ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ

NOWHERE BOY
監督 サム・テイラー=ウッド
出演 アーロン・ジョンソン  アンヌ=マリー・ダフ  クリスティン・スコット・トーマス  デヴィッド・モリッシー  オフィリア・ラヴィボンド  トーマス・ブローディ・サングスター  デヴィッド・スレルフォール  サム・ベル  ジョシュ・ボルト  ポール・リッター
原作 ジュリア・ベアード
脚本 マット・グリーンハルシュ
撮影 シーマス・マクガーヴィー
編集 リサ・ガニング
音楽 ウィル・グレゴリー  アリソン・ゴールドフラップ
音楽監修 イアン・ニール
2009年 イギリス・カナダ作品 98分
好き度☆☆☆★


のちにビートルズのひとりとして有名になるジョン・レノンが、はじめてバンドを結成する前後、彼と母親、伯母(おば)との関係を描いた好編。

私はビートルズが大好きだが、曲を知ってはいても、メンバーそれぞれのプロフィールはほとんど知らない。
ビートルズ関連というだけで喜んで観にいったので、映画の内容についての予備知識は、まったくなかった。

16歳のジョンは、伯母夫婦と暮らしている。
あることから彼は母親の存在を知り、だんだんと彼女と一緒に時間を過ごすようになるが…。

いうまでもなく、子どもと母親との間の愛情というのは、それがうまく行かないときには、子どもの心に、とくに深い悲しみをもたらすものだろうと思う。
ジョンは母親ではなく伯母に育てられていたのだ。そこに突然、母親が現れる。
しかし、それで、めでたしめでたし、とは物事は簡単にいかない。

エルビス・プレスリーにあこがれて(ニュース映画では、マリリン・モンロー以来の衝撃、などとエルビスを紹介している)、ジョンは学校の仲間とバンドを結成する。
「ザ・クオリーメン」の誕生だ。
やがてポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンが加入する。
本作のポールは、ちょっと幼い感じを受けるけれど、そっくりさんを出演させる映画ではないのだろうから、それは気にしないことにしよう。
バンドの演奏は多くはないが(それが主題ではないし)、ちゃんと聞かせてくれて、それなりに、かっこいい

ジョンが母からバンジョーを教わって、練習していくシーンの描写は、時間処理のしかたがユニークで印象に残る。
ジョンはバンジョーから音楽に入ったのか。(真実かどうかは知らないが。)

ジョンを演じたアーロン・ジョンソンは、ジョン・レノンに声が似るところもあるように思えて、顔は違うけれど違和感はなかった。
母親ジュリア・レノン役のアンヌ=マリー・ダフ、伯母のミミ・スミス役のクリスティン・スコット・トーマスともに好演。
私はすぐに感情移入するので、映画やテレビドラマでよく泣くが、本作でも、かなり…来た

映画のタイトルにある「ノーウェア」とは「どこにもない」という意味だが、じゅんぶんな母の愛に恵まれない心は、むなしく、居場所がない(ノーウェア)状態になりがちだろう。
ジョンの青春期には、こういうことがあったのか。

ビートルズ解散直後のジョンの曲に「マザー」という名曲があり、エンディングにも流れているが、改めて、その歌詞の意味の重さがわかる。

なお、ビートルズの曲には、「ひとりぼっちのあいつ(ノーホェア・マン)」「ジュリア」もある。




〔2010年11月7日(日) TOHOシネマズ みゆき座〕


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