ラブ・アクチュアリー

LOVE ACTUALLY
脚本・監督 リチャード・カーティス
出演 ビル・ナイ  グレゴール・フィッシャー  トーマス・サングスター  オリビア・オルソン  リーアム・ニーソン  コリン・ファース  ルシア・モニス  アンドリュー・リンカーン  キーラ・ナイトレイ  キウェテル・イジョフォー  ローワン・アトキンソン  アラン・リックマン  エマ・トンプソン  ハイケ・マカッシュ  ローラ・リニー  ロドリゴ・サントロ  ヒュー・グラント  マルティン・マカッチョン  ビリー・ボブ・ソーントン  マーティン・フリーマン  ジョアンナ・ペイジ  クリス・マーシャル  デニース・リチャーズ  シャノン・エリザベス  クラウディア・シファー
撮影 マイケル・コールター
編集 ニック・ムーア
音楽 クレイグ・アームストロング
2003年 イギリス・アメリカ作品 135分
ロサンゼルス映画批評家協会賞…助演男優賞(ビル・ナイ、受賞対象作は、「ラブ・アクチュアリー」「アイ・キャプチャー・ザ・キャッスル」「ローレス・ハート」)
ロンドン映画批評家協会賞…英国助演男優(ビル・ナイ)・英国助演女優(エマ・トンプソン)賞
英国アカデミー賞…助演男優賞(ビル・ナイ)
評価☆☆☆☆

ワンダフル!と言いたい(なんとなく英語ですけど)。
Love is all around.愛は、そこらじゅうに溢れている。
親しい人と再会する喜びが溢れる場所として、まず空港ゲートを例に取ったところが、素晴らしい着眼。

いろんな愛を描いている映画、ということだけ知っていて、きっと好みの映画だろうと思っていたが、まったくその通り。
幸せな気持ちになり、でもそれだけではなく、心にちくりと痛い話もある。
主な出演者が19人、としてあったが、それを混乱なくまとめて見せるだけでも、すごいことだろう。

たくさんの人々が、それぞれの形で、人を愛する姿を見せてくれて、スクリーンは愛でいっぱいになり、そこから愛があふれ出し、観客席まで包み込む。
だから幸せな気分になる

人間のもっとも素敵な感情は、人を好きになること。
スクリーンの中の愛の物語に共感して、応援したくなる。
たくさんの主人公たちの一喜一憂に、嬉しくて、悲しくて、泣けてしまう。
いま思い出して書いていても、泣けてきそうなくらいだったりする。

自分が壊滅的に(?)涙腺が弱いことは、じゅうぶん承知している。(人前では泣かないように頑張るが。)
幼い頃、父親がテレビドラマを見て涙ぐんでいるのを、あ、また泣いてる、と思って見ていたものだが、その点はどうやら完璧に父親の血を引き継いだようである。
私は、橋の下に捨てられていたのを拾われてきた子である、という、まことしやかな我が家の言い伝えは、デマだったに違いない。(笑)
アニメの「母をたずねて三千里」を見て、ほぼ毎回泣いていたのは、何を隠そう、この私である。

とにかく、こんなに幸せな映画は、他にあまりない
ラブストーリーてんこ盛りなのだから、それは当然かもしれないが。
人を好きになる感情は、人生の肯定だ。前向き、プラス志向、積極的、ポジティブ、暖かい、うれしい、楽しい、大好き。そうしたことが、この映画の中にたくさんある。
たしかに、踏み出してみるまでは、悩んで苦しかったりするかもしれない。うまくいかない恋愛は、つらくて苦しすぎるかもしれない。が、それだって基本は幸せな感情だと思う。
失恋は多くの場合、時が経てば痛みは薄れるし、ほのかに幸せで貴重な思い出に変わることも多い。自分が人を好きになったことは、結果がどうあれ、素敵で幸せなことに違いないのだから。

この映画では、たくさんの恋愛模様が描かれる。だから、ひとつひとつの恋愛を深く掘り下げる余裕はない。いろいろと映画評を読んでいると、この映画の恋愛は薄っぺらなものばかり、という批判があった。
それには、ちょっと言っておきたい。(ここで言ってどうなるものでもないけれど。)
その批判は、間違っている。
この映画は「世界には愛があふれている」ことを語っているのだ。
たくさんの愛の物語が、同時に進行しているさまを見せることこそが目的なのだ。
観客は「世界が愛であふれている」ことを感じればいい。
そして、人間は捨てたもんじゃない、こんなに愛(いと)しいものなんだ、と少しばかり幸せを感じればいいのだ。
だから、愛のいろんなスタイルが、そこに、ちりばめられていればいいのだ。

映画の中には、この先どうなるのか微妙なカップルがいる。すべてのカップルがハッピーになった状態で終わらせなかった脚本も頭がいいが、ハッピーなカップルだって、この先どうなっていくのかは分からない。
そういうふうに、先を読めば、単なる能天気な夢物語ではないが、けれども、愛する気持ちを大事にして生きたい!という思いでいっぱいなのが好感度大なのである。

どのエピソードもいいのだが、いちばん単純に応援できたのが、ダニエル(リーアム・ニーソン)の息子サム(トーマス・サングスター)の片思い。
空港を走る場面は、思わず「行け!行け!」と心の中で声援を叫んでいたね。
そうそう、相手の女の子、ジョアンナ(オリビア・オルソン)の歌も上手かったなあ。マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」を歌うのだが、もう、最高だったね。
この恋は、微笑ましいったらない。

歌といえば、ビートルズの「愛こそすべて」(♪オール・ユー・ニード・イズ・ラブ…という歌詞の、有名な曲)が使われるのは前もって知っていたので、どんなふうに映画で流れるのか楽しみだった。
そうしたら、まあ、ほんとにベタな使われ方で…でも、ああやって祝福されたら、照れるけど嬉しいよなあ、なんて思う。

私は映画を観る前には、あまり情報を仕入れないほうなので、エマ・トンプソンやアラン・リックマンが出ているとは知らなかった。
あれ、この男、どこかで観たよな、絶対。特徴ある声も聞いたことあるぞ、絶対。と思いながら観て、あとで調べてみたら、アラン・リックマンだった。
おいおい、「ギャラクシー・クエスト」に出てたじゃん!「ダイ・ハード3」に出てたじゃん!なのに忘れてるんかい!と自らに突っ込みを入れたことは、言うまでもない。

ミスター・ビーンこと、ローワン・アトキンソンは、少ない出番(ホントに少ない)ながら、おいしいところを持っていく。脚本・監督のリチャード・カーティスは「Mr.ビーン」の脚本家でアトキンソンと親しいようだから、アトキンソンはゲスト出演のような扱いなのだった。

恋愛中の登場人物が多いので、もしかしたら観ているうちに、誰が誰やら分からなくなるかと思ったが、そんなことはなかった。
珍しく途中で、これはどのカップルだったっけ、と思ったのは、それまではいつも裸で登場していた2人。いきなり服を着て登場していたので分からなかったのだった(爆)。
この2人、のっけからセックスシーン(のふり)を演じているので、映画を観た人の中には、ポルノ俳優の役かと思っている人もいるようだが、これはスタンド・イン、つまり代役だ。
裸の、しかもセックスシーンを演じたくないというわがままな俳優の代わりに、そのシーンだけを演技しているのだろう。しがない2人(失礼)が、やがて恋に落ちていくのは、スケベでもなんでもなく、微笑ましい

年老いたロックスターを演じたビル・ナイは、私には「アンダーワールド」でのバンパイアの親分役でお馴染みになっていたが、放送禁止用語すれすれの言動で反骨精神旺盛なロックオヤジ。こういう人間は、かえって心のうちはナイーブだったりするのだ。異彩を放っていて、よかったよ。

びっくりしたのは、ビリー・ボブ・ソーントンが出ていたこと。で、演じた役が、またびっくり。その役、似合わねー!と思ったよ、個人的には。そういうのも面白いんだけどね。

イギリス映画らしいよなあ、と感じたのが、アメリカ(大統領や女性)をけっこう皮肉っているところ。
アメリカの保守層(というか何というか)には受けないのではなかろうか。観たら怒りそうだから。

〔2004年2月14日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕


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