幸せへのキセキ

WE BOUGHT A ZOO
監督 キャメロン・クロウ
出演 マット・デイモン  スカーレット・ヨハンソン  エル・ファニング  コリン・フォード  マギー・エリザベス・ジョーンズ  トーマス・ヘイデン・チャーチ  パトリック・フュジット  ジョン・マイケル・ヒギンズ  アンガス・マクファーデン  ステファニー・ショスタク
原作 ベンジャミン・ミー
脚本 アライン・ブロッシュ・マッケンナ  キャメロン・クロウ
撮影 ロドリゴ・プリエト
編集 マーク・リヴォルシー
音楽 ヨンシー
2011年 アメリカ作品 124分
好き度☆☆☆☆


“Why not?” がキーワード!?

「どうして、ここ(動物園)を買ったの?」と、ケリー(スカーレット・ヨハンソン)に訊かれて、ベンジャミン(マット・デイモン)は、こう答える。
「いけないかい?(Why not?)」

「どうしてダメなんだい?」「いいだろ?」などと訳してもいいだろうか。why not?
この言葉にあるのは「ダメ」ではなくて「やってみる」という、肯定の前向きさだ。
尋ねたケリーが、その答えを聞いて、ちょっと戸惑ったような表情をしたのもあって、この Why not? のセリフは記憶に残っていた。

映画のラストは動物園がどうなるのか、で終わるのかと思ったら、まだ続きがあった。
ベンジャミンの奥さん、キャサリン(ステファニー・ショスタク)との、「なれそめ」のことが語られるのだ。蛇足? いや、そうではなかった。
最後に、ああ、そうだったのか! と分かることがある。
こういうラストは好きだ。洒落てるし、感動的だし!

言葉といえば、ベンジャミンが息子のディラン(コリン・フォード)に、そんな言葉は使うな!というものがある。“Whatever.” だ。
「なんでもいい」「どうでもいいよ」という意味で、「アメリカ人がイライラする言葉」に選ばれたこともある、悪名高き(?)言葉。

「どうだっていいや」じゃなくて「やってみよう」な映画なのである。

モデルになった家族の話をテレビで少し見たが、実際は、奥さんが生きていたときから、動物園を経営していたようだった。
映画では、奥さんが亡くなって、環境を変えたいということもあって、動物園つきの家に引っ越すことになっている。
妻を、母を失った人々の「再生の物語」に焦点を当てた、よりドラマティックでシンプルな脚色がされているというべきで、モデルになった家族の了承があれば、映画としては正しい行き方だろう。

音楽の使い方は、さすがキャメロン・クロウ監督と思えて、すがすがしい。さわやか
クロウ監督の「あの頃ペニー・レインと」(2000年)で映画デビューした、パトリック・フュジットも出演していて、なんだか「あの頃ペニー・レインと」を、また見てみたくなったよ。

スカーレット・ヨハンソンさんは、動物の世話だけに一所懸命で、化粧っ気もないような女性を演じているが、こんな素朴な役もいいじゃないか! と新たな魅力を見たようだった。
その彼女の、たしか、姪だと言っていたような気がしたが、リリーの役が、エル・ファニングさん。たしかに、スカヨハと似た感じがあるといえば、あるような?
妖精みたいな不思議な風情をも、かもしだすエル・ファニングさんの存在感は独特。いいよね〜!
リリーとディランの恋物語も、とっても、ほほえましい。

ケリーのディランへのアドバイス、「女の子は話し好きだから、よく聞いてあげることね」。
これは、かなりの確率で、真実と思える、いい忠告です!

いいシーンが、たくさんあるけど、ひとつ挙げると。
ベンジャミンがパソコンで妻の写真をやっと見られるようになったときに、すると、もはや写真ではなくて、その風景が目の前に広がっている!
…というような映像センスは、いいなあと思う。胸にジーンとくる。

原題の「ぼくたち(私たち)、動物園を買ったよ」もいいし、邦題にある「キセキ」も、「奇跡」と「軌跡」をかけていて、いいと思う。(「奇石」じゃないよね?)
お話としては、ちょっと(かなり)ベタかもしれないが、それがどうだっていうの?(Why not?)

動物に癒されて、子役も大人もキャストが素晴らしくて、さわやかに涙を流して、感動して、あったかい気持ちになって、ああ、いい映画を観た! と思えたら、それもベストじゃない?




〔2012年6月10日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕


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