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身分の高い人物の葬儀は、宗教的にも、社会的にも重要な式典であり、その規模は生前の権力や、地位を反映したものでした。荘厳でドラマチックな葬儀の詳細な様子は、印刷物の形で記録に残されました。

教会内は、建築家によって特別に装飾され、その中心に棺を安置するための棺台(catafalque)が設けられました。棺台は、恒久的な建築物ではなく、あくまでも制約の少ない一時的な装飾物であるため、建築家は、自らのデザインのエッセンスを、十分に表現することも可能でした。

そういった装飾物を、ここでは「紙上の建築」として取り上げ、イタリアで出版された2冊の書物を紹介します。


Cagnola, Luigi

Le solenni eseguie di Monsignor Filippo Visconti arcivescovo di Milano celebrate nella Metropolitana il giorno XV di Febbrajo l'anno CICIC CCCII.
Milano, nella Stamperia, e Fonderia del Genio Tipografico, 1802.
Engraved aquatint title leaf, engraved portrait, 4 engraved aquatint plates.


この本には、ミラノ大司教の葬儀に際しての室内装飾および、棺台の図が収められています。12本のコリント式列柱によって構成されたローマ神殿風の棺台のデザインには、Luigi Cagnola(1762-1833)によるものです。 通常、棺台には、ピラミッドなどの神秘的なモチーフを採り入れることが行われていましたが、ローマ建築の伝統を守ることを常としてきたCagnolaは、ここでも自らのデザインを貫きました。
 そのことが、数多く出版された同様な書物の中でも、この本へ建築的な興味を持たせるものとしています。 また、図版はセピア色のアクアチントで表現され、たいへん魅力的なものとなっています。
 

Relazione del Funerale celebrato in Parma nella Chiesa Conventuale della Beata Vergine della Steccata...di Dorotea Sofia....
Venice, Giovanni Battista Recurti, 1750.
Three folding engraved plates.
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パルマの公爵夫人Dorotea Sofiaの、葬儀の様子を記した本です。 宮廷建築家Francesco Grassiによる、葬儀のための室内装飾と棺台の図版が収められています。その凝った装飾は、Grassiの建築家としての実力を十分にあらわしています。
 上図に見るように子牛皮による装丁も美しいのですが、この本で特筆すべきは、広げると高さで70cmほどになる棺台を示した図版の大きさです。上でも述べたように、Festival bookは、折込図版が多いのがひとつの特徴ですが、棺台のみを表現するのに、これだけの大きさの図版を製作するのですから、棺台が、葬儀においてどれだけ重要な位置を占めていたのかがよくわかります。
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