風 花

風花の舞うなかで、彼女もまた、舞う。
ふわふわ揺られながら

舞う雪と一緒に
はかなく消える運命のように。

印象的ではあるが、実は、好きなシーンではない。
相米慎二監督のアイデアを受けて、小泉さんが考えた舞いであるらしい。
パントマイムか前衛的なダンスのようで、かなり唐突な感じといってもいい。
ここがよかったという人も多い。
だが、私の感性には合わない。
しかしそんなシーンも、何か不思議に切り捨てる気にはなれない。

夫を事故で亡くし、母親に子供を預け、東京に出てピンサロ嬢をしている女。
エリート官僚だが不祥事を起こして、自棄(やけ)になっている男。

5年もほったらかしにしている子供に会いに行こうと思い立った女。
酔った勢いの約束で、それに付き合う男。

自分の存在場所をなくしている2人の旅が淡々と語られていく。
北海道の田舎の風景も、寂しくて、いい。

終わり方が好き。
思い出すと、あったかい涙が出る。
きっと、この終わり方に不満な人も、いるんだろうなあ、と思いながら、それでもいい。
監督は、ラストをどうするか悩んだかもしれないが、私は、これが好き。これがいい。

いま、この映画の小泉さんを思い返すと、それは、ふわふわした夢。
はかなげな、それこそ、まるで、舞う風花。
ふわんとした重力のない透明感。
いろんな色を放つ無色。
「小泉」という絶対的なイメージと存在感を持ちながら、
ここでは役柄の「ゆり子」そのものでいる彼女。

迷いつづけた2人は、ようやく、道を見つける。
リセット。

小泉さんが風俗嬢を演じることが何かと話題にされるが、ほとんどそういう描写はない。
それを話題にする意味はない。

小泉さんが竹中直人と共演した「共犯者」を観たとき、
何でこんなつまらない映画に…と心のなかで叫んでいた。

それが――女優として次につなげられる映画かもしれないなあ。
「風花」を観たあと、そう思った。

                          〔2001年1月28日(日) 有楽町・シネ・ラ・セット〕
トップページへ
映画感想/書くのは私だ に戻る
監督 相米慎二
出演 小泉今日子  浅野忠信  麻生久美子  香山美子
原作 鳴海 章
脚本 森らいみ
2000年 日本作品  116分
報知映画賞…主演女優賞受賞
毎日映画コンクール…美術賞(小川富美夫)受賞
評価 ☆☆☆