やっぱり、ジュリー・テイモア監督だな。このヘンな味覚は。
彼女の作品「タイタス」(1999年)を見たことがある人なら、わかるはず。
ああ、こういう感覚ね。
どこか突拍子もない場面、あっけにとられるような場面をつくるのである。
大傑作「アクロス・ザ・ユニバース」(2007年)では、そんなに変なところは目立たなかったけど、ミスター・カイトのサーカスみたいなシーンは、けっこうキテた。
だから、映画慣れしていなかったり、慣れていても、ごくオーソドックスなものにしか免疫がないと、「ナンダコレハ」と感じるに違いないのだ。
そこで乗れなくなるのか、ついていけるのか、が好き嫌いの分かれ道なのだ。
私は…好きです!
とくに、空気の精アリエル(ベン・ウィショー)のビジュアルがおもしろい!
自由自在な動きと表情。笑ってもいいよ〜、みたいな、それでいて真面目なのかもしれない、微妙な面白さ。
助けてもらったとはいえ、こきつかわれて、せっせと働く彼。
それでいいのかとも思うが、いいんだろう。(笑)
王子のヘッポコぶりにも、あきれる。まるで素人俳優かのようで、加えて、こともあろうに、歌まで!
プチ・ミュージカル化してしまうのだ。下手な歌で!
これがワザとでなくて、なんであろうか。(笑×2)
シェークスピア原作の戯曲となれば、大仰な芝居もあり、だろうから、使用人同様に扱われている島人と難破船の2人のお笑い珍道中も、考えてみれば戯曲っぽくあり、見ていて白ける1.5歩手前のおかしさ、というべきか。
しかも、このお笑いメンバーのなかには、アルフレッド・モリーナ、ジャイモン・フンスーといった実力派俳優がいるのである。嬉々として演じたのだろうなあ…。
どんと構える主役は、ヘレン・ミレン。彼女の存在感の大きさが、シェークスピアと釣り合っている。さすが。
ほかにも、クリス・クーパー、アラン・カミング、デヴィッド・ストラザーンなどといった魅力的な面々が。
復讐のために魔力を磨き、それを駆使して起きる事態。
彼女は、どこまで復讐を続けるのか。
人間は、どのように「赦(ゆる)す」のか、そのあたりが一番のテーマなのだろうが、まあ、観ていてヘンで、おもしろいから、それだけで見応えあり。(私にとっては、ですが。)