マリリン と ボー ショートストーリー
ナイト・ビフォア・クリスマス
「もうすぐクリスマスね」
「うん。21世紀最初のクリスマスということになるね。ミスター・コイズミと電話で話したんだけど、日本ではキリスト教を信じてなくてもクリスマスはやるみたいだよ」
「きっと、ほかにもそういう国がたくさんあるんでしょうね。アメリカだってクリスチャンばかりじゃないわけだもの。とにかく、世界中で幸せなクリスマスをお祝いできるといいけど」
「今年は悲しい事件もあったし、やっぱりクリスマスは静かに平和に過ごしたいな」
「24日の夜は、うちにいられるんでしょう? わたし、その日は仕事がオフだから、ちゃんと料理作るわ」
「お、それは楽しみだなあ! 甘党のぼくとしては、少なくともケーキは用意してほしいね。それとシャンペンも。たいへんなら、あとはケンタッキーのチキンでもかまわないけど」
「さては、あなた、わたしのクリスマス料理の腕、信用してないのね? それに、ケーキだって今回は買うんじゃなくて、手作りしようと思ってるのよ。もっとも、どんなふうになるか、やってみないと予想つかないけど」
「君の腕前は信用してるとも。いつだって君が作ってくれるものは、いちおう、何でもちゃんと食べてみてるだろう?」
「いちおう、って何よ(笑)。でもねえ、わたし知ってるけど、あなた、たまに苦虫をかみつぶしたような顔して食べてるときがあるわよ」
「へえ? そんな顔してたかい? だったら、きっと仕事のことを考えてたのかな」
「そうなの? そういえば、よく、食事をしながら難しい顔して難しいお仕事の話をしてる人たちがいるけど、わたしはそういうのは嫌い。食事のときは、もっと楽しいことを考えなきゃ」
「というと、君のことを考えてればいいんだね」
「そう、そのとおりよ(笑)!
ねえ、ところでクリスマスカードのことなんだけど、ネット上でお世話になっているかたたちに、メールでカードを送ろうと思うの。メールアドレスが分かっている人にしか送れないけど、あとでカード作るのを手伝ってくれる?」
「いいですよ。わたくしめは姫の忠実な下僕ですから、なんなりとお申し付けください」
「ありがとう。ステキな下僕さん」
「どういたしまして。かわいいお姫様」
クリスマスが近い、ある夜のお話。
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