ていねいに、心のこもったドラマがつむがれていって好感。
映画「メリー・ポピンズ」は大好きだから、なおさら感動する。
ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)が「メリー・ポピンズ」を映画化したいと、著者であるP・L・トラヴァース夫人(エマ・トンプソン)に申し入れる。
それから20年ほども経ち、ようやくのことで夫人がハリウッドにやってきた。
しかし、ミュージカル化はダメ、アニメを使うのはダメ、映画製作についての話し合いは(証拠として)録音してください、などなど、夫人の要求は厳しい。(ちなみに、エンドクレジットで、実際の録音テープの音声が聞けます。)
映画製作秘話(?)と、夫人の幼少期の父との思い出を交差させながら、話は進む。
彼女のお父さん、子どもを楽しませる想像力、ユーモアが、とっても素敵なんだけど…。
観ながら、この過去の思い出は本当なのだろうか、夫人の回想記でもあるのだろうか、と考えもしたけれど、本作で描かれたことを知ったうえで「メリー・ポピンズ」を見ると、また違った感想を持つことだろう。
作詞作曲のシャーマン兄弟が、夫人の前などで曲を披露するたびに、「あ、あの曲だ!」と、うれしくなったり泣けてきたり。
これは「メリー・ポピンズ」の映画を見ている者だけの特権。だから、できれば「メリー・ポピンズ」を先に見ておくといい。
銀行の上役や、おばさんの格好が、映画「メリー・ポピンズ」の登場人物と、おんなじだー!と分かったりするのも楽しいから。
ひとつ気になったのは、ミュージカルはダメと言っていながら、シャーマン兄弟が披露していく曲に、トラヴァース夫人がずっと付き合っていたのはなぜなのか、ということ。
「しかたなしに…」というニュアンスのことは発言していたけれども、なしくずしに妥協したということだろうか。
エマ・トンプソンさんは、(嫌みなほど)気難しそうなオバサンを演じながら、その奥にある過去の記憶の悲しさをにじませて好演。
トム・ハンクスの誠実さもピタリで、童心をもった大人、をやらせたら、はまる。そういえば、大人の見かけなのに中身は子ども、という映画「ビッグ」というのもあったっけ。
でも特筆したいのは、夫人の運転手役のポール・ジアマッティ。
いい役だから、なのは、もちろんだけど、私がこれまで見てきた彼の役のなかでは、いちばん好きだ。
普通の人が、一日一日を大事に、(たぶん)金持ちでもなし、心配事だってありながら、ささやかに生きていくような感じ? とても、いい。
あったかい涙があふれる、いい映画でした!
そして、「メリー・ポピンズ」を見ていない映画ファンの方、ぜひ、「メリー・ポピンズ」も見てください。