アンダーワールド

UNDERWORLD
監督 レン・ワイズマン
出演 ケイト・ベッキンセール  スコット・スピードマン  マイケル・シーン  シェーン・ブローリー  ビル・ナイ  ロビー・ジー  ケビン・グレヴィオー  ソフィア・マイルズ
原案 レン・ワイズマン  ケビン・グレヴィオー  ダニー・マクブライド
脚本 ダニー・マクブライド
撮影 トニー・ピアース=ロバーツ
音楽 ポール・ハスリンジャー
編集 マーティン・ハンター
2003年 アメリカ作品 121分
評価☆☆★

ヴァンパイア(吸血鬼)と、ライカン(狼男)の、何世紀にもわたる闇の死闘。
黒いロングコートをはためかせ、拳銃を持って、たたずむ女。
かっこいい!
これだけの情報を知った時点で、面白そうだなあ、と思ったものだ。

だがしかし。
たしかに、ケイト・ベッキンセールはクールでかっこよかった。いままで観た彼女の出演映画(「ブロークダウン・パレス」「パール・ハーバー」「セレンディピティ」)からは想像できないくらい、かっこよかった。
でも、彼女の戦い方って、二挺拳銃をバンバン撃ちまくるだけなのだ。(それに丸い手裏剣みたいなのも1回、投げたけど。)

敵が何人もいて、しかも相手はマシンガンを持っているのに、絶対やられないのって…あり?
ちょっと観ていて、しらけたのは否定できませぬ。
ヒロインがやられないのは分かるが、あまりに嘘っぽく感じたのだった。
これは、SFの世界とはいえ、たとえば「キル・ビル」みたいな何でもありの世界じゃないわけでしょ? 都合よすぎるのは合わない映画だと思うが。
ケイトは、かっこいいけど、武器は拳銃だけだし、特別に強そうではないのだ。それなのにやられないから変だと思う。

映画が始まってすぐに銃撃戦がある。夜の場面で画面が暗いうえに、敵も味方も似たような格好なので、どういう展開になっているのかが、よく分からなかった
こういうところを誰にでも分かるように見せるのが、上手な監督であり、いい映画だと思う。分かろうと頑張って観てもよく分からないと、観ていてストレスがたまる。(こういう場合は、考えるのを放棄するのも手だが。)

ワイズマン監督は、ミュージックビデオやCMで活躍していて、ダークな色調、ざらついた質感の独特な映像世界は、「ワイズマン・スタイル」とまで言われているのだそうだ。
彼のこの初監督作は、長〜いミュージックビデオとして見れば、かっこいい。映像のほうは、お手のものなのだろう。

観ていて、若いなあ、と感じた。
若いなあ、というのは、若々しくて凄いなあ、というのと、若くて未熟だなあ、という2つがある。
残念ながら、これは、未熟だなあ、のほうだ。お話が。
若さでグイグイと、カッコよさげな映像を作り上げていくのはいいが、お話にアラがあるのだ。

ヴァンパイアと狼男の戦い、というアイデアはいい。でも、それがまず、ほとんど銃の撃ち合いで戦う、というのが観ているうちに分かって、なにやら、つまらなさを感じる。
それじゃ、ほとんど人間じゃないの。ヴァンパイアと狼男である必要がない。
たまに狼男族が変身して、壁を(重力に逆らって)走ってきたりするが、結局、撃たれてやられてたりするだけ。何の意味もない。

それに、人間の世界の水面下で、人間に知られずに戦っているはずなのに、地下鉄かなにかで盛大にドンパチやってていいのだろうか。後に残った死体を人間が調べても、ただの人間にしか見えないのだろうか?
ドンパチしたあと、まもなくして地下鉄が走ってきたのも腑に落ちない。あんな大事件のあと、しばらくは電車は走らないだろう。…私が何か話の筋を勘違いしているのかもしれないが。

もうひとつ、ラストに最強の戦士になる○○○○。どうして、あの方法でそうなるのか分からない。噛んだほうの血が噛まれたほうに入るわけではないだろう。逆でしょ? これも私が勘違いしてます?
そして、最強の戦士のはずが、そうでもないのが変。最強の戦士ができると思っていたのに、想像したほど強くはなかったのか。やっぱり創作過程が間違っていたのかも。
ああ、いかんな。マジな話で、こんなに突っ込みどころがあっては。

もう、全編夜だぞ〜という、ダークでスタイリッシュな映像を観るだけに集中すればいいか。あー、かっこいい、とだけ思って観れば。
なんだかんだ言いながら、結局、美人に弱い私は、ケイト目当てに続編も観るつもりでいるけどね。
しかし、映画は、完全に「続きあり」と思わせる形で終わってるな。

余談だが、この映画の関係者の中で、プライベートな人間ドラマがあったという。
ケイトと、共演のマイケル・シーンは恋人同士で、2人の間には娘も生まれていた。だが、このカップルは破局。本作でケイトと知り合った監督が、彼女にプロポーズして婚約の運びとなったのだ。
どうやら未練たっぷりだったらしいマイケルとしては、こんな展開はやりきれない思いだろうが、うーむ、人生だねえ。

〔2003年11月30日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋〕


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