カタクリ家の幸福

監督 三池崇史
出演 沢田研二  松坂慶子  丹波哲郎  武田真治  西田尚美  宮崎揺希  ガタピシ(犬)  忌野清志郎  竹中直人  遠藤憲一  塩田時敏
音楽 馬飼野康二  遠藤浩二
振付 近藤良平
脚本 山岸きくみ
アニメ キムラヒデキ
2001年 松竹作品 113分
評価☆☆☆☆ 

面白い! 
歌謡ミュージカルとでもいうのか。大げさに歌い、大げさに踊り、大げさに跳ぶ。
ベタだ。とてもベタだ。しかし、そのベタ具合が、おかしい。笑える。
ブラックユーモアを交えて、B級学芸会もどきすれすれを疾走する、ホラーコメディミュージカル。一流のお遊び映画だ。
くだらない、としか思えない人がいたら、残念無念、違う脳みそ。

原案は韓国映画「クワイエット・ファミリー」。それをそのままリメイクしたんじゃつまらないとばかり、ミュージカルにしよう。どうせ外国のミュージカルのようにお洒落にはできないのだから、ここは日本的に行こう。だったら、歌謡曲の大御所、馬飼野康二に曲を頼もう、と、なる。

馬飼野さんといえば、小泉今日子さんの曲をいくつも書いているので、昔から、私にとっても、おなじみの作曲家である。
「ひとり街角」「艶姿ナミダ娘」「渚のはいから人魚」「100%男女交際」…
ああ、懐かしい。
結果、歌謡曲調、演歌調、ジャズ調、サンバ調と、バラエティ豊かな曲がそろって楽しさいっぱい!

リストラに遭い、人里離れた山のなかにペンションを開いた一家の主人、カタクリマサオ(沢田研二)。妻テルエ(松坂慶子)、問題を起こして会社をクビになった息子マサユキ(武田真治)、出戻り娘シズエ(西田尚美)、シズエの娘ユリエ(宮崎揺希)、父ニヘイ(丹波哲郎)、犬のポチ(ガタピシ)、家族全員でペンション「白い恋人たち」(いかにもベタなネーミングだ!)の経営に生活をかけるつもりだ。

新しい男を探すシズエの前に現れたのは、海軍士官の服装でイギリス皇室の血統だという、いかにもうさんくさいリチャード佐川(忌野清志郎)。彼はいきなりシズエに、愛してると歌い踊り迫る。

道路もなく、客など来ないのではと心配するなか、1人目の客が来る。
喜びもつかの間、翌朝、客は自殺死体となっていた。マサオはこんなニュースが広まったら、お客なんか来なくなる、と、死体隠しを主張する。
やっと、この事故に片をつけると、今度は有名な相撲取りが、少女の愛人を連れてやってくる。
お客が来るのはいいのだが…さて、このペンションはうまくやっていけるのであろうか?

ヤン・シュワンクマイエルも真っ青のクレイ・アニメが、かなり登場し、面白い効果をあげている。
実写で撮れないようなシーンをアニメにしたという気もするが、一見の価値がある。

私は西田尚美さん見たさで映画を観たのだが、やはり丹波哲郎さんは異彩を放っていた。
歌が上手いかどうかなど、おかまいなし。その存在感はすごい。

三池監督の作品は、過去に観たことはないが、「漂流街」「殺し屋1」などのバイオレンス表現は過激というので評判だったことは知っていた。
そういう監督がミュージカルコメディを作るとは意外だが、「カタクリ家の幸福」は、みんなに観てほしいので、R指定などのつく映画にはしないでほしい、という要望が製作者側からあったとも聞く。

こんな大笑い映画なのに、最後はいきなり感動してしまった。ライフ・ゴーズ・オン。世代を引き継ぎ、人は生きていくのだ。
〔2002年3月16日(土) シネ・リーブル池袋2〕



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