恋は邪魔者

DOWN WITH LOVE
監督 ペイトン・リード
出演 レニー・ゼルウィガー  ユアン・マクレガー  サラ・ポールソン  デビッド・ハイド・ピアース  トニー・ランドール  ジェリー・ライアン  メリッサ・ジョージ
撮影 ジェフ・クローネンウェス
脚本 イブ・アラート  デニス・ドレイク
音楽 マーク・シェイマン
衣装 ダニエル・オーランディ
2003年 アメリカ作品 101分
評価☆☆★

レニー・ゼルウィガーとユアン・マクレガーによる、1960年代風ラブコメディ。
ドリス・デイとロック・ハドソンが主演した一連のコメディに敬意を払って、その感じを再現してみた、いわゆるオマージュだ。

オープニングタイトルをアニメ風デザインで見せるのは、まさに60年代のコメディ映画にあったような楽しい雰囲気を出している。
だが、いまひとつ、物語の内容に、お洒落さ、洗練の度合いが足りないような気がするのだ。
実際に1960年代に作られた映画ならばいいが、ただ昔の映画を真似してみてもしょうがない、と感じてしまったわけだ。
レニーは、ぽっちゃりで可愛いけれど、それほど魅力を感じなかった。それは、なぜなのだろう。「シカゴ」などでは素晴らしいのに。
やはり、これは私自身が充分に楽しめなかったからということに尽きるのだろう。
なにか、物語がスラーッと薄っぺらな感じのまま流れていくようで、あまり面白く思えなかったのだ。

脚本は「キューティ・ブロンド/ハッピーMAX」の原案を書いたチーム。監督は「チアーズ!」を作った人。「チアーズ!」はキルステン・ダンスト主演のチアリーディング物語で、まあまあ面白かったけれど、他愛ないお話ではあった。
軽いコメディタッチの映画が得意らしいスタッフが作ったこの映画だが、狙ったほど私のツボには、はまらなかった、という結果なのだった。
最後の、どんでん返し的展開は、意外さがあって少し面白かったが。

さて、本作がオマージュを贈った、ドリス・デイとロック・ハドソンが共演したコメディ映画とは、「夜を楽しく」(1959年)、「恋人よ帰れ」(1961年)、「花は贈らないで!」(1964年)。
この3作はセットで、「ドリス・デイLOVE&MUSICボックス」というDVDボックスにもなっている。
私は、そのうちの「夜を楽しく」しか観ていないが、あまり記憶にない。観た映画のタイトルをメモしてあるノートによれば、観たのは4年半前で、そう遠い昔でもないのだが。星は☆☆☆をつけてあるので、まずまずというところだったのだろう。軽快でちょっと洒落っ気のある都会風ラブコメの雰囲気を楽しむべき映画だったか。

この「恋は邪魔者」に社長役で出演したトニー・ランドールだが、調べてみると、デイ&ハドソン・コンビの3作にも出演しているのだ! 本作が、デイ&ハドソン・コンビのラブコメへのオマージュであることをはっきりと示している、心憎い配役だ。
トニー・ランドールといえば、マリリン・ファンには「恋をしましょう」(1960年)でお馴染みのはず。いまや、すでに80歳を少し超えている。そのせいか、ほんの少しの出番しかなかったが、とにかく、この映画に彼が出ていること自体に意味があったわけだ。

お話の舞台は1963年のニューヨーク。
女性は男性と同等である。私たち女性に、恋なんか要らないわ!(原題)。という主張を本にした作家バーバラ・ノヴァク。
彼女と、その本の出版社の女編集者が、売れっ子雑誌記者のキャッチャー・ブロック(キャッチャーがブロックする、というのは、面白い名前なのではないだろうか)に記事を書いてもらおうとするが、キャッチャーは、なにかと理由をつけて会おうとしない。
そうこうするうちに、あるきっかけがあって、本が売れ始める。
世の女性たちも女権拡張を主張しはじめ、バーバラは、そうした世相のシンボル的存在となる。
テレビに出演したバーバラに名指しで批判されたキャッチャーは、それまでのモテモテ・プレイボーイから一気に女性の敵へとなってしまう。
彼は、顔を知られていないのをいいことに、名前を隠してバーバラに接近し、バーバラが自分に恋するように仕向け、恋愛を否定するバーバラの主張が大ウソだと世間に広めて、彼女をやりこめてやろうと考えるが…。
さて、この恋の駆け引き、どうなりますやら、というストーリー。
女編集者と、キャッチャーの勤める会社の若い社長(というよりキャッチャーとは友人関係なのだが)との恋のドタバタもあって、2組の恋愛騒動が平行して展開する。

最初は「シカゴ」のレニーと「ムーラン・ルージュ」のユアンが歌う、というので、すっかりミュージカルかと思っていたが、映画を観る前には、歌はあるけれどミュージカルではなくて、ラブコメだと分かっていた。結局、歌の場面は、2人が一緒に歌ったエンディングだけだったので、なんとなく残念。

映画のなかで、ジュディ・ガーランドが歌う場面が出てきたのには、ちょっとびっくり&嬉しかった。ミュージカルの大スターである彼女の登場で、ミュージカル好きの私が反応しないわけがない。
テレビか何かのパフォーマンスを収録した白黒の映像を使っていたのだが、この映画と同じタイトル(“Down with Love”)の歌を歌っていた。そのような歌があるのは知らなかったので、勉強になった。

キャッチャーがバーバラにモーションをかける場面でのやり取り。
いまや有名な作家になっているバーバラ・ノヴァクに対して、キム・ノヴァクなら知ってるけど、とキャッチャーが言うところは、映画好きにとっては、くすぐられるセリフだった。(念のため、キム・ノヴァクさんは「ピクニック」「めまい」など、1950年代を中心に活躍した女優で、私と誕生日が同じという縁のあるお方なのだ。…もちろん、年はちょっとは違うよ。)

ちなみに、キャッチャーがプレイボーイぶりを発揮してデートする女性たちのなかに、「スター・トレック:ボイジャー」のジェリー・ライアン、「マルホランド・ドライブ」のメリッサ・ジョージ(「マルホ…」では、オーディションで歌を歌う場面が印象的だった)がいる。

レニー・ゼルウィガーのファッションは、興味のある人には、この映画での注目点のひとつだろう。
ニューヨークのデパート、ブルーミングデールズとタイアップして、ブルーミングデールズでは、レニーがこの映画で着た30着と同じデザインのものが展示販売されたという。

最後に、もうひとつ記しておきたい場面がある。
カメラが切り替わることなく、ずっと動かずにレニー・ゼルウィガーを映しているなかで、彼女が長いセリフを一気に話すところだ。
たぶん、カンニングペーパーなどはないのだろうし、もしも多少は台本と違ったとしても、この長ゼリフには、うなってしまった。レニーの役者としての面目躍如の場面だった。

〔2003年11月1日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋〕



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