今回は、みなさんから頂いたメールの中で、一番多かった質問にお答えします。
その質問とは、”今までエンジニアをやってて一番嬉しかった事は?”です。
どれもこれも、甲乙つけがたいいい思い出ばかりなんですが、涙が止まらなかった思い出を一つ。
それは、シャ乱Qの事なんですが、彼らとは、まだ、シングルベットが売れ出す前に出会って
(ズルい女のレコーディングから)、それからの縁なんですが、その頃の彼らは、まだ、全然有名で
なく、顔も、声も、歌も今ほどしられてませんでした。そんな時からのつきあいなんで、彼らのまさに、
血と汗と涙の努力をずーっと見てきました。
シングルヒットをたて続きにだし、ばんばんテレビにも出て、”バイバイアリガトー”なんて、飲み屋
や、カラオケから聞こえて来るようになったある日、彼らの故郷である大阪のしかもドームでコンサート
をやることが決まったのです。私自身、それ自体に特別な思い入れもなく、ライブレコーディングの為、
前日から大阪入りをし、本番を待っていました。
ですが、本番当日、長蛇の人の列を見て、彼らの努力が実った事を実感し、それだけでも、感無量に
なっていました。
ライブは順調に最後の曲、”ズルい女”をむかえ、会場はパニックとも思えるほど盛り上がり、会場全体
で大合唱。彼らの演奏をかき消してしまうほどの大きな歓声。
”本当によかった”この言葉が繰り返し胸の中に出てくるだけでした。
そんな中、アンコールも終え、ダブルアンコールで本当に最後の曲になりました。曲は”大阪エレジー”
大阪を題材としたご当地ソング的なラブソング。
会場の照明が全部つけられ、お客さんみんなの顔が見えます。つんくが曲紹介を終え、今日のお礼を
お客さんに言い、曲がはじまりました。
私の方も、これが最後の曲と思いながら録音中継車の中にいました。
ライブの映像がモニターに映し出され、聞き慣れた曲が始まり、しばらくすると、つんくの声が消えて
しまいました。一瞬、トラブルかと思い、モニターに目をやると、そこには、涙にむせて歌えなくなって
いるつんくが写っていました。
それだけでこっちも思わず涙が出そうになっていたのに、次の瞬間、会場が一斉に歌い出したのです。
シングルでもなんでもない、ただのアルバムの中の1曲を。
カメラが会場の至る所を映し出します。そこには、泣きながら一生懸命歌っているお客さんの姿が
いっぱい写っていました。あの彼らがこんなに沢山の人に受け入れられたんだと思うと、涙が止まりま
せんでした。このあとも、何度もこの映像を見たのですが、そのたび思い出され、涙が出ます。
こういう思いが出来たこと自体、非常に運がいいと思いますし、私にとっては一生の思い出です。
この思い出があるから、我慢も、努力もできます。
いつかまた、こういう出会いが待っているような気がして。
次回も、Q&Aにするつもりです。それでは。
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