その8  Q&Aその2 つらかったことって?

前回、嬉しかった事について書きましたが、今回は、やはり質問等のメールで多かった一番辛かった事を
書きます。

簡単にこれですなんて言える程思い出せないのですが(永くやってるといろいろあるもんで・・・)、
大きく分けて2種類あります。

1つは、やはり自分の不甲斐なさが原因のもの。技術、精神力、感情のどれも必要なこの職業の中で、
それらのコントロールがうまく出来ないと、とんでもないことになったりもします。私自身、ケンカ
(当然、殴り合いではないですよ)になった事もありますし、怒られたことも数々あります。
その中で強力に覚えているのは、”エンジニアなんて、バスの運転手みたいなもんだ”と言われたこと。

その人は、一流のプロデューサーで、その時の私は駆け出しのエンジニア。自分では、いろいろとアイデ
アをだして、すこしでも楽曲を良くしようと思ってました。
そんな時さっきの言葉を言われたんです。詳しくは、”エンジニアなんて、バスの運転手みたいなもんだ
決められた路線を走る運転手みたいなもんだ”。
ショックでした。そんなもんなんだ、自分がやってきたものは。非常に悲しくなりました。
なんか、ばかばかしくもなってきました。その日のTDは当然NG。後日やり直しに。状況は最悪に。
精神的にも、自分がやってきたことや、やろうとしていたこと総てを否定された気分でいっぱいでした。

さらに追い打ちが。後日TDやり直しだった仕事について話がしたいとディレクターさんに呼び出される

 ディレクター氏「今度やり直すTDなんだけど、やってはもらいたいんだけど、
         一つだけ条件があるんだ。」
 私      「条件ですか?」
 ディレクター氏「そう。今後の事もあるし、ハッキリさせといた方がいいと
         思って。」
 私      「はぁ、なんでしょうか?」
 ディレクター氏「君の熱意や、努力は認めているうえで、今度は、
         プロデューサーの言うこと以外はしないでくれ。
         プロデューサーの言っている事だけすればいいから、
         他の事は決してしないでくれたら、君と仕事をしよう」
 私      「・・・・・考えさせて下さい。」
 ディレクター氏「そうしてくれ、君のこれからの事だから十分に考え、
         連絡をくれ。」

そこに必要なのは、頭を持った人間ではなく、ただ、機械をいじれる人間なのか?
自分の意見や考えなんてどうでもいいのか?など、本当に何日も悩みました。その結果・・・

    一生のうち一回くらいそんなことがあってもいいじゃないか。

と思い、その仕事をやりました。結果は、大成功。

そのプロディーサーが言いました。
”良くがんばったね。君の総てを否定していたら簡単、君とは仕事をしない。だけど、良い物を持ってる
んだ。もっと、もっと視野を広げなさい。君の考えや、周りだけが総てじゃない。”

プロデューサーは、ディレクターに対してもこう言っていたそうです。”彼のやろうとしている事は、
十分かっているつもりだ。だが、私はそれを10年以上も前にやっている。彼がやろうとしているそれ
が、この曲にあわない事もわかる。だけど、彼の何とかしようとするその気持ちは買いたい。”っと

結果的には良い思い出になりましたが、それはそれは随分と悩んだもんです。
結局、断片でしか見えていない自分がわるかったのですが、良い教訓になりました。

ちょっと書きすぎたので、もう一つは次回に。