アザーズ

THE OTHERS
脚本・監督・音楽 アレハンドロ・アメナーバル
出演 ニコール・キッドマン  アラキナ・マン  ジェームズ・ベントレー  フィオヌラ・フラナガン  エリック・サイクス  エレイン・キャシディ  クリストファー・エクルストン 
撮影 ハビエル・アギーレサロべ
2001年 アメリカ・スペイン・フランス作品 104分
ゴヤ賞…作品・監督・オリジナル脚本・撮影・編集・美術・録音・製作者賞受賞
評価☆☆☆☆

クラシックな香気に満ちた幽霊譚。品のある美しい映画だ。

1945年。第2次世界大戦も終末を迎えるころ。
イギリスのチャネル諸島のなかにあるジャージー島。
チャネル諸島は、イギリス海峡に浮かんでいるが、フランス沿岸寄りに位置し、ほとんどフランスの領土じゃないのか?と思わせる島々だ。

大きな屋敷に、グレースは娘のアン、息子のニコラスと3人で住んでいる。
夫は戦争に行ったまま消息が分からない。
使用人募集に応じて3人の男女がやってくる。
以前の使用人は、突然いなくなってしまったのだ。
屋敷のなかを案内するグレース。
カーテンを閉ざし、光の入らない屋敷内。
暗い家のなかで、顔色も青いように見える2人の子ども。
謎めいた雰囲気が漂う。

グレース、子どもたち、使用人たち、夫。
彼らはいったい、どんな謎を秘めているのか。

ニコール・キッドマンの凛とした存在感が抜群。
時代設定に合った質素な衣装でも見事に映えて、クラシックな雰囲気で魅せるとともに、子どもを思うヒステリックさを含んだ母親の微妙な感情表現も見事だ。
子役たちと使用人たちの、もやもやと、訳ありげな演技も素晴らしい。

ここで、ある一言を言ってしまうと、たぶんネタがばれる確率が高いだろう。
だから…書きたい…が、書かない。
ネタばれページも作らない。誘惑に負けて読んでしまう人が絶対にいそうだし。

ネット上に書かれた感想を読むと、途中で分かってしまった、というものが、けっこうある。
私は素直に映画の流れに従って楽しむので、最後まで、えっ?えっ!と驚いてしまった
自然に分かってしまうのは仕方がないが、わざわざ先を読んで、それが当たって、つまらなかった、というヤツ、つまんないことしてるなあ、と思う。

思い出す映画がある。デボラ・カー主演の「回転」(1961年)。ヘンリー・ジェームズの小説「ねじの回転」の映画化で、家庭教師の女性が、住みこんだ屋敷で幽霊を目撃する話だが、美女が幽霊に悩まされるという点と、やたらに脅かさない心理サスペンス的な、品格のある正統派の怪談の雰囲気が似ていると思ったのだ。ちなみに「回転」の脚本にはトルーマン・カポーティ(「ティファニーで朝食を」「冷血」の原作者)が参加している。

アレハンドロ・アメナーバル監督の前作「オープン・ユア・アイズ」を観て、すっかり気に入ってしまったトム・クルーズは、「バニラ・スカイ」というリメイクまで作った。
そして「アザーズ」の脚本が出来たと知ると、制作総指揮のひとりに名を連ね、当時の奥さんニコールが主演することになったようだ。

監督によれば、CGではなく、役者の演技によって際立っていた1940〜50年代のホラー映画へのオマージュであり、派手な見せ場ばかりの現代のホラー映画への抵抗でもある、という。
たしかにニコールは、ヒッチコック映画におけるクールビューティ、たとえば、グレース・ケリーやジョーン・フォンテイン、イングリッド・バーグマンと同じ輝きを放っていると思う。

「アザーズ」とは、他人のことだ。
私から見れば、相手は他人。だが、相手から見れば、私が他人なのだ。
〔2002年4月27日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕



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