ウエスト・サイド物語

WEST SIDE STORY
監督 ロバート・ワイズ  ジェローム・ロビンズ
出演 ナタリー・ウッド  リチャード・ベイマー  リタ・モレノ  ジョージ・チャキリス  ラス・タンブリン  タッカー・スミス  ホセ・デ・べガ  ネッド・グラス  サイモン・オークランド  ウィリアム・ブラムリー
脚本 アーネスト・レーマン
原作 アーサー・ローレンツ  ジェローム・ロビンズ
撮影 ダニエル・L・ファップ
作曲 レナード・バーンスタイン
作詞 スティーブン・ソンドハイム
編集 トマス・スタンフォード
タイトル・デザイン ソウル・バス
1961年 アメリカ作品 151分
アカデミー賞…作品・監督・助演男優(ジョージ・チャキリス)・助演女優(リタ・モレノ)・撮影・ミュージカル映画音楽・美術監督&装置・衣装デザイン・編集・録音・特別賞(ジェローム・ロビンズ)受賞
ゴールデングローブ賞…作品・助演男優・助演女優賞受賞
ニューヨーク映画批評家協会賞…作品賞受賞 他
評価☆☆☆☆★

ニュー・プリント、デジタル・リマスター・バージョンで甦った名作ミュージカル。
音楽とダンスの躍動感と迫力が、荒削りでも圧倒的。
1957年初演のブロードウェイ・ミュージカルの映画化。
曲目に沿って、感想を書いてみる。

序曲(Overture)
縦の線がスクリーンの中央に数本映る。ソウル・バスのデザイン。これが何かは、曲の最後に分かる。序曲が流れる間、画面は色を変えていく。ソウル・バスが手がけた映画タイトルは、他に「めまい」「七年目の浮気」「黄金の腕」などが有名。
序曲がある映画は、これから見応えのある大作が始まるぞ、という感じがある。聴いているうちに、だんだん本編へ向けて、気分が盛り上がってくる。

プロローグ(Prologue)
音楽とダンスだけでジェット団とシャーク団の争いを表現していくテンポの良さ。音楽にピタリと合ったダンスと、シャープな編集のつなぎが、いまも斬新でカッコいい。
ロバート・ワイズ監督は、映画編集者から監督になった人。だから、編集が素晴らしいのは当然なのかもしれない。ちなみにワイズ監督は、4年後には「サウンド・オブ・ミュージック」という、同じくミュージカルの大傑作を生み出すことになる。

ジェット・ソング(The Jet Song)
ジェット団が、オレたちは最高なんだ、と歌う。荒削りな歌唱が、いかにも突っ張っているチンピラっぽくていい。
ジェット団のリーダー、リフ役はラス・タンブリン。MGMミュージカルの「略奪された七人の花嫁」(1954)でも見せていたアクロバティックなダンスが、この映画でも随所に見られる。

なにか起こりそう(Something's Coming)
トニーが、この後に起こる何かへの期待に弾む心を歌う。期待感というものが、よく出ている曲調と歌いっぷリ。
トニー役のリチャード・ベイマーは、「終着駅」(1953年)、「アンネの日記」(1959年)などに出演していた。

体育館でのダンス(Dance at the Gym)
マリアとトニーが出会う。画面の左右に2人が立ち、お互いを気づいて見つめ合う。2人の間にはダンスを踊る何人もの人間がいるが、2人の姿以外は、すべてぼやけて映る。お互いのことしか目に入らない2人の気持ちを、鮮烈に表したシーン。
マリア役のナタリー・ウッドは、子役から活躍して、ジェームズ・ディーンと共演した「理由なき反抗」(1955年)、ジョン・フォード監督の「捜索者」(1956年)、エリア・カザン監督の「草原の輝き」(1961年)などに出演、すでにトップスターだった。

マリア(Maria)
トニーが歌うラブソングの名曲。好きな人の名前を知って、その名を連呼して歌い上げる。一途で純粋な恋心と、美しいメロディは胸を打つ。私は泣けます。
去年の紅白歌合戦でも、オペラ歌手が歌っていて、感動的だった。

アメリカ(America)
これも有名。プエルトリコから来た移民にとって、アメリカとはどんなところなのか。シャーク団が男女に分かれての掛け合い。アメリカのいいところ、悪いところを、ユーモアと皮肉を交えて歌い踊る、元気で楽しい曲。リタ・モレノ、ジョージ・チャキリスの見せ場のひとつ。
ミュージカル・シーンの監督はジェローム・ロビンズが担当したが、この曲だけはロバート・ワイズが手がけたという。
アニタ役のリタ・モレノは、「雨に唄えば」(1952年)、「王様と私」(1956年)といったミュージカル映画にも出演していた。
シャーク団のリーダー、ベルナルド役のジョージ・チャキリスは、「紳士は金髪がお好き」(1953年)、「ショウほど素敵な商売はない」(1954年)でマリリン(言うまでもなく、ミス・モンローのことだ)のバックで踊っていたという幸せ者。私が好きな「ブーべの恋人」(1963年)に出演するのは、この後だ。

トゥナイト(Tonight)
マリアとトニーのラブソング。これも名曲。トニーがマリアのアパートへやってくる。マリアが非常階段に出てきて恋の言葉を交わす。「ロミオとジュリエット」のバルコニー・シーンの変型だ。恋し合う2人が、対立するファミリー同士ということなど、物語のところどころのベースは「ロミオとジュリエット」。
恋する者は磁石のように引き合う。恋する気持ちが盛り上がる曲は、聴いているほうも幸せにする。

クラプキ巡査への悪口(Gee, Officer Krupke!)
クラプキ巡査に小言を言われたジェット団。巡査がいなくなってから、どうせオレたちゃ出来損ないなのさ、と歌う。メンバーがクラプキ巡査や判事などの役になり、歌い手がバトンタッチされ、次々にストーリーが展開していく面白さ

アイ・フィール・プリティ(I Feel Pretty)
恋するマリアのウキウキした気分いっぱいの可愛い曲。友達との掛け合いも楽しい。
私って可愛いわ!なんて、恋して有頂天な時にしか言えないわ。

ひとつの心(One Hand, One Heart)
結婚式の真似事をする、マリアとトニーの誓いの歌。短いながら宝石のように美しい

クインテット(Quintet)
ケンカに向かうジェット団の歌とシャーク団の歌、恋人の帰りを待つアニタの歌、そしてマリアとトニーがそれぞれに歌う「トゥナイト」。各自の思いが重なり合い、5重唱になり、曲のラストに向けて突き進む構成の見事さと迫力は、背筋がゾクゾクする。

ランブル(Rumble)
ついに1対1のケンカが始まる。ケンカのシーンもダンスの振り付け。ここで、思いもかけない悲劇が。

クール(Cool)
爆発しそうな感情を必死で抑えているピリピリとした空気が充満した、文字通りクールでカッコいい曲。ジェット団ナンバー2、アイス役のタッカー・スミスの見せ場。

あんな男に〜私は愛している(A Boy Like That〜I Have a Love)
トニーと一緒にいたマリアに対して、どうしてあんなヤツと、と憤るアニタ。リタ・モレノがパワフルな歌唱力を見せつける。それに答えるマリアの歌のつなぎの部分は、私にはメロディ的に少し変かなと思えるところがある。

恋は永遠に(Somewhere)
どこかに2人の場所がある、と歌うマリアとトニー。泣かせる。

エンド・クレジット(End Credits)
ここでのスタッフ・キャストの名前の出し方は印象的。見ずに帰る人って、どういう神経してんだろう、と悲しくなる。

上映終了後、拍手をした人がいた。私もそれに乗って、控えめに拍手した。
そうなんだ。いい映画を観たら拍手したいんだ。でも、誰もしてないと恥ずかしいから、しないのだ。
拍手できて、よかった。
〔2003年1月26日(日) ル・テアトル銀座〕



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