いくつもの時代の話が並行して描かれ、しかも、同じ俳優がそれぞれの時代時代において、別の役を演じているという、ややこしさ…。
この映画、つい最近に映画館で予告編を見て、えー、こんなのあるんだ、ウォシャウスキー監督!? とびっくりして、観ようと決めた。
複数の話が細切れになってシャッフルされて、つながっているような状態。
ただし、ひとつの話のなかでは、時間の流れる順序を変えてはいないし、それぞれの話は楽しめる。
違う時代の話を、なぜ同じ俳優が演じているのか。輪廻がどうとかいう話が解説などから聞こえてきたような気もするが…。
たんに、たとえば1人6役で演じただけだよ、といわれても納得できるから、見ていて輪廻とは分からない。
公式サイトのプロダクションノートには、
『本作が示唆するのは、個々の人生が時代を超えて個人的な軌跡を描き続けるということだ。魂は生まれ変わり、互いの絆を再び築き直す。何度も何度も。過ちは正すことができる……あるいは、繰り返される。自由は得られるにせよ、失うにせよ、永遠に求められる。そしてつねに、愛は生き残る。』
とある。
映画を観たあとに、このことを考えてみても、なんとも、もやもやとして、つかみづらいのだ。なんとなくは、分かるが。
監督のひとり、アンディ・ウォシャウスキーは、さらに言っている。
「ストーリーが6つあるという概念を捨てることが鍵になる。それは1つなんだ」
え、そ、そうなんですか…。
わかりやすくするために、公式サイトなどからの「あらすじ」と、おもな登場人物で整理してみると…
1849年、南太平洋。奴隷売買を託された若き青年ユーイングは、ひどい拷問を見せられ良心の呵責にさいなまれる。故郷サンフランシスコに帰る船中で青年は病にかかり、邪悪な医師グースの餌食になろうとしていた…。
青年がジム・スタージェス、医師がトム・ハンクス。青年の妻がぺ・ドゥナ。
監督は、ウォシャウスキー姉弟。
1936年、スコットランド。ユーイングの航海日誌を読む作曲家志望の青年フロビシャー。父に勘当された彼は、天才作曲家のもとで夢に見た最高傑作を完成させようと苦しむ。それは、のちに幻の名曲と呼ばれる『クラウド
アトラス六重奏』だった…。
フロビシャーがベン・ウィショー、その友人(恋人)シックススミスがジェイムズ・ダーシー、天才作曲家がジム・ブロードベント。
監督は、トム・ティクヴァ。
1973年、サンフランシスコ。ある女性ジャーナリストが巨大企業の汚職を追及するが、その露呈を防ごうとする企業が雇った殺し屋に追われることになる。彼女と恋に落ちた、この企業の男が会社への裏切りを決意するが…。
レコード店で『クラウド アトラス六重奏』の話が出たり、フロビシャーの手紙が登場したり。
ジャーナリストがハル・ベリー、彼女に協力する男がトム・ハンクス、殺し屋がヒューゴ・ウィーヴィング。
監督は、トム・ティクヴァ。
2012年、イングランド。巨大企業の陰謀をあばいたノンフィクションを出版した編集者が主人公。著書を酷評した評論家を殺害した作家ホギンズの自伝は大ヒットし、編集者は大儲けとなるが…。
編集者がジム・ブロードベント、ホギンズがトム・ハンクス、女看護師がヒューゴ・ウィーヴィング(笑)。
監督は、トム・ティクヴァ。
2144年、ネオ・ソウル。地球温暖化のため地上は水没、その廃墟のうえに街がつくられている。クローンの少女ソンミ451は人間としての意識が芽生えはじめ、導かれて反乱に加わるが…。
編集者の災難を描いた映画が出てくる。
ソンミ451がぺ・ドゥナ、協力者ヘジュ・チャンがジム・スタージェス。
監督は、ウォシャウスキー姉弟。
そして遥か未来、文明がすっかり崩壊した地球。ソンミは神としてあがめられている。羊飼いの男のもとへ、進化した人間コミュニティからやってきた女が訪ねてくる…。
羊飼いの男がトム・ハンクス、訪問者の女メロニムがハル・ベリー。
監督は、ウォシャウスキー姉弟。
…と書いてみて、各話のつながりは、なんとなく、あるかな?
でも、無理やりっぽくないか? 日誌、音楽、本、映画…でつなぐって。
生まれ変わっても一緒だよ、みたいなのは、1849年と2144年のジム・スタージェスとぺ・ドゥナ、1973年と遥か未来のトム・ハンクスとハル・ベリー。ほかにもあるかどうか…。
原作本で読んだら、もっとよく分かるのだろうか。いま、理解があやふやなので、ちょっと確かめてみたい気もする。
いちばん笑えるのが、ハル・ベリーさんの医者役。なんで、あれ演(や)るん? 笑
公式サイトによると、トム・ハンクス6役、ハル・ベリー6役、ジム・ブロードベント5役、ヒューゴ・ウィーヴィング6役、ジム・スタージェス6役、ぺ・ドゥナ6役、ベン・ウィショー5役、ジェイムズ・ダーシー4役、ヒュー・グラント6役、ジョウ・シュン3役、キース・デイビッド4役、デイビッド・ギヤスィ3役、スーザン・サランドン4役。
たいしたことない、ちょい役も多いけれども。
エンドロールで、誰がどの役を演じたのか、紹介されるので、お楽しみに。
演じるほうは楽しかっただろうなあ。