その7  Q&Aその1 嬉しかったことって?

今回は、みなさんから頂いたメールの中で、一番多かった質問にお答えします。
その質問とは、”今までエンジニアをやってて一番嬉しかった事は?”です。
どれもこれも、甲乙つけがたいいい思い出ばかりなんですが、涙が止まらなかった思い出を一つ。

それは、シャ乱Qの事なんですが、彼らとは、まだ、シングルベットが売れ出す前に出会って
(ズルい女のレコーディングから)、それからの縁なんですが、その頃の彼らは、まだ、全然有名で
なく、顔も、声も、歌も今ほどしられてませんでした。そんな時からのつきあいなんで、彼らのまさに、
血と汗と涙の努力をずーっと見てきました。

シングルヒットをたて続きにだし、ばんばんテレビにも出て、”バイバイアリガトー”なんて、飲み屋
や、カラオケから聞こえて来るようになったある日、彼らの故郷である大阪のしかもドームでコンサート
をやることが決まったのです。私自身、それ自体に特別な思い入れもなく、ライブレコーディングの為、
前日から大阪入りをし、本番を待っていました。

ですが、本番当日、長蛇の人の列を見て、彼らの努力が実った事を実感し、それだけでも、感無量に
なっていました。

ライブは順調に最後の曲、”ズルい女”をむかえ、会場はパニックとも思えるほど盛り上がり、会場全体
で大合唱。彼らの演奏をかき消してしまうほどの大きな歓声。
”本当によかった”この言葉が繰り返し胸の中に出てくるだけでした。
そんな中、アンコールも終え、ダブルアンコールで本当に最後の曲になりました。曲は”大阪エレジー”
大阪を題材としたご当地ソング的なラブソング。

会場の照明が全部つけられ、お客さんみんなの顔が見えます。つんくが曲紹介を終え、今日のお礼を
お客さんに言い、曲がはじまりました。

私の方も、これが最後の曲と思いながら録音中継車の中にいました。
ライブの映像がモニターに映し出され、聞き慣れた曲が始まり、しばらくすると、つんくの声が消えて
しまいました。一瞬、トラブルかと思い、モニターに目をやると、そこには、涙にむせて歌えなくなって
いるつんくが写っていました。
それだけでこっちも思わず涙が出そうになっていたのに、次の瞬間、会場が一斉に歌い出したのです。
シングルでもなんでもない、ただのアルバムの中の1曲を。

カメラが会場の至る所を映し出します。そこには、泣きながら一生懸命歌っているお客さんの姿が
いっぱい写っていました。あの彼らがこんなに沢山の人に受け入れられたんだと思うと、涙が止まりま
せんでした。このあとも、何度もこの映像を見たのですが、そのたび思い出され、涙が出ます。

こういう思いが出来たこと自体、非常に運がいいと思いますし、私にとっては一生の思い出です。
この思い出があるから、我慢も、努力もできます。
いつかまた、こういう出会いが待っているような気がして。
次回も、Q&Aにするつもりです。それでは。