+++ 東京公演・帝国劇場(2004年12月23日・夜の部) +++

待ちに待った『SHIROH』再観劇の日。会いたくて会いたくてどうしようもなかった人にやっと会える、そんな待ち遠しさで一杯だった今日のこの日。同じ芝居を公演中に何度も観たことがない私は、楽しめるかどうか正直不安でしたが、その不安も何のその。どうしようもなく面白かった!!感激の度合いは初観劇日以上でした。
もうお話の筋も、結末もわかってしまっているのに、どうしてこんなに楽しめるのか、自分でも不思議です。

ラストシーンでは上川さんの涙が頬をぬらしていました。この間観たときは、ここまで泣いていなかったのに、と思いつつ、胸を抉るような四郎の悲しみが痛いほど伝わってきて、その姿に思わず大泣きしてしまう自分がいました。

十兵衛との立ち会いの後、その場を後にするシーンでは「ようやく新感線らしくなってきたな」の捨てぜりふを残して立ち去る上川四郎様。場内から拍手喝采を浴びていました。

それと、牢獄で甚兵衛さんとお福が立ち去ろうとするシーンでの日替わりアドリブ、この日が「我々は忘年会の会場を探しに参りましょう」だったと思います(もしかすると12/26の記憶違いかも)。その後の伊豆頭のシーンで、江守さんが「忘年会の会場なんてもうどこも空いてないよ」とぼそっとつぶやいたのが面白かった。どうしても甚兵衛さんに言いたかったに違いない(笑)。

最初は少ないと思えたアドリブも、回を増して随分増えてきたようです。アドリブを振る役者さんたちにも余裕が見えました。

カーテンコールが始まり、2度目のカーテンコールになると客席ではぽつりぽつりと観客が立ち始め、アッキーの言葉を待たずしてスタンディング・オベーションとなりました。その中でアンコール曲の「光を我らに」が始まりました。
さらに続く、上川さんと中川くんのカーテンコール。もはや定番となりつつあるアッキーの投げkiss!ええーっと口を押さえて信じられない、というような表情をしながら立ち去る上川さんでした。これには色々パターンがあるらしいです。公演中に一度くらい上川さんも投げkissするのではないかという淡い期待(?)を抱かせて、この日の公演は終わりました。

この日気づいたこと。四郎様の髪型、ちょっと変わっているような気が??前に観たときは三つ編みはなかったような気がするのですが(そんなとこまで観ているなよ!)、今日は両脇の髪を三つ編みにして頭の後ろでひっつめていました。何だかお嬢ちゃまのような髪型ですが、格好いいはずの四郎様として、これでいいんだろうか…。

あと、改めて気づかされた音楽の良さ!一度観ているだけあってお話の筋に集中しなくても良いので、その分、音楽がじっくり聴けたということみたいなんですが、こんなに良かったっけ?!と驚きました。セリフを聞かせなければいけないので、あまり激しいリズムでは難しい、という部分ではロック色がやや薄いと感じられるのは前回と同じでしたが、そんなことはどうでも良いと思えるくらい、詞も曲も良いです。バラードのような曲調のものから正統派ハードロック、賛美歌風、ブルース風、といろいろありで聴いていても飽きることがありません。実は礼拝堂のミサのシーンで流れる「我らの御霊をはらいそに」を聴いて、思わず涙が溢れてきました。なんだか心にじーんと沁みていくんですよね、この詞と美しいメロディーが。これを悪魔(デーモン小暮閣下)が作ったなんて、本当に信じられません。
最初、違和感を感じた中川くんの声も、2度目の今回は、もう彼無しでこの作品は成立しないと思えるまでに作品に馴染んでいました。最初のシーンで聴かせるどこまでも透明で朗らかな歌声、そして人々をまるちりへ導く悪魔が乗り移ったごときの凄みのある歌、最後の四郎をはらいそへ導く囁くような優しい声。アッキー=SHIROHの図式がすでに出来上がってしまった気がします。モーツァルトではなくてね。彼の出演なくして、この作品の再演はもはやあり得ないでしょう。
それと杏子さん、バックコーラスと合っているとは思えないそのハスキーな声質が、微妙にこの作品にロックらしい味付けを与えていて、そのアンバランスさも、かえって素敵と思えてしまった。アッキーと杏子姉さんの声が、ロック・ミュージカルだったと気づかせてくれました。やはりこの作品には無くてはならない方のひとりになってしまっていました。
それと他の誰とも違う上川さんの歌い方。セリフを語るのと同じアプローチで歌っているのかな。テクニックで聴かせるのではなく、魂に直接語りかけてくるような彼の歌に妙に説得力がありました。素敵。

回を重ねるたびに、密度が濃くなってゆく『SHIROH』、それに比例して観客の熱狂度も高まってきている気がします(私も)。

この日は忘れずに、ロビーに置いてあった「TRUTH」と「上川隆也インフォメーション」のチラシを持って帰りましたとさ(笑)。どうやら、新たな扉を開けてしまったようです。