ぼくのエリ 200歳の少女

LAT DEN RATTE KOMMA IN (LET THE RIGHT ONE IN)
監督 トーマス・アルフレッドソン
出演 カーレ・ヘーデブラント  リーナ・レアンデション  ペール・ラグナー  ヘンリク・ダール  カリン・バーグクイスト  ピーター・カールズバーグ  イカ・ノルド
原作・脚本 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集 トーマス・アルフレッドソン  ディノ・ヨンサーテル
音楽 ヨハン・セーデルクヴィスト
2008年 スウェーデン作品 115分
好き度☆☆☆☆


まず記録しておきたいのは、これが「映画感想/書くのは私だ」の400本目の映画だということ。
10年もやっていれば、1年に40本で400本に到達するのは当然だが、「400」というのは、多少、感慨深いところもある。
さて、映画について。

この感じ、好きだよ!

ヴァンパイアものは、もともと好み。怪奇と幻想と、女性が絡んでくればロマンやエロスまで生まれてくる。
しかも主人公の男の子が12歳で、思春期に入ったとき。同じ年齢の頃の子と出逢う。
ところが、その子はヴァンパイアだった!
2人の関係の部分と、ヴァンパイアの怖い部分が、うまく、くっついて、ひとつの魅力ある物語になっている。

男の子が、いじめられっ子であることも、性に目覚める頃の年齢であることも、その容姿も、設定としてパーフェクトではないだろうか。
ヴァンパイアの子の、12歳といえば12歳、しかし、どこか老成した感もうかがえる顔立ちにも感心。(メイクの力のせいか?)
「200歳」とタイトルにあるけど、映画の中では言っていない。「12歳くらい」と、その子が自分で言ってはいるが。

多少はホラーのようなシーンがあるけれど、必要最小限にとどまっているし、遊び的な感覚でもあり、ホラー好きには楽しめるといっていい。(私はホラー好きとはいえないけど、楽しい。)
ヴァンパイアの子(年齢としては「子」じゃないけど、見かけ上として、以後「子」と書いておく)が人を襲って血を吸うシーンは、視覚的にも、うまい。上から覆いかぶさったり、見せなかったり。
なかでもいちばん私の好みなのが、建物の上層階の窓際で血を吸って、そのあと相手が落ちていくというもの。これは血を吸う相手にも驚かされるし、ヴァンパイアの子は上の階の窓まで飛んできた(!)わけだし、見た目も怖くて、だから美しい

怖いから美しいというのは、ラスト近くのプールのシーンも同じ。本当は、とても恐ろしいことなのだが、主人公の2人に感情移入しているせいか、美しさすら感じてしまうのだ。
いちばん最後のシーンも、私は、ああ、よかったね、と思ってしまう。その先は苦難があるかもしれないけれど。

この作品は2人の子の関係が基本。
ヴァンパイアの子にとって、生きていくのは大変なこと。助けてくれる人間がいるに越したことはない。ただし、その人間が裏切ったら、それは即時に自分の死を意味する。信頼できる者でなければいけない。
男の子との出逢いは、しかし、そうした打算はなく、男の子のほうもヴァンパイアの子との「きずな」を大事にして、しっかり守ってあげるのだろう。この子は彼にとって、たぶん初めての大切な、心を通わせた相手なのだから。

…と書いてきたが、映画を観た直後の思いを、一部、引っくり返すような事実を、あとで知った。

問題は、ヴァンパイアの子の股間が映り、「ぼかし」が入ること。
私は、あとで調べて「真実」を知ったのだが、もし本当ならば、これを知ると知らないとでは、大違いなのだ。原作では、こうなっている。パンフレットには、こう書いてある。という話がネット上にあり、私はそれを知って驚いたものだ。
感想文も、注意して書いてきた。

「ぼかし」の下にあるものを知らず、また、それが何なのかを調べずにいると、この映画は大きな部分で誤解されたままの感想をもってしまうことになるらしい。
「それ」は、日本の映倫の判断では映せないようなものなのか。本物ではなく作り物であっても? 映画の意味を曲解させることになっても?

ただ、それを知っても、映画の「好き度」は変わらない。

原題は「正しい者を入らせなさい」(?)
ヴァンパイアの子が、男の子の家に入れてもらえないと、体じゅうから血を噴き出すというインパクトのあるシーンが出てくる。ヴァンパイアは招待されないと家に入れない、という。
その意味も多少、かけてありそうだし、大きな意味では、(他人にとっては正しくなくても、)自分にとって正しい者、味方になる者を受け入れる、そういうことを指しているような気がする。ヴァンパイアの子にとって、味方を作る(引き入れる)ことは大切なことでもあるし。




〔2010年7月24日(土) 銀座テアトルシネマ〕


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