ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

THE HELP
脚色・監督 テイト・テイラー
出演 エマ・ストーン  ヴィオラ・デイヴィス  オクタビア・スペンサー  ブライス・ダラス・ハワード  ジェシカ・チャステイン  アナ・オライリー  アナ・キャンプ  アリソン・ジャネイ  シシー・スペイセク  シシリー・タイソン  メアリー・スティーンバージェン
原作 キャスリン・ストケット
撮影 スティーヴン・ゴールドブラット
編集 ヒューズ・ウィンボーン
音楽 トーマス・ニューマン
衣装 シャレン・デイヴィス
2012年 アメリカ作品 146分
好き度☆☆☆☆★


良心的なヒューマン・ドラマで、笑いも盛り込まれていて、とてもいい。
ジェシカ・チャステインさんの、マリリン・モンロー風キャラも愛らしい!

2時間26分もあると知って、観るのに二の足を踏んでいたが、まったく長さは感じなかった。
おもしろい。
今までは「ヘルプ!」といえば、ビートルズの映画だったが、これからは本作だ。(笑)(!マークの違いはあるが。)

作家志望のスキーター(エマ・ストーン)が、黒人のお手伝いさんに取材して本を書こうとする。
自分自身も黒人メイドに育てられた経験をもつ彼女。白人の家庭で仕事をしている黒人女性たちの本心は、どんなものなのか。
しかし、そんな証言を正直にしたら、雇い主の白人などの怒りを買って追い出されたり、ひどい目にあうのがオチ。スキーターに協力する人間は、なかなか現れない…。

スキーター役のエマ・ストーンをはじめ、メイドのエイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)とミニー(オクタヴィア・スペンサー)、高慢ちきな白人女ヒリー(ブライス・ダラス・ハワード)、ヒリーの元カレと一緒になったシーリア(ジェシカ・チャステイン)、ヒリーの友達エリザベス(アナ・オライリー)など、それぞれのキャラクターが生き生きとしている。(こういうのを「キャラが立ってる」「キャラ立ちしている」という。)
さらに、彼女たちの母親も、じつに味がある(アリソン・ジャネイ、シシー・スペイセク)。

そこで、はたと気づいてみると、男性陣は…スキーターの彼氏と、シーリアの夫くらいしか思い出さない。
女たちのドラマだったんだな〜。

エマ、ヴィオラ、オクタヴィアが素晴らしいのはもちろんだが、憎まれ役のブライス・ダラス・ハワードさんが、いいのだ。
ドラマは悪役が良くなければ面白くない。
彼女、こんな顔だったっけ、もっと可愛くなかった?と思うくらいだが。メイクの力?

マリリン・モンローさん(の役柄。あくまでも役柄)を思わせる、ジェシカ・チャステインさん。
外見もそうだし(顔は違うよ)、ノーテンキに明るいかと思えば、悲しむときもストレート。で、すごくいい人。
黒人差別というテーマの一方で、白人である彼女にも「差別」が向けられている。差別は黒人に対してだけじゃないんだよ、と描くバランス感覚の良さも感じる。
私はジェシカさんの映画を見るのは初めてなので、今後はちょっとフォローしてみたい。
こんなに上手な女優さんなんだね。

最後が、めでたしめでたし、で終わらないのも素晴らしい。
これが始まりで、ここから戦いが続くのだ。
押しつけがましくもなく、笑いもあって、あったかで、感動もあり、問題提起もありで、本当に上質なドラマ。
アメリカ映画の良心的な面といえるだろう。
私だったら、主演に相当する女優さん全員に主演女優賞を、助演に相当する女優さん全員に助演女優賞をあげる。

エマ・ストーンさんの声、ハスキーだなあと気づいた。
私はハスキーボイス大好き!
それでなくても可愛いし、ちりちりクセッ毛(役の上で)も可愛いし、惚れそう。
というか、惚れた。

エイビリーンが子どもに言う言葉で、"You is kind. You is smart. You is important. "(お嬢さまは優しい子、お嬢さまは賢い子、お嬢さまは大切な子)というのがあった。
このシーンだけでも泣けてしまう。
子どもには、こんなふうに、ちゃんと愛情を表現して与えることが重要なのだ。

これは1960年代、公民権運動(おおまかに言えば、黒人の権利獲得と差別撤廃を求める運動)が盛り上がりを見せてくる頃のお話。
そして今。人種差別なんて、きれいさっぱりとなくなったらいいのにね。




〔2012年4月30日(月) TOHOシネマズ シャンテ〕


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