真実

LA VERITE
脚本・監督・編集 是枝裕和
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ  ジュリエット・ビノシュ  クレモンティーヌ・グルニエ  マノン・クラヴェル  リュディヴィーヌ・サニエ  イーサン・ホーク
撮影 エリック・ゴーティエ
音楽 アレクセイ・アイギ
2019年 日本・フランス作品 108分
好き度☆☆☆★


コレエダが、カトリーヌ・ドヌーヴさん主演のフランス映画をつくってみたような。

何も知らずに見れば、純粋なフランス映画かと思うのでは?

女優のファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が自伝を出し、それを読んだ娘(ジュリエット・ビノシュ)によれば、正直に書かれていないらしい。
私に言わせると自伝なんて自分にとってマズイことなんか書きにくいでしょう、となるが(ファビエンヌも同じような考えらしい)、嘘を書かれた相手がいる場合、当人は不本意には違いない。

母と娘の、お互いに離れている距離感、寂しさ、葛藤(これは娘のほうがほとんどだが)がメインテーマか。
娘の娘(ビノシュさんの娘として、けっこう似た感じでぴったり、かわいい)も出てくるから、3世代。
(関係ないけど、娘の娘は父がアメリカ人で母がフランス人でアメリカ暮らし。バイリンガルになりやすい環境でうらやましい。)

めったに帰らない母(理由はある)と、寂しさを募らせる娘の劇中劇を持ってきたのは、うまい。
ファビエンヌが演じる役のセリフが、実の娘との関係のように聞こえてくる。

いかにも大物女優らしい、私生活は不器用なところがある感じ、愛情表現が苦手なイメージが、ドヌーヴさんが演じるとフィットする。
カトリーヌ・ドヌーヴさんが一段上に立っている、彼女のキャリアには周囲の俳優はまだ及ばない、と感じさせる映画でもあった。女王さまですね。

劇中劇での母親役、マノン・クラヴェルさんは、とてもよかった。舞台中心で、映画は初めてだったそうだが。

NHK-BSで「是枝裕和×運命の女優たち〜フランスで挑んだ1年の記録〜」というスペシャルがあり、おー、それでNHKが盛んに他の番組でも「真実」を取り上げていたのかな、と納得。
それによると、是枝さんはジュリエット・ビノシュさんと、いつか映画をやりたいねと話し合っていたそうで、ドヌーヴさんにオファーを出したのはダメもとだったそうだ。
いろんな国の人が出る映画を企画しているので、言語の違う俳優を演出する第一歩としての位置づけの作品でもあるとのこと。

おまけ。
BSの「是枝裕和〜」を見ているうち、あるところで、是枝さんの発言に耳をそばだててしまったので、メモしておく。ドヌーヴさんの話で、
マリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーン、カトリーヌ・ドヌーヴ、みたいな、そういうジャンル、カテゴリーじゃない? 大文字の『女優』っていうのを背負える数少ない現役」
マリリンですよ! うれしいなー。大文字の「女優」というのは、ドドーンと堂々と「女優」だよ!と言えるような人というか、大女優のイメージでしょうね。




〔2019年10月26日(土) TOHOシネマズ ららぽーと富士見〕


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