チョコレート

MONSTER’S BALL
監督 マーク・フォスター
出演 ハル・ベリー  ビリー・ボブ・ソーントン  ヒース・レジャー  ピーター・ボイル  ショーン・コムズ  モス・デフ
脚本 ミロ・アディカ  ウィル・ロコス
音楽 アッシュ&スペンサー
2001年 アメリカ作品 113分
アカデミー賞…主演女優賞受賞
ベルリン国際映画祭…銀熊賞・主演女優賞受賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー…主演女優・主演男優賞受賞
ゴールデン・サテライト賞…脚本賞受賞
全米映画俳優協会賞…主演女優賞受賞
フロリダ映画批評家協会賞…主演男優賞受賞
評価☆☆☆☆



かなりヘビーな映画である。

人間の死。
残された者が抱える感情。

哀しみ、空虚を埋めるセックス。
温もり、優しさ、庇護、擁護、癒し。生きることを求めるつながり。

再生への、細く遠い道。
いたるところにある人生から延びはじめ、いたるところへと分かれていく。

原題は、死刑囚のために死刑執行前に行なう、弔いの温情のことらしい。具体的には、家族の面会や、好きな食事の差し入れなどのことだという。
もし、カタカナにしただけの「モンスターズ・ボール」という題だったら、あまりにもわけが分からないところだった。
チョコレートは、映画のなかで効果的に使われて印象に残るもので、この邦題は、結構いい。
また、こじつければ、褐色の肌の色を意味する、ということにもなるかもしれない。

ラスト。いったいどうなってしまうのかと思った。彼女はどうするのか。映画はどう締めくくるのか。予想がつかずに、けっこうハラハラした。
そして、2人のシーン。ハル・ベリーの一瞬の表情の素晴らしさ。このシーンあってこそ、彼女のオスカー受賞は納得できる。
なんともいえない余韻を残したエンディングだった。

出演者の名前は、ビリー・ボブ・ソーントン、ヒース・レジャー、ハル・ベリーの順に出る。
ビリーとヒースは親子の役(最初は兄弟かと思っていた)。映画の重点は、まず、ビリーの一家、親子関係のほうなのだ。
男のほうの視点から物語は語られ、男が、女と出会うことになる。
ハル・ベリーの役は、だから、下手をすると、脇役になってしまいかねないものだ。
その役を、血の通った、生活感のある人間にしたのは、彼女の功績以外の何ものでもない。
夫、子ども、頼ろうとする男、それぞれに対する感情表現の違いは的確で見事なものだった。

ビリー・ボブ・ソーントンの抑制された演技も素晴らしい。親父の影響をそのままに、石頭の分からず屋を通す前半。事件をきっかけに変わっていく姿。見た目には、どっこも変わってないんじゃなかろうか、という微妙な演技?は、彼の真骨頂だ。
他の映画での演技を見ても、底の知れない俳優である。見掛けからして別人のようなときもあったし。

監督のマーク・フォスターは、ニューヨーク大学で映画を学んだという、1970年生まれの新鋭。
彼自身、兄を自殺でなくした過去を持つという。
映画で描かれる、親族を失う喪失感に重い実感があるのは、そのせいなのだろうか。
〔2002年8月10日(土) シャンテ シネ3〕



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