I am Sam アイ・アム・サム

I AM SAM
監督 ジェシー・ネルソン
出演 ショーン・ペン  ミシェル・ファイファー  ダコタ・ファニング  ダイアン・ウィースト  ローラ・ダーン
2001年 アメリカ作品 133分
評価☆☆☆★

いったいサムに子どもが育てられるのだろうか? という批評が、某雑誌にあった。この映画は、そこが根本的に疑問らしい。
そんな方に答えてあげよう。All you need is love. 愛こそがすべて、愛さえあればいいのだと。

サムは7歳の知能しかない。娘が生まれたときから、彼女を男手ひとつで育ててきた。
その娘は7歳になり、親の知能を越えてしまうことを恐れて学校の授業にも支障を来たし出す。
結局、今後サムには娘を育てられないと判断され、親娘は引き離されてしまう。
サムは、やり手の女性弁護士の力を借りられることになり、娘を取り戻す戦いを開始する。

親の知能が低い場合、といっても私の周囲にはモデルになるような家庭はないので、断定的なことはいえない。だが、この映画のように、親が愛情を注ぎ、子が多少でもしっかりしていれば、何とかなるのではないか。
お互いに愛情を持っているのに、離されて暮らすことのほうが、よほど精神的につらく不幸で、性格もゆがんでしまうに違いない。
加えてサムには、素晴らしい隣人、友人たちがいる。親娘が暮らしていくときに、彼らのサポートは充分に期待できる。
それに、とにかくサムは、6年間も、ちゃんと娘を育ててきたんだよ。

この映画は、いちばん大切なものが何か、を話しているのだ。育てられるのか?なんていう次元の問題じゃない。

ショーン・ペンの演技は、いまさら言うまでもないほどに、上手い。自然に上手い
娘役のダコタ・ファニングは、「ER」「アリー My Love」などにも出演した注目の子役。まったく、愛くるしくてしょうがないくらいに可愛い。もうこんな子がいたら、親だったら何でもしてあげちゃいそうだね。ダコタ嬢は、この映画で早くもいろいろな賞を取っているらしい。
そして私の好きなミシェル・ファイファー。ヘンな成り行きによって、無料でサムのために働くことになる弁護士役。キャリア・ウーマンだけど、内には弱さを隠しもっている。サムに心のうちをさらけだす場面が見せ場だ。
ビートルズに詳しい隣人にダイアン・ウィースト、娘の里親にローラ・ダーンなど、脇の配役もなかなかよろしい。

そして、私にとってこの映画の価値のかなりの部分は、全体を彩るビートルズのカバー曲のメロディによって後押しされている。
サムが娘の名前を、ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」から取って、ルーシー・ダイヤモンド・ドーソンと名づけると、その曲が流れ出す。
もう、ここから心の琴線に触れるというのか、感動してしまうのだ。どうも私は音楽に心を揺さぶられやすいのかもしれない。
他の映画でのビートルズのカバー曲では、『カラー・オブ・ハート』での「アクロス・ザ・ユニバース」や、『アメリカン・ビューティー』での「ビコーズ」は感動ものだった。

ただし、流れ出したと思ったら、けっこうすぐに消えていってしまった曲があったのは、少し残念だった。曲がメインではないから、しかたがないが。

映画が始まってから、ほとんどの間、顔は涙で濡れていた。悲しいのではなく、ほとんどは、満ち溢れる愛情と優しさとビートルズとダコタ嬢の可愛さによって流されたものだった。ユーモラスな場面も多く、親娘の別離の悲しさはオブラートに包まれ気味になり、半ば、夢のようにふわふわした気持ち。

そうだ、ミシェル・ファイファーの役名もビートルズにちなんでいるのだった。リタ・ハリスン。サムは時々彼女のことを、ビートルズの曲名の「ラブリー・リタ」と呼んでいた。ハリスンは、もちろん、ビートルズのメンバーのひとり、ジョージ・ハリスンだ。
あ、いま気がついたが、ミシェル自身だって、「ミッシェル」という曲があるじゃないか!

最後に、映画に使われたビートルズのカバー曲とアーティストを書いておこう。(発売されているCDには、もっと多くのカバー曲が入っている)

「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」 ザ・ブラック・クロウズ
「トゥ・オブ・アス」 エイミー・マン&マイケル・ペン
「アクロス・ザ・ユニバース」 ルーファス・ウェインライト
「君はいずこへ」 ザ・ウォールフラワーズ
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」 ベン・ハーパー
「ゴールデン・スランバー」 ベン・フォールズ
「悲しみをぶっとばせ」 エディ・ベダー
「ブラックバード」 サラ・マクラクラン
「マザー・ネイチャーズ・サン」 シェリル・クロウ

〔2002年6月30日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕



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