小泉今日子さん、5枚目のアルバムは「Betty」。1984年7月21日発売。

収録されていればその曲が「売り」にもなるだろうシングル曲が1曲も入っていないのは、当時のアイドルのアルバムとしては珍しいことではないだろうか。
LPとCDで、ジャケット写真が違っているのは、最近まで気づかなかった…。すでに、このころLPは買っていなかったはずだし。


こちらは、CDのジャケット。

以下、小泉さんとアルバム製作担当ディレクターの田村さんがこのアルバムについて語り合っている「Betty+5」の解説書から、主な内容を取り上げてみると…。

筒美京平さんの作曲だけで丸ごと1枚アルバムを作りましょう、がコンセプト。
編曲はすべて船山基紀さん。デジタルレコーディングの勉強で海外留学して、フェアライトなど高価な機材を一式買って帰国していた。
小泉さん「好きなアルバムだったかも」
銀色夏生さんは当時、駆け出しで、たくさん詞を書いてもらって、そのなかから選んだ。
小泉さん「(松本隆さんは松田)聖子ちゃんに書くのと世界観を変えてくれたのがうれしかった…(中略)…もうちょっと強い、こちらからキスするような女の子像が多かった気がします」

とにかく、ひとりの作曲家がすべての曲を作っているせいか、すごく、まとまっている感がある。英語で言ったらトータル感?(改めて言い直さなくたっていいが。)
当時は私は、このアルバムは、それほど好きでもなかったと思う。予想内の心地よい範囲から飛び出ていない印象というのか、あんまり面白くないというふうに思えたのかもしれない。
いや、バラエティはありますよ、このアルバムのなかで、いろいろな曲調はある。よく、ひとりでこんなにバラエティに富む曲を作ったなあと感心するほどの。さすがは、希代のヒットメーカー筒美京平というべき。
ただ、やはり「違う作曲家」の作品が集まってはいない、というか…それを言ったら、シンガーソングライターのアルバムも面白くない、ということになりそうですが、それはまた、いろんな個人的な好みが関わってくるので。

…と、まとまらなくなってきたところですが…もう、このアルバム、iPhoneで何回も何回も聴きました。
このアルバムについてのディスコグラフィ記事を書くまでは、次のアルバムを聴かずに、コレを聴き続ける、というストイックなことをしているせいもある(苦笑)。
でも、何度でも聴けて、飽きない。それは、すごい。(たんに、ファンだからでしょ、というなかれ。)
シングル曲が入っていないこと、作曲家がひとりなこと、シンセサイザーなどエレクトリック&デジタルな最先端な編曲?を取り込もうとがんばった(らしい)こと、などなど「攻め」の姿勢が満タンなのは素晴らしい。
編曲には、世界初のサンプリング・マシンFairlight CMIや、LINN Drumなどを使っているという。
そんな最先端ワールドを、ぶれることなく余裕で歌いこなすキョンキョン。

全曲が筒美京平作曲、船山基紀編曲のアルバムには、同じ年(1984年)4月の、柏原芳恵「LUSTER」、1986年12月の中山美穂「エキゾティック」もある。

試聴は、こちらや、こちらなどで可。


こちらはLPのジャケット。

1.素敵にNight Clubbing
作詞:森 雪之丞、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
ビッグバンド的な演奏にのって華やかに始まる、明るいテンポのいい曲で心地よい。

2.天然色(テクニカラー)のロケット
作詞:松本 隆、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
(テクニカラー)は、実際はカッコ書きではなく、ルビ。
ずいぶん久しぶりに聴いたとき、ああ、こういう前奏だったんだよ、そうだよ、そうだよ!(かっこいい!)と思い出して、背筋にゾクゾクッときた!
機械的な宇宙人っぽい発声のような部分も、かっこいい! 宇宙的な(?)演奏も! ELOの「ザナドゥ」に似た感覚を思う。
もしかしたら、アルバム中いちばん好きな曲か!?

3.夜風にコールミー 素肌にコールガール
作詞:銀色 夏生、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
打ち込みのリズムがいいよねー。そこにホワワワーンという感じのシャボン玉みたいな音がかぶさってきて。編曲も歌も可愛いよ!

4.哀愁ボーイ
作詞:銀色 夏生、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
ちょいシリアスなメロディに。フェイドアウトまで、シリアス風で押しますね〜。

5.13日の金曜日
作詞:森 雪之丞、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
前年のマイケル・ジャクソン「スリラー」に影響を受けたんだろうなあと思える曲。歌詞では、彼の指も毛むくじゃらになるし。
英語の語りが、いかにも日本人のしゃべる英語に聞こえて、かっこよくない。

6.今をいじめて泣かないで
作詞:銀色 夏生、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
女声コーラスが効いている。編曲も手が込んでいるように思うし、おしゃれな感じに仕上がってる。曲名からして、しゃれてるよね。

7.プレゼンテーション
作詞:康 珍化、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
トランペットで始まって、かっこいいっす! 伴奏、かっこいいっす! ラスト4曲は、康珍化さんの歌詞でまとめている。

8.好きにして
作詞:康 珍化、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
ロックンロールなので、ライヴ受けする曲。手拍子も入ってる! 好きにしていいよ、なんて言われた日にゃ、もう。バラードからロックまで何でも来い!なキョンキョン。

9.ラブコールをアンコール
作詞:康 珍化、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
これも、かわいいです。ライヴのアンコールにも使える。親衛隊風な声で「アンコール」のコールが入ってくるし!

10.バナナムーンで会いましょう
作詞:康 珍化、作曲:筒美 京平、編曲:船山 基紀
締めは、バラードで。波音、鳥の声から始まり、ピアノの音色…。


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