スクール・オブ・ロック

THE SCHOOL OF ROCK
監督 リチャード・リンクレイター
出演 ジャック・ブラック  ミランダ・コスグローブ  ジョーイ・ゲイドスJr.  ケビン・クラーク  レベッカ・ブラウン  ロバート・ツァイ  マリアム・ハッサン  ケイトリン・ヘイル  アレイシャ・アレン  ブライアン・ファルドゥード  ジョーン・キューザック  マイク・ホワイト  サラ・シルバーマン
撮影 ロジェ・ストファーズ
編集 サンドラ・エイデアー
脚本 マイク・ホワイト
音楽 クレイグ・ウェドレン
音楽監修 ランダル・ポスター
音楽コンサルタント ジム・オルーク
2003年 アメリカ作品 110分
評価☆☆☆☆

いやー、楽しかった!
最初から最後まで、主演のジャック・ブラックのテンションに引っ張られ、音楽の楽しさも満喫した。
クライマックスの演奏シーンは感動。ロック演奏には素人だった子どもたちが練習して、その成果をここで出す、という物語の流れだから、感動を生みやすい場面であるのは当然だ。だが、この映画では、子どもばかりを目立たせるのではなく、大人のジャック・ブラックが子どもを押しのける勢いで主役顔を押し通すのがユニークなのだ。ロック・パフォーマンスをする時点においては、「ロック命」の彼にとって、大人も子どももないのだろう。

観客を思わず引かせるような、ひとりよがりの派手なパフォーマンスが災いして、ロックバンドをクビになってしまったデューイ(ジャック・ブラック)。彼が、子どもたちと組んだ新しいバンドで、ある夢を果たす。オープニング近くのシーンが伏線になっていて、夢が叶った場面では、やった!ああ、よかったね!と、笑いながらもジーンと感激してしまう。

デューイは子どもたちのために、ではなく、自分がロックが好きだから、子どもたちを巻き込む。
じつに自己中心的な男なのだが、ロックに対する情熱は並みじゃない。そのパワーあふれるロックへの愛情に、子どもたちも包まれていく。
だいたい、子どもたちだって、勉強より音楽のほうが(ふつうだったら)楽しいに決まってる。
デューイが扮した偽教師がばれないわけがないとか、エリート小学生だったら音楽よりも勉強を取るだろうとか、周囲にばれずに教室でロックの練習ができるわけがないとかの問題点は、考えるだけ無駄だし意味がない。
すべてはジャック・ブラックのハイテンション、ロックが好きだあ!という熱情の前に、ひれ伏すのだ。

とにかく、ジャック・ブラック、最高である!
話としては、偽教師として名門小学校に潜り込んだジャックが、ふつうの授業はできないし、興味もないもんだから、生徒たちを口八丁でごまかしてロックを教えこみ、自分も加わってバンドを作り、バンドのコンテストを目指す(ジャックの本音は、賞金が欲しいのだ!)、という単純明快なもの。
学校の子どもたちと一緒に音楽の大会を目指す、ということでは「ミュージック・オブ・ハート」に似ているが、あちらはクラシック(バイオリン)、こちらはロック。
子どもたちが、見かけも個性も、じつにバラッバラ、というところも面白い。5ヵ月間のオーディションで、楽器ができる子どもたちを選んだという。たとえば、映画の中でベースを担当している女の子は、もともとクラシックギターが上手な子なのだとか。

私がジャック・ブラックを知ったのは、ファレリー兄弟が監督して、グウィネス・パルトロウと共演した「愛しのローズマリー」。そこでは割合と普通の俳優っぽかったのだが、彼はじつは、いけてるコメディアンであり、ミュージシャンなのだった。
「愛しのローズマリー」ではグウィネスと共演したこともあって、ジャックには、かなりのプレッシャーがあったらしい。実力発揮とはいかなかったのかも。
また、先日のアカデミー賞授賞式でも、ウィル・フェレルと2人で見事なジョーク・パロディ・ソング?を披露していた。
彼は「テネイシャスD」というバンドでも活動しているということで、ちょっとヘンな?音楽らしいが、少し聴いてみたい気もする。
また、ジョン・キューザックなどと共演した「ハイ・フィデリティ」や、WOWOWで放送したことがあるらしい「オレンジカウンティ」など、他の出演作品もチェックしてみたくなった。

それに、ジャック・ブラックは頭文字をとって「JB」ともいう。私のハンドルネーム「BJ」の逆さまではないか。もはや他人とは思えん。(笑)

この「スクール・オブ・ロック」、ジャック・ブラックのロックにかける情熱と、コメディアンとしての持ち味と、歌の上手さ(!)、そこに、個性的な子どもたちと、その演奏ぶりが加わって、飽きるヒマのない、面白さ満点の快作になっている。

脚本は、デューイの友人ネッド・シュニーブリー役で出演もしているマイク・ホワイト。映画を観ているときはそのことを知らなくて、見るからに情けなさそうな俳優だなあ、などと思っていたが、たいへん失礼をしてしまった。彼はテレビの「ドーソンズ・クリーク」の脚本なども書いていたという才能の持ち主だったのだ。
マイク・ホワイトは実際にジャック・ブラックと友人でもあり、ジャックのために脚本を書いたというから、この映画がジャック・ブラックのキャラクターにぴったりなのも当然なのだった。

だいたい私はミュージカル好きで、音楽のある映画(「ミュージック・オブ・ハート」「ブルース・ブラザース」「天使にラブ・ソングを」などなど)は、たいてい好みなのだが、特別そういう人でなくても、この映画の痛快さは、たぶん楽しめそうに思う。とはいえ、人の好みはさまざまだから、ジャック・ブラックが嫌いだという人もいるかもしれないので、「ぜったいに面白いよ保証」はしないことにしよう。

曲としては、レッド・ツェッペリン、AC/DC、ラモーンズ、ドアーズ、ザ・フーなど70年代のロックが出てくるが、そのあたりの曲が中心ではなく、子どもたちが演奏するのは、誰でも親しみやすい程度のロックなので、とくにロックに詳しくない私でも、すごく楽しい。
ディープ・パープルの曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の、誰でも知ってるフレーズが、子どもたちのロックの手始めというのも面白い。日本でもアメリカでも、ロック入門のしかたは同じなのかなあ、と思った。
堅物に思えた校長先生(ジョーン・キューザック)が、実は、スティーヴィー・ニックスのファンだった、という意外さも楽しい。フリートウッド・マックのメンバーだったこともあるスティーヴィーは、私も知っている。いいよね、スティーヴィーの声は。

S先生(デューイは友人のシュニーブリー先生になりすましているのだが、自己紹介で黒板に名前を書こうとすると、スペルが難しくて書けない(笑)。面倒だからS先生と呼んでくれ、となるのだ)が黒板に書く、ロック史の相関図はすごい。
この図は、この感想を書いている現在、MSN映画情報のページで詳しく見ることができるが、カントリーから始まってポップロックなどを経て80’sまでの流れ、また、ジャズ、ブルースから始まってソウルやディスコなどを経てプログレ、ラップなどへの流れが書かれていて、私には、すごく勉強になった。
MSN映画情報『スクール・オブ・ロック』」の名前で検索すれば、記事が削除されないうちなら見つかるはずなので、興味のある方は、ぜひご覧ください。
ちなみに、この相関図は、リンクレイター監督が作った、という話を聞いた。

話の展開は「お約束」なところも多いが、とにかくジャック・ブラックのエネルギーが、すべてを充分にカバーして、上回っている。グレートだ! つまり、サイコーである!
ロックを教えることに情熱を持ったとたん、S先生、バンドに自信のない生徒に対して、なんと上手に励ますことか! こりゃ一流の指導者だよ。一流の先生だよ。やっぱり、先生というのは、情熱が大事なんだよね。

そして、コメディアンらしく、エンドクレジットまで楽しく見せてくれるなんて、サービス満点。嬉しすぎる。楽しすぎる。観客に席を立たせない。
…ただ、ひとつだけ残念だったのは、ベース・ソロが聴きたかったなあ、ということ。
観終わったときに、拍手をしたかった。私が観たときは誰もしなかったのである。誰かがしてくれたら、一緒に拍手するんだけどなあ。自分から拍手を始めるって、なかなかできなくて…。

余談だが、この映画のタイトル、いろいろな文章を見ると「スクール・オブ・ロック」となっていて「・(なかぐろ)」がついているのだが、公式HPやチラシなどのタイトルでは「・」を抜いた「スクール オブ ロック」になっている。正式なタイトルはどっちなのか。「・」がないのは単なるデザインなのかなあ。

〔2004年4月29日(木) 新宿武蔵野館1〕


映画感想/書くのは私だ へ        トップページへ