すっごく、いい!
サラ・ポーリー&ミシェル・ウィリアムズのコンビネーション、最高です!!
満たされない心。生身の人間。
彼女はその気持ちを、どうコントロールするのか。
脚本・監督のサラ・ポーリーと主演のミシェル・ウィリアムズによって、素晴らしい映画が生まれた。
サラ・ポーリーさんって、もともと女優で知られた人でしょう?
脚本も監督も、こんなにバッチリなんて、すごい才能。
簡単に言ってしまえば、不倫の迷いに陥る女性を描いたものなのだが、自分でもどうにもならない不満、空虚を抱えた妻の気持ちを、ていねいに映していく監督と、それに応えるミシェル・ウィリアムズさんの演技が抜群。
びっくりするほど、あけすけなヌードシーンは、「生身の女」を感じさせるインパクトが充分。
ひとつだけ文句を言わせてもらうと、この場面でボカシを入れなかったのに、あとから出てくるセックスシーンにボカシを入れていて、あきれてしまった。
ヘアヌードはいいが、エッチするのはダメだということですか。意味が分からんわ。
オープニング、料理中のマーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)をずっと追う。光のなかに浮き立つ腕のうぶ毛。なんとも見事なカメラ。
このシーンから始まるのは、映画の構成としても意味があって素晴らしい。
どの場面も印象的。
たとえば、歩いていく彼女の後ろを、ダニエル(ルーク・カービー)がついてくる。お互いに意識しながら…。
電話中の夫・ルー(セス・ローゲン)の口に、いたずらする彼女。アドリブっぽい気がするが、それまでとは、ころりと変わった無邪気さを見せる。
温水シャワーが、急に水になるという不具合に関する顛末。
男が自分をどう愛するかを聞いているときの、彼女の表情。
…などなど。
男がリキシャを商売にしているのも面白い。外国で商売になっているのか…。
遊園地かどこかの乗り物に、彼とふたりで乗るときに流れる曲が、バグルスの「ラジオ・スターの悲劇」。
楽しんでいた、ふたりだが、乗り物が止まるときは、いきなり。
音楽も途中で、ばっさり終わってしまう。
楽しい夢から一気に現実に引き戻されるかのように。
むなしさが胸に突き刺さる。
…演出が巧いよ…
この乗り物、あとで、もう一度登場する。
そして、そのシーンは、もう、とどめの一撃。
泣いた。
ここで映画が終わればいいなあ、そう思ったタイミングで、見事に終わった。
完璧。
不倫に走ろうかと揺れる女性。
映画を観る限り、料理中は邪魔されたくない、というくらいしかツッコミどころがなく、それほど悪い夫ではなさそうに思えるから、夫から見れば、なんて、わがままな女だ、と言われてもおかしくなさそうなはずだが。
でも、彼女の、どうにもならない様子を見せてくれる脚本、監督、女優が、うまいのだ。
人が生きていくときには、何かしらの不満があって、おかしくない。
それに向き合ったとき、どうするか。
映画のなかでも、ジェラルディン(サラ・シルバーマン)の口から、きちんと、この問題が提起されている。
ミシェル・ウィリアムズさんには、やはりビターなカップルの関係を描いた「ブルーバレンタイン」という作品があって、もしかして、こういうの得意? とも思うのだけれども、マリリン・モンローさんを演じても上手くこなすし、彼女は素晴らしい。
最後にもう一度、サラ・ポーリー&ミシェル・ウィリアムズ、すごいぞ!