽を生んでいくんです。これは素晴らしかったです。

話のなかで彼女は、演劇のサークル(?)に所属していて、「サウンド・オブ・ミュージック」のマリア役(映画ではジュリー・アンドリュースがやりましたね)を演じることになっています。
「私のお気に入り」などの歌の練習シーンが出てきます。
ビョーク自身のプロフィールに、2歳で「サウンド・オブ・ミュージック」を聴く(!)、なんて書いてありましたが、それを脚本にだぶらせたのでしょうか?
映画の終盤で、私は、かつてこれほど悲しい「私のお気に入り」を聴いたことはありませんでした。

話は悲しすぎます。ここまで主人公を追いこみ、いたぶる脚本(監督)に反発も感じます。
でも、人間というものの、どうしようもない悲しい面について考えさせられる映画でもありました。
彼女が選択した道、それが正しい道、正しい生き方なのかどうかは、他の誰にも決めつけることはできません。
悲しい話ではありましたが、彼女の望みも少しだけかなえられます。そこに救いは感じました。

ビョークの親友を演じたカトリーヌ・ドヌーブ、いくつになってもやっぱり素敵です。ミュージカル・シーンも少しだけ演じて、昔の「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」のことを、ちょっぴり思い出させてくれました。
ジョエル・グレイ、「キャバレー」で印象的だった彼は、いいお年でありながら、タップを披露してくれました。
デビッド・モースが出てるとは知らずに観て、似た人が出てるなと思って後で確かめたら本人でした。(笑)

それにしても、ビョークの歌って独特ですね。CD、ちょっとチェックしてみようか。

                 〔2000年12月23日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕
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DANCER IN THE DARK
監督・脚本 ラース・フォン・トリアー
出演 ビョーク  カトリーヌ・ドヌーブ  デヴィッド・モース  ウド・キア  
音楽 ビョーク
2000年 デンマーク作品  140分
カンヌ国際映画祭…パルムドール(最高賞)・主演女優賞(ビョーク)受賞
評価 ☆☆☆☆