行ってきました湯原温泉。(湯原温泉report)

 朝5時過ぎに起きた。まだ暗い。しかし、

遊びに行く時は、いくら朝早くたって、ちゃんと目が覚める。

 駅を6時15分発の電車に乗る。空いているかと呑気に思っていた私は甘かった。すでに座れずに立っている乗客もいるではないか。ひゃー、皆さん、いつもこんな朝早くから出勤してるんだ! そういえば今日は金曜日。しみじみ大変だなあ。ごめん、私は遊びに行きますよ。

 でもって、東京駅に着き、駅弁を買う。旅行に駅弁。これは欠かせない楽しみのひとつだ。さて何を買おうかなと売店を、ずずいと見ると、

駅弁コンテスト 大人の部 グランプリ受賞

 という誘い文句に目が釘付けに! これにしよう!
 名前は『21世紀出陣弁当』、1000円ぴったり。周囲の目が気になり、写真を撮るのは、はばかられたが、お品書きを持って帰ったので、中身を列記してみよう。

ぶりの照り焼き  バイ貝の旨煮  こんにゃくの味噌田楽  しそ薩摩揚げ  鶏唐揚げ  香り卵  野菜の炊き合わせ(里芋、椎茸、蓮、ごぼう、人参、ひたし豆)  栗甘露煮  昆布巻き  小女子(こうなご)の佃煮  おにぎり(ひじき二ヶ、ゆかり一ヶ)  漬物

 という豪華なものだが、駅弁なので、ほんの少しずつしか入っていない。だが、なかなか美味しく満足である。竹かごの入れ物を使っていて、捨てるのがもったいないと思ってしまった。
 武将が縁起をかついで食べた、勝ち栗と昆布(勝って喜ぶ)、ほら貝に見立てたバイ貝、出陣旗をかたどった串こんにゃくなどを入れて、出陣弁当と名づけている。

 さて、姫路に着き、そこから姫新線に乗る。岡山まで行って津山線に乗る手もあるのだが、電車の時間などを考えて姫新線にした。
 ところが、電車を見てびっくり。なんと

1両だけの電車

 なのである。おーいおい、そんなにお客のいない田舎なのかよー。
 発車時間になった。乗客は…少ない。確かに1両で足りるわ、こりゃ。
 この姫新線で、湯原温泉の最寄り駅である中国勝山駅まで行くのだが、途中で2回も乗り換える。姫路から中国勝山まで、山の中、約123キロメートルを3時間かけて行く。時速にすると、おお、約40キロではないか。(簡単な計算でよかった…)

 やっとこさ中国勝山駅に。さあ、あとはここから、湯原温泉を通るバスに乗れば、30分くらいで着く。前の日に宿へ電話したときに、バスの本数が少ないからと、前もって発車時間は教えてもらっていた。
 バスに乗り、途中に小学校が2つほどあったのだろう、小学生の集団が乗ってきた。なにか知らないが、ボトルに入れた飲み物を飲んでいる子が何人かいる。振ると、がちゃがちゃいってやかましい。氷入りか? ここでの流行りか。
 くねくねした道を走る。だんだん周りが緑の深い、山の景色に変わってくる。バスは、ぐわしとばかりに90度直角に大回りして曲がって橋を渡る。これが湯原温泉を流れる旭川だな。
 やがて湯原温泉の看板が。おー、着いたぞ。バス停のそばには売店が2軒あって、外のベンチでお客さんが店のおばちゃんと何やら話している。なんか、のどかだなあ。これぞ温泉街の雰囲気。

 まだチェックインには早いので、宿の場所を確認してから、少し歩くことにする。荷物はカバンひとつなので、持ち歩いても大変ではない。砂湯まで○○メートルという看板があったので、そちらのほうへ歩く。道の両側には旅館が並ぶ。旭川沿いの道を上流方向に行く。やがて車が通れないほどの細い道になると、下のほうに砂湯が見えてきた。川が流れるすぐ横に湧く温泉に何人か入っている。ダムが近くに見える。川とダム、山と空の雄大な景色を従えた、自然の中の温泉。明日は朝から来るぞと思いながら、宿へ向かった。


 宿は宝来屋。右の写真では左の奥に見える四角い建物。

 ちょっと見にくいが、この写真で、山に囲まれた現地の様子がお分かりになるだろう。 チェックインして4階の部屋に案内される。非常口や風呂の場所の説明を聞いて、お茶菓子で一服したあと、さっそく露天へ。

 この宿は、4階からさらに階段を上に上がったところに風呂がある。家族風呂、男女別内湯の入り口を左右に見ながらなおも行くと、突き当たりの左右に露天風呂の入り口があった。右が女性用、左が混浴…えっ! 混浴だなんて知らなかった。しかも、しかもです、私がドアを開けようとした、ちょうどその時に、中から若い男女が出てきた。うわ、カップルで入ってたのか。もうちょっと前だったら一緒になっちゃってたな。もしそうなってたらどうしよう、なんて思いながら入っていくと、いまは誰もいなかった。

 丸っこい岩風呂で、3、4人入れば満員の大きさ。屋上なので、見える景色は山や他の旅館の上のほうだったりする。ここの湯は弱アルカリ性単純泉とのこと。夕食時までゆっくり独り占め状態で入った。私はふだんの風呂はからすの行水、小鳥の水浴びのように早いが、温泉だと長い。ただし露天でなければ長くは入っていられない。露天ならば、熱くなったら足腰だけ浸かっていれば、のぼせたりしないのだ。これが内湯だと、たとえ足腰だけ浸かっていても、周りの空気が熱いので、のぼせることになる。
 

 さあ、夕食だ。

食前酒に桃ワイン、おかずは、茶碗蒸し(写真を撮ったときには、もう食べてしまっていた)、鮎(頭から尻尾まで食べられた)、スモークサーモン、天ぷら(えび、野菜)、刺身、蒲焼きののった蕎麦、まつたけの形に見せかけた里芋(!)など。デザートに三色(ぶどう、グレープフルーツ、抹茶)シャーベット。

 桃ワイン、あったかい茶碗蒸し、鮎が特に美味しかった。もう満足。おなか一杯で、おひつにご飯が残ってしまった。

 しばらくテレビを見て休憩。西日本テレビを見てみる。高松の「そごう」でのマリリン展開催のコマーシャルを何度か見た。東京の開催時はコマーシャルなんて見なかったな。なんとなく得した気分。

 その後、内風呂と露天へ。露天へ行くと、今度も誰もいなかった。お客がいないわけではないのに、不思議だ。途中で入ってきたのも男性1人だけ。のんびりたっぷりと露天を堪能した。部屋に戻ったのは11時ころ。電話のモーニングコールを朝6時にセットして寝る。明日は砂湯だ。

 朝起きて、まず砂湯に写真を撮りに行った。砂湯には鍵のついた更衣室などなくて、衣服を置く棚があるだけなので、デジカメなんかを持っていって入浴したら、盗まれる可能性もあって、不用心でしょうがないからだ。
 写真だけを撮りに行くのは、被写体が裸なだけに、なにか悪いことをしているような後ろめたい気がした。だがせっかくの記念なので、雑誌の記者にでもなったつもりで写真を撮った。あまり近くから撮るのは、さすがに勇気がなかった。そういうわけで、はっきりは写っていないので、女性読者の皆様、かんべんしていただきたい。

 さて、デジカメを宿に置いて、今度は入りにやってきた。
 大きい時計があるので、時間は分かる。朝食の時間までゆっくりできる。子ども連れの夫婦を含めて8人くらい入っていた。

 砂湯は3つの湯に分かれている。

 写真でいうと、右手前の屋根付きが「長寿の湯」。ここは少し湯が熱い。長くは浸かっていられない。左手前が「美人の湯」。ここはいちばんぬるくて、長湯にはいい。美人の湯と細くつながっているのが「子宝の湯」。写真では中央あたり、屋根のうしろのほうにある湯だ。ここは美人の湯よりも少し熱い。
 美人の湯、子宝の湯のすぐ向こうに川が流れている。川の水に手を浸してみたが、ほんとに冷たい。数十センチしか離れていないのに、この温度差。自然の不思議さに驚く。
 奥にはダムの壁が立ちはだかる。

 私は、ほとんど美人の湯に入っていた。当然ながら、決して美人になりたいわけではない。他の湯だと、ずっと入っているには熱いからだ。
 夫婦らしきカップルが2組。女性はバスタオルを巻いているので、こちらも何の気兼ねもいらない。変な意味ではなく、もっと若い女性も入ってくればいいと思う。バスタオルを巻けば少しも恥ずかしいことはないし、入ってみなければ、この場所で味わうことのできる、自然の中での開放感を体感することはできないのだから。
 湯に浸かって、見上げれば、青い空と白い雲。緑の森。
 宿の中に作られた人工の露天風呂と違って、こちらは何によっても区切られていない、自然の中の一部だ。そこでゆったりと何も考えずにいる幸せ。
 小さな男の子2人がはしゃいで、岩の上ですべりそうになる。ご老人たちは首まで湯に浸かりながら世間話をしている。老いも若きもみんなが一緒に楽しんでいる。
 朝食を頼んだ時間になって、一度湯を上がって宿へ戻る。

 朝食は、伝統的和食。ご飯
、味噌汁、海苔、卵焼き、干し魚、漬物など。おいしく残さずいただいた。
 それから、午後1時過ぎに出る、岡山駅まで行くバスの時間まで、また砂湯に行くことにする。宿で荷物を預かってくれるということなので、チェックアウトしたうえで荷物を宿に置いてもらう。

 太陽が高くなり、日差しが砂湯を照らすようになってきた。長く入っていると足腰までしか浸かっていない時間が多いので、顔や肩のあたりに日光の熱さを感じるようになってきた。それでもタオルを顔にかけたりしながら入っていた。時間はゆっくりと、しかし着実に過ぎていく。
 若い女性がビデオカメラを持ってきたのには驚いたが、彼氏が入っているのを撮りにきたらしい。そんなこんなで、のんびりしているうちに、タ〜イムアップ。
 もっと長くいたいなあと思いながら、まだ人々ののんびりとした気分が漂う砂湯をあとにした。

 旅行から帰ってきたあと、肩と、へその上あたりの皮がむけた。(爆笑)

 (完)



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