夢と幻想がいりまじった、ちょっとだけ怪奇な物語。
時間的にも90分ほどで、愛すべき小品という印象。
直接的な恐ろしさは期待しないのがいい。
夢か、うつつか、のなかでの少女との出会い、さらにはエドガー・アラン・ポーとの出会いによって導かれる、摩訶不思議な話を、軽〜く楽しめばよいのだ。
知っておく(頭に留めておく)と、より楽しめることは…
・本作に登場するヴァージニア(Virginia)は、自分で12、3歳と言っている。歯の矯正器具の話から、自らヴァンパイア(Vampire)みたいと言い、それから、私のことを「V(ヴィ)」と呼んで、と作家に話す。
・ヴァージニアは、エドガー・アラン・ポーの奥さんの名前でもある。彼女は、とても若くして結婚した。
・作家の娘はヴィッキー(Vicky)という。
・保安官の名前はボビー(Bobby)、作家の苗字はボルチモア(Baltimore)。どちらも頭文字はBだ。
・ポーの詩「大鴉(おおがらす)(The Raven)」では、「nevermore(二度とない)」という言葉を多用している。(劇中で、ポーがこの詩の話をしている。字幕では「二度とない」とは訳していなかったけど。)
以下、ネタばれもありつつ、箇条書き風に書き連ねてみる。
主演の作家役がヴァル・キルマー。太ってて、相変わらずというのか。売れない作家で、酒とジャンクフード(?)で太った設定と思えばいいか。笑。
エル・ファニングさんの出番は少なめなのが残念だが、窓から覗いている場面などは、いい雰囲気。
普通に会話するので、あんまり怖い存在でもない。本当に恐ろしい少女なら、何も話さずにそこにいるだけのほうが、よっぽど怖いわけで。
作家が酒好きな設定なのは理解できる。(悪い)夢を見るのに好都合だ。
さまざまな時間を示す七面の時計塔は効果的。古びた塔っていうだけで、古風な怪奇的な雰囲気だし。時間がめちゃくちゃだから、お話のなかの時間も同様なのだろう。
語りがトム・ウェイツなのもいい。観ていて、誰だこの独特な喋りは? と思っていたら、エンドロールで彼の名前が出た!
ひさびさに見た、ブルース・ダーンもいい。
作家の奥さん役が、実際にヴァル・キルマーの元・奥さんであるジョアンヌ・ウォーリーなのが、お遊び的でいい。
息が白くなると、ああ、この世ならぬ場所だな、と思える。
いきなり、かまどの火が燃え盛る! いきなり、おばちゃんが歌いだすのが、わけがわからず、いい。
昔のホラー、とくにハマー・フィルムの映画あたりにありそうな、低予算の怪奇もの風な感触も。
ヴィと吸血鬼男(?)が、バイクで疾走する、突然違和感ありなオフビート(風変わり)調がいい。
作家が新作のあらすじを書こうとがんばる場面は笑いどころ。観客はほとんど笑ってなかったけど。このあたりを見ると、コッポラ監督が楽しんで作っていたんだろうな〜と思う。
つじつまは合わなくてもいいのだろう。夢みたいな話なのだから。
雰囲気でいきましょう。
極端な話、すべてが夢オチでした、としても構わないくらいではないかな…?
原題のTWIXTは、betwixtの省略形でbetweenと同じ。つまり、ふたつのものの間。betwixt
and betweenで「どっちつかず」という意味になる。「ああでもあり、こうでもある」ということにもなる。
…と言われれば、この映画、納得できそうでしょう?