ザ・リング

THE RING
監督 ゴア・ヴァービンスキー
出演 ナオミ・ワッツ  マーティン・ヘンダーソン  デビッド・ドーフマン  ブライアン・コックス  リンゼイ・フロスト  デイビー・チェイス  アンバー・タンブリン  レイチェル・べラ
音楽 ハンス・ジマー
原作 鈴木光司
脚本 アーレン・クルーガー
特殊メイク リック・ベイカー
2002年 アメリカ作品 116分
評価☆☆☆

鈴木光司の原作本は、日本で映画化される前から読んでいた。会社の同僚が、怖いですよ、と言って貸してくれたのだ。
実際、怖かった。なんといっても、ビデオを見てしまったら死ぬ運命、という設定が怖かった。ビデオなどという、すぐ身近にあるものによって、死がもたらされる恐怖。
もしも、借りてきたビデオを何の気もなしに見たら、そこに恐怖の映像が映っていて、あわてて止めても、もう後の祭り、なんてことになったらどうしよう? などと想像すると、身近な恐ろしさに、ぞっとした。

1998年に、中田秀夫・監督、松嶋菜々子・主演で映画化され、日本でヒットした。その映画を「ビデオで」観たアメリカのプロデューサーが、即、気に入り、リメイク権を買ったという。映画を観始めたのが4時、権利を買ったのが7時だったと、インタビューで答えていた。
スティーブン・スピルバーグなどが設立した会社ドリームワークスが製作することで、堂々たるハリウッド映画の格が付いた。

主演は、ジュリア・ロバーツという名前も聞こえていたが、結局「マルホランド・ドライブ」で注目度の上がっていたナオミ・ワッツに決定した。
ちなみに、映画の中で最初に犠牲になる女の子は、アンバー・タンブリンといい、ラス・タンブリン(「ウエスト・サイド物語」でジェット団の団長役を演じた)の娘だ。

監督は「ザ・メキシカン」のゴア・ヴァービンスキー。ミュージック・ビデオやコマーシャル畑出身で、以前観た「マウス・ハント」の監督でもあったのを、この映画を観た後で知った。
特殊メイクは「猿の惑星(2001年版)」「メン・イン・ブラック」などでお馴染みのリック・ベイカー。猿顔や狼顔メイクとなると必ず登場する人だ。ただし、本作での死に顔メイクは、よくありがちなメイクに思えるし、しかも、なぜそうなるのかが分からない顔だと思う。

リメイク版には、原作者の鈴木光司の名前は当然書かれているが、オリジナル版の脚本家として、高橋洋(たかはし ひろし)の名前も載せてほしかった。なぜなら、主人公が女性で、別れた夫とともに謎を解明しようとする設定は、高橋氏の脚本によるものであり、ハリウッド・リメイク版はそれをそのまま踏襲しているからだ。

開巻、ドリームワークスのロゴマークが出ると、画像が少しだけ乱れる。フィルムか映写機の具合が悪いのかと思ったが、すぐに、ああ、これは、映画で核になるのはノイズの入った画質の悪いビデオテープなんだよ、と表わしているのだと気づいた。じつに思わせぶりな、いたずら心いっぱいのお遊びで、嬉しくなる。

ストーリーは、かなりの部分、日本オリジナル版と同じだ。リメイク版を観た夜にテレビでオリジナル版を観て、すごく似ているのにびっくりした。子どもと、別れた父親が、雨の中ですれ違うという細かいシーンまで同じだったりする。
これはオリジナル版の出来がいいということで、敬意の表われと捉えていいのだろうか。
大きく違うのは、呪う側の環境設定。オリジナル版では、伊豆大島、超能力者、などというものが絡んできたが、リメイク版では、そうしたものは変わっている。(もちろんアメリカで伊豆大島はないわけだが。)
ある島へ調査に渡るため主人公が乗るフェリーに馬が乗っているのだが、そこで起きるエピソードは印象的だった。「馬」は重要なイメージのひとつだ。

私の場合は、リメイク版を観たときに、日本オリジナル版をよく覚えていなかったので、展開が同じでも面白く観られた。イメージ的な映像などには金をかけているから、観ていて楽しめる。オリジナル版の話をよく知っていて新鮮味がなくても、怖いところはやはり怖いだろうし、日米両作を比較してみるのも面白いだろう。

ラストシーンは何種類か撮って、何度かの試写会でそれぞれのパターンを上映し、観客の反応を見てから最終的に決定したという。
日本オリジナル版と比べてどうか、というのはネタばれになるので言えないが、やはり考えさせられる、とても怖いラストではないだろうか。
DVDが発売されたときに、「異なるエンディング」が特典として入ると嬉しいのだが。

私は「マルホランド・ドライブ」でナオミ・ワッツ嬢に魅了されたがゆえに、この映画を観たようなものだが、「マルホランド・ドライブ」が良過ぎたせいか、それを越える魅力のある演技を期待するのは、なかなか難しい。今回は、ごく普通の女優さんというふうにしか見えずに少々困っている(?)。きっと、端から見れば、充分にいいのかもしれないが、どうなのだろう。

ナオミ嬢がインタビューで言っていたが、彼女とニコール・キッドマンは友人であるらしい。2人ともオーストラリアに住んでいたせいか。「ザ・リング」のプレミア上映で並んで座って観たが、ニコールは怖がって叫びまくったという話だ。うう〜、叫ばれても何でもいいから、この2人の間に割って入ってみたい!
〔2002年11月2日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕



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