マリリン と ボー ショート・ストーリー 

2006年6月1日


2006年6月1日、マリリンと真理の誕生日。
マリリンは80歳、真理は20歳。
一家揃ってお祝いパーティをしたあと、真理は祖母のマリリンと2人になった。

「おばあちゃん、お疲れさま。今年も誕生日をみんなでお祝いできて、よかったね。今年は、おばあちゃんの80回目の記念すべき誕生日だから、世間ではイベントだってやってるし、これから、もっと盛り上がるかも」

「ありがとう、真理。楽しいパーティだったね」

「じつは相談があって。電話やメールじゃなくて、直接会って話したかったこと。
あたしがマリリン・モンローの孫だって知られると、簡単に、映画に出てみないか、とか、いろんなスカウトが来るの。あたしは演技をきちんと勉強していきたいけど、モデルの仕事はやってみてもいいかな、と考えはじめてる。おばあちゃんは、写真のモデルから入って女優になったでしょ」

「私が働いていた工場、そう、当時は日本と戦争が始まってたのね。戦争があったから、私は工場にいた。そこにカメラマンが来て、魅力的な働く女性を写真に収めようとしたの。偶然そこに私がいたわけ。それが雑誌に載って…。考えてみれば、日本との戦争がなかったら、私の運命は違っていたわね」

「おばあちゃんの娘である、あたしのお母さんが日本人男性と結婚したのも、何かの縁なのかな」

「そうね、きっと。私は日本には、ジョーと一緒に来たこともあるし、縁があると思うわ」

「モデルをしながら演技の勉強もしたの?」

「「したわよ。女優になりたかったからね。私の夢だったもの。モデルになることができて、女優にステップアップするためには、このうえないチャンスだったわ」

「いまの日本にも、モデルから女優になる人がいるのよ。あたしも、その線でがんばってみようかなあ」

「真理なら、きっとできるわよ。だって、私という美人女優の血統書つきなんだからね!(笑)
女優業は、大変よ。あんまり自信もなかった。あの頃はスタジオの力が強くて、会社が決めた映画に出なきゃいけないようなところがあったけど、とにかく私は女優の仕事をしたかった。ただ頭の軽いだけの女みたいな不満のある役でも、一所懸命やったわ。とにかく映画に出て、名前を売るためには、しかたなかったのよ。
私の演技を批判する人がいても構わなかった。ほんの一握りでも、私のことを好きになってくれるファンがいれば幸せだったの。自分に誠実でいる限り、きっと私の仕事は報われると信じていた。
セックスシンボルとか大騒ぎされて、自分でも、とまどったけどね。グラマーで色気のある役を、としか会社は考えてなかったのよ。その頃は、とにかく我慢ね。そのうち主役になってやる!と、いつも思っていたわ」

「すごーい。あたしは、おばあちゃんみたいにお色気ないから、もし女優になれても、どんな役が来るのか見当がつかないな」

「お色気、あるじゃない。自分で気づいてないのね。でも、そういうのは自覚しなくてもいいのよ。
私の場合は、お色気を武器にした面もあるけど、いまは時代が違う。モデルを始めるのもいいと思うな。何事も経験だしね。自分の思うようにやってみればいいわよ」

「ありがとう、あたし、おばあちゃん大好き!」

真理はマリリンに飛びつくように抱きついた。マリリンは、孫娘をしっかりと抱きながら、いつまでも、こんな幸せが続けばいい、と願った。


     マリリンがお好き へ         トップページへ