FBI(アメリカ連邦捜査局)(Federal Bureau of Investigation)の初代長官ジョン・エドガー・フーヴァー(在位1924年〜1972年)とは、どんな人物だったのか。
本作は、老いたフーヴァーが自伝のために過去を口述する形で彼の過去が語られ、一方では現在の物語も進行していくので、時間枠が自由自在に配置されている。
主要な人物はフーヴァー(レオナルド・ディカプリオ)、秘書のヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)、フーヴァーの右腕ともいえるクライド・トルソン(アーミー・ハマー)。
エンタメ要素は少なく(笑えるところなど、もちろん、ない)、真面目そのもの。
面白くはないが、決して嫌いではない。イーストウッド監督はじめスタッフ・キャストの真摯な姿勢はストレートに伝わる。
なるほど、かの有名なFBI長官とは、そういう人だったのか、と知識が増えた気がするし。真実そういう人なのかは分からないけれど。
共産主義からアメリカを守るために戦う。そのためには違法行為もする。それが正しいことか悪いことかは観客が考えることなのだろう。
社会における正義とは何だろう。
こういう生き方を、フーヴァーは送った。…と映画は提示するのみだ。
老けメイクのディカプリオ、フーヴァー本人の写真を見ると、ちょっと似た感じもある。
アーミー・ハマー(「ソーシャル・ネットワーク」では双子の役だった)の老け顔と演技は、かなりインパクト強し(笑)。老け演技がどうこうとは関係なく、ずっと力の入った演技みたいに思えてしまうディカプーより、力の入っていないように見えるハマーのほうが、どちらかといえば個人的には好み。
母親役のジュディ・デンチさんは、この母にして、この息子が…と、うなずけそうな強力さ(?)。
ナオミ・ワッツさんは、クラシックな装いが美しく、現代を舞台にしている最近の作品とは、また違って見えた。フーヴァーを支えて仕事を貫徹する責任感の強い女性の役ですね。
FBIというと、1962年のマリリン・モンローさんの死について、陰で暗躍していたという噂もあった。
フーヴァーが盗聴テープを聴く場面があったが、それはケネディ大統領暗殺のときの話だったので、どうもマリリンとは関係ないことのようだった。
映画界の人物で本作に登場してきたのは、シャーリー・テンプル、ジンジャー・ロジャース。(もちろん本人ではなく、女優さんが演じているのだが。)
資料にはルシル・ボールの名前もあるが、どこに出てきたのかな?
著名な飛行士であるリンドバーグの愛児誘拐事件や、キング牧師にもかかわっていたんですね、フーヴァー長官。
彼の同性愛説、女装趣味説は、ほんの少々ほのめかされている程度だった。