かぐや姫の物語

監督 高畑勲
声の出演 朝倉あき  高良健吾  地井武男  宮本信子  高畑淳子  田畑智子  立川志の輔  上川隆也  伊集院光  宇崎竜童  古城環  中村七之助  橋爪功
脚本 高畑勲  坂口理子
音楽 久石譲
2013年作品 137分
好き度☆☆☆☆


月から来た娘は、自分らしく生きることを許されなかった。

人間らしい生き方って、なんだろう。
他者との関係、社会との関わりのなかで、人は思うがままに生きられるのか。

桜の花を目の前にした喜びから、あることによって気分が一転、落ち込んでしまうシーンに代表される、かぐやの表情の豊かさ。喜び、悲しみ、あきらめ。
こんなにも、その感情の動きを生き生きと、私の脳裏に刻みつけていった、かぐや。

物語にぴったり合った、絵のタッチが生きている。
絵の表現力、想像力のすごさは、とくに「夢」のような、ふたつのシーンで印象づけられる。

かぐやは野山を駆け巡り自然と親しみ、近所の年上の男の子をほのかに想う、活発な女の子になった。
しかし父は、彼女を京の都で貴族の娘のように育てようとする。それは娘のための豪華な衣装や大金を、天から授かったためでもある。
天の意思が「姫にお金をかけて立派に育てよ」ということだと受け取っても、おかしくはない。

だが、かぐやは都での高貴な暮らしは好きではない。
求婚に来た5人の男にも無理難題を押しつけて追い払ってしまう。
自分が願ったようには生きられない。

さて、ここで考える。
平安の昔とは限らず、自分が願ったように生きられた娘は、どれほどいたのだろうかと。
どういう身分の家に生まれるかは選べない。生まれたからには、その家の制約に縛られる。
政略結婚の道具になる、一生農民で終わる、などなど。
不自由だっただろうな。かぐやのように反発した娘もいたに違いない。

月からの迎えの一行を見ると、典雅な音楽をかきならし、いかにも穏やかで、なんだか仏教の神様っぽい…。
月の人たちは、かぐやが地上に生きるなら、やはり、優美な暮らしをさせることを望んだだろうなあ、と思えるのだ。本人の希望とは関係なく。

ここに残りたいと強く思っても、地球での記憶を消されてしまう、かぐや。まるでマインドコントロール。
でも、かぐやのことは地上の人々は忘れない。
せいいっぱい、この地で生きた、あなたのことを、私たちは忘れないよ。




〔2013年12月7日(土) イオンシネマ 大井〕


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