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このページは、文章系個人サイト『ニーモニック・スピンSR』の旧記事アーカイブの一部です。もしよかったら、以下の本体サイトもご覧いただけると嬉しいです。






06.02.2001 (Sat):『カッティング・エッジ』

■こんにちは。6月の声を聞けばゴー! 20代ラストスパートのspinnです。父親ゆずりの特性で気持ちと外見ばっかり若いまま、モンドグロッソの「Life」とか夏っぽいやつを爆音で鳴らす大倉山ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

■そしておなかが空いたからカップ焼きそばなんか食べちゃうよ。フタをあけて袋を取り出し、「お湯前にソース」で全てを台無しにしちゃいたい衝動と闘いながら「かやく」の袋をあけていきたい。ってあれ?切れ込みが無いよ?

■透明で小さな袋の端に書いてあるのは「もあけられます●●この端のどこからでもあけられます●●この端のどこからでもあけられます●●この端のど」。なるほどね、切れ込みがなくても・どこからでも好きなところからあければいいんだ。失敗したら他の場所からあけるわけね。ふーん‥‥‥でもさー、なんかそれって親切なようで、ちょっと投げっぱなしになってないか?

オスカルとアンドレが血と涙を流して戦ったあの革命から200年、基本的に自由=素敵なことになってるし僕もそう思う。思うんだけど、だからって何でもかんでも自由にしとけばそれだけで万事OK快調かっつーと、そりゃ違うなって気がするんだ。

■例えば海外旅行のおみやげでチョコがいろいろ入ってる箱とか出されて「どれでも好きなのとっていいよ〜」って選べないっつーの。飲み会みんなで席ついて早くバカ話してーぜメニュー開くぜ「当店自慢の多彩なメニューは128種類〜」ってそんなの検討してられるかっつーの。重要度の低い選択はさっさとすませてしまいたい。そんなときって、素晴らしいはずの自由さ加減がえらく鬱陶しくない、ですか?

■そして鬱陶しさとか心の負担が発生するってことは、イコール「サービスが必要」ってことだ。選択の最終的な自由さはやっぱり素敵なので残しておくとして、鬱陶しい部分をちょっとサポートしてあげればいいんじゃないかと。チョコだったら「この四角いのがおいしいかも」って言うとかさ。飲み屋のメニューにある「おすすめ8品コース」とか見ると「これって売れない商品の販促では」って妙に警戒する人がたまにいるけど、まあ確かにそうかも知れないけど、ある程度決めてくれるのって立派なサービスだと思うんだよね。

■会社の先輩ともこの話をしたんだけど、「かやく」の袋の例だったら「切れ込みを入れておいて(サービス)→なおかつ失敗したときのためにも●この端のどこからでもあけられます●になってる」のがベストじゃないかって結論になった。どうでもいいことにオオゲサですか? いやいや、こういう積み重ねも大事なんだよ、きっとね。

■たぶん、選択する自由ってこと自体は気持ちよくないんじゃないかなって思う。ちゃんと前情報があって・目的がしっかりしてて、ようやく自由に選べて気持ちいい〜ってことになるんじゃないか。そして、気持ちよくない平べったい選択をみつけたら、ちょっと傾きをつけてあげるといいサービスになるんじゃないかなと思うんだけど、どうか?

■さて、最近僕のページにリンクしてくれた(ありがとう)「脱力系。」からお越しのみなさんこんにちは+初めまして。僕のページもいろいろあるけど、ゲストリストこと*ridersあたりから見てもらうと、うん、いいと思いますよ〜。

■‥‥‥なーんて、いまのはただの誘導でした。実際「いろいろ」ってほど項目ないニモスピですが、これからもどうぞよろしくお願いします。それでは、またね。


06.19.2001 (Tue):『24時間のはてに』

■こんにちは。週末はルマン24時間耐久レースをずっと観ていたspinnです。F1メインで日頃からいろいろ観てて、だいぶレースマニアといえる感じの僕なんだけど、夏至に一番近い(=昼の時間が一番長い)週末を選んで行われるこの耐久レースは、毎年のことながらいつも以上の思い入れで観ちゃうんだよね。いつもありがとうだぜテレビ朝日

■そして毎年おもしれーなーと思うのが、24時間って数字には(その困難さに比べて)驚くほど意味がないってことなんだよね。24時間だから何なんだ? そこには、多分「昔からやってるから」以外の意味が無いっぽい。なのに、それでも24時間を目指して200〜300キロのスピードで走り続けるなんて‥‥‥いやー、これは相当素敵なことだなって。24時間ってことはもちろん真夜中だって走るってことで、眠いのに3人交替(1人8時間だよ。普通の運転だってやだよ)で暗い田舎道(コースの公道部分)を300キロ近いスピードで走る。繰り返しになるけど、「24時間」には意味ないのに!

■実は、僕にも24時間挑戦の経験があるんだ。高校のとき、アマチュア無線の24時間耐久イベント・春の「ALL JA」と秋の「全市全郡」の2つに出たことがあって、詳細は省くけど要は24時間でどれだけの局と交信できるか? を日本中のアマチュア無線局で競うものだった。当時いた物理部(マイコン野郎だったからね!)のみんなで交替で寝起きしながら、24時間無線でCQCQ交信しまくった。21時スタートで、だいたい翌昼過ぎくらいが眠くてつらくてねー。繰り返しになるけど、「24時間」には意味ないのに!

■そんなこともあって、僕にはなんとなく彼らルマンの人たちの達成感を共有できる気がするし、走ってるドライバーやチームにとっての「24時間」に本当はちゃんと意味があることも知ってる。それってさ、よせばいいのに自分たちで選んで決めちゃったゴールだってことなんだよね。

■そういえばこの前、Gで始まる超有名レースゲーム3をやってたとき、気がつかないうちに初級レースを全クリアしてたんだ。いや、「気がつかない」は違うな、「気がついてたけど大して気にとめてなかった」って感じ。なのに僕の不意をついて流れる格好いいエンディングムービーとテロップ‥‥‥そのとき、自分でもびっくりするくらい僕には達成感がなかったんだよね。確かにわりと苦労してクリアしたわけだし、メロウな曲も映像もあるのに、お膳立ては全部揃ってたのに、ね。

■おそらくゴールとそこに至る困難な道をつくれば、とりあえずゲームのカタチにはなっちゃうんだ。道路をクネクネっと作って車を置いて基準タイムを設ければ一応ゲームになるし、基準タイムがゴールになる‥‥‥んだけど、それだけじゃまだカサカサの「物理ゴール」でしかないし達成感も小さめだ。物理ゴールは、そこに投影する「ここに挑戦してやるぜ」って決めた僕自身の「気持ゴール」が揃ってはじめて、クリアが嬉しいスーパーゴールになるんじゃないかなって思うんだよね。

■そして、気持ゴールが設定できさえすれば、物理ゴールのほうはわりとつまんない・意味のないものでも大丈夫みたいだ。ルマンの場合、「24時間」自体には意味がなくて、そのくせかなり辛いのに、そこに挑戦しようって気持ゴールが重なった途端に魅力的なスーパーゴールになっちゃったんだろうなって思う。そして人が決めてくれた目標よりも自分が決めた目標のほうががんばれるし達成して嬉しいので、テレビゲームの場合も遊ぶ人の気持ちゴール設定をそっとうながすような、そんな立ち位置がいい感じなんじゃないかなって思うんだよねー。かわいい女の子が「わたし短距離の速い人って好きだな」って言うとかさ(←ダイレクト過ぎ)。

■‥‥‥なんて以上、クラシックな「ゴール→達成感」タイプの話でした。だからどうしたって気もするだろうけど、日々こんな調子でごはんを食べているところのライブ中継とか思ってご笑納ください。僕以外の人はもっとすごいことを考えてる筈なので心配いらないよ! それじゃまたね。


06.23.2001 (Sat):『リピート』

■こんにちは。20代最後の週末をダラリと過ごすspinnです。昼過ぎに起き出して、ちゃんと着替えもしないでシンセ弾いてみたり・音色作ってみたりでもう16時。気がつけば今日はまだメシ食ってねーなーみたいな、ああもうほんとに学生のときみたいだ。楽しいなあ。あんま変わってねえなあ。

■そんな適当な生き様の中でも、一応ちっちゃい曲ができたので公開しちゃうというのが今回の更新。こういうの久しぶり。レコードからまんまサンプリングしたリズムに手引きシンセを添えた1小節を、*solutions内の*utilities#03・『ループ』におきました。背景の笑えるカッコつけ画像は、なんつーの、デザートをのっける絵皿みたいなものと思えば腹も立たないかも。

■IEの人は(トップページと同じく)bgsoundタグの効果で勝手にループしはじめるので、好きなだけ聴いてイヤになったら「戻る」で止めてください。サウンドデータのロードにちょっと時間がかかる(107キロバイト分)ので、最初は無音でもカッコつけ画像がでてしばらく待ってると鳴り始めるはず。Netscapeの人だと自動では曲が鳴らないので、リンクからダウンロードして→お手元のサウンドソフトでループさせたりしていただけると嬉しいです。

■CDとかMDとか・そしてもちろんコンピューターとか、デジタルで音を扱える機械がでてきたことで、誰でも簡単に音楽をリピートさせられるようになったよね。で、その結果、「ループ聴き」っていう音楽の聴き方ができるようになったんじゃないかなって思うんだけど、どうかな。ちょっといいなって思う音のカタマリを、好きな長さだけ聴いて・好きなところでやめる。かつてサティやイーノから、主張しない・家具っぽく部屋の中でたたずむ音楽とか提案されたわけだけど、もっとちっちゃく、ほとんど「空調」みたいな感じで音楽を楽しめるようになった気がするんだよね。

■となれば、そういうループ聴き専用の音楽があってもいいんじゃねーのとか先生は思います。香水みたいに、ふわっと香りがしてすっと引く、みたいなね。僕が作った波形データ自体はダラっとしたひどくイージーなものなわけだけど、そういうループ聴き前提にデザインされた音楽がもっとあっていいと思うんだ。

■少なくとも僕は、勝手ながら自分でもえらく気に入って、さっきから適当にループさせて聴いています。もともとハウスとか繰り返しっぽい曲が好きだってこともあるけど、好きなとこで止められる感じが気楽でいいんだよね。この「好きなところで止められる」ってのも、かなり重要なことかもしれないな。

■てなわけで、今回はそんな気持ちを曲にしました。よかったら聴いてみてください。それじゃ、またね。


07.06.2001 (Fri):『イリュージョン』

■こんにちは。なんかまたお久しぶりなspinnの本日のご予定は、病気の人のお見舞いってことで会社をお休みしています。こんな平日に会社のあるデッドエンドシティ・神奈川新町を離れるのもひさびさだし、いつもできないことをしていきたい。

■それでフトンのカバーをざざーっと洗って、掃除機かけて、でかい音でレコード聴きながらの日中更新もしちゃうよという仕組みなのです。平日昼間はお隣さんもおでかけだから迷惑にならずイエーイだし、毎日少しずつカウンターをあげてくれるみんなには、その都度小さなガッカリを供給してるかも‥‥‥と思うとごめんね+ありがとう。全くもって低周波更新で残念ですが、一方そのガッカリで思い出すこともあったので今日はその話をしていきたい。ていうかもう始めてました。

■ガッカリ中のガッカリつーか、激しく残念なガッカリを表す言葉に「幻滅」っていう日本語があるよね。幻が消え、まるで夢から覚めるよう‥‥‥オアシスは砂漠に消え、馬車はカボチャに、小判は葉っぱに。幻が消えることって確かにガッカリで、そんなガッカリを抽出した「幻滅」って言葉はガッカリの最上級表現じゃないかと思うわけだ。辞書で「幻滅」ってひいてみた。なるほど、英語でも「disillusion(幻滅させる)」っていうらしいよ。イリュージョンをディスするわけね。ゴーバンズの「ノーメイクの悲劇」って曲を思いだす。フジ深夜の「冗談画報」で歌ってたな〜(10年前の雑情報)。

■だけど、幻が消えてガッカリするってことは、逆に言うと幻が見えてる間はガッカリ前の「夢心地」ってことだよね。例えば、絵としてはかなりガッカリなノイズ同然のランダムドットでも、ふわっと立体が浮き出してる・幻が見えてるときは楽しかったよなと。幻が消えるガッカリが世界共通(って英語と日本語だけだけど)つーことは、幻が素敵だってのも世界共通だと、ここは無理にでも結論づけていきたい。大丈夫、たぶんそんなに無理ないきっと。

■ところでさ、車好きの人が自分の愛車を見てる視線って、どう考えても幻を見てるとしか思えなかったりしない? 僕にはガンダムみたいでやや垢抜けない・ゴツくて派手なシャインレッドの車(←言い過ぎ)に対して、どうよあのオーナーの愛しそうな目線。さらによくみると、彼の潤んだ瞳の焦点はややズレている‥‥‥というか、物体ではなく幻のほうにがっちりピントがあってるように見受けられます。僕にはわからないけど、どうもその鉄のカタマリは彼に対して強烈な幻を発生し・夢心地にさせてるみたいなんだよね。

■そして、そういう幻を見せる・夢うつつにさせるプロダクトはいいなーって思います。さっきの赤い車だってオーナーを一人素敵な気持ちにさせちゃってるし、ソニー製品も一般になんかそんな能力持ってるよね。

■幻を発生させるものって、たとえばブランドネームだったり・バックボーンとなる伝説だったり・ひょっとしたらCMのイメージかもしれない。確かにそれは幻で、物理存在としてプロダクトに搭載されてるわけじゃないし、全員が等しく同じ幻を見るわけじゃないから、そんな幻に対して「あんなんウソ」とか「踊らされてる」とか言って嫌ったり嘲笑ったりする人がいるのも分かる。分かるけどさ、幻を見るのは楽しいし、実際に幻で人が素敵な気持ちになってるわけだから、幻やるじゃんと僕は素直に賞賛していきたいんだけど、どうか? 露骨なだましはマズいだろうけど、だからって幻全部が悪いってことはないんじゃないかなって。

■そしてまた、賞賛の一方でオレも素敵な幻を発生させてーなと思ったりもします。素敵な気持ちにさせてあげるのが「おもてなし」なら、物理層で素敵なブツを作る一方、幻の層でも何か素敵にさせられたらいいなって思うんだよねー。‥‥‥ってあいかわらずのアスナロ話ですまん。もう出かけなきゃ。それじゃ、またね。


07.22.2001 (Sun):『イッツ・ノット・ノット・アンユージュアル』

■こんにちは、3連休中のspinnです。この2週間は前回書いた幻ネタを頭の中でひっぱりつつ、(*open storageにも書いたけど )D・A・ノーマンの本を読んでいます。いい感じだよ。メインはコンピュータだけど、かなり広い範囲でプロダクトデザイン用のネタが満載だ。

■そしてまた、前回の更新を読んだフクダから、認知科学系の研究者・茂木健一郎さんのクオリア宣言を紹介してもらったのが面白かったので、みんなにも紹介していきます。質感を起点にして、主観性とか気持ちとか・「今はなんで今っぽいの?」って話にまでマッシブに話を展開させるこのマニフェストを見る限り、相当いろんなヒントが埋まってそうです。大がかりな外見に疑わしく思っちゃう人もいそうな気がするけど、前回書いたみたいに「幻」を追いかけ中の僕として非常に気になるアイデアいっぱいです。熟読必至。いい感じです。

■そして今日は、そのフクダの家にみんなで集まって4人でお茶を。和室に生け花と液晶モニターが似合う部屋で、中国茶/緑茶を7〜8種類(もっと?)も楽しむことができました。煎れ方にも気をくばってもらって、僕は無手勝流(=お手伝いナシ)で味わってばっかり。なるほど、お茶っていろいろ美味しいんだね〜。「オネアミスの翼」と「東京裁判」を無音で流しながら、そしてパワーブックで受信するドイツのジャズ系ラジオを聞いたりしながら、14時半〜22時までぶっ通しで飲みっぱなし喋りっぱなし食いっぱなしでいろいろ至福。いつもの認知話やデザイン話をはじめ、いい話いっぱいできたな。すげーありがとうという気持ち>関係者(いっちーにはやや多めに感謝)。こんなのめったにないよ。いい感じです。

■そして今回はちいさな更新も。久々の来訪者リスト*ridersでは、会社の先輩・kawさんがエントリー‥‥‥ってプライベートでアクセスしてくるなんて、びっくりしましたよ先輩。ていうかCDありがとうございます先輩。アレ、いい感じです。

■金曜の夜は(休日ということで)珍しく家にいて、特に理由もなく・珍しく・なんとはなしにラジオをつけてたら、ずっと探してた曲がいきなりかかるラッキーに当たりました。それがトム・ジョーンズの『よくあることさ(It's not unusual)』(1965)。ハネるホーンセクションが調子いい、なるほど当時の大ヒット曲だったんだね。いい感じです。

■いままで何度かすれ違ってたし、最近ホンダ「オデッセイ」のCMで使ってたから、歌ってるのがトム・ジョーンズだってことまでは分かってたんだけど、ようやく曲名を知ることができました。どんなによく耳にする曲でも、名前がわかんないとCD探せないからなー。よくあることだけど、いい感じです。ていうかこの「この曲は何て名前?」っていう疑問に答えるサービスを人類が編み出せたら、どんなにか素晴らしいだろうと思った。検索エンジンのおかげで、我々人類の知識検索はだいぶいい感じだしね。

■僕の3連休はこんな感じでいい感じです。みんなはどうですか? それじゃ、またね。


08.07.2001 (Tue):『ファニチャー・アクセス』

■また久方ぶりのspinnです。行き詰まり/煮詰まり/つまり/ずっぱまり/なんて鼻ライムも飛び出すような、個人的に因果な韻を踏む毎日を僕は送ってたよ。まあよくある話です。

■で、そんな僕の低空生活に風穴をあけてくれたのが、アレっすよ、ブロードバンドってヤツなんだ〜。会社と比べるとひどく低速な自宅の56kモデムにだんだん不満が募ったので、速度20倍強で常時接続の「フレッツADSL」をNTTに大申し込み→8月頭に工事完了。‥‥‥いや〜確かに「20倍」は体感できる変化だわ。月の通信コストが合計で2000円くらい上がっちゃうけど、うん、全然OKです。

■とかって速度に対する不満から出発した今度の導入劇だから、最初は読み込みの速さに素直に感動してました。してたんだけど、そのあと本当に訪れたシアワセは、速度じゃなくてむしろ「常時接続」のほうにありました。なんかね、考え方が全然違う感じなんだよ。

■例えば、インターネットラジオなんか聴いたりするわけです。検索エンジンで適当に単語入れて探したこのFlareSoundとかで、土曜の午後だってのにディープハウスなんか鳴らしちゃってね。あれ、なんかいい風〜とかね。この曲好き〜なんていわれちゃう感じね。

■で、最初のうちはモニターに映るWWWサイトの画面眺めながら聴いてるんだ。そしてずーっと聴いてると‥‥‥やがて画面に飽きる。あたりまえだ。で、コンピュータほっといて雑誌とか見ちゃう。お茶入れる。ヘタしたらちょっと寝ちゃう。それでも常時接続なわけだから、通話料とかなーんも気にせず音楽は鳴らしっぱなしのままなんだ。

■私事ではありますが、僕はもう小学4年生の頃=20年前(うわ、ほんとだよ!)からパソコンに興味を持ち・関わりを持ってきました。(ここで遠い目になって)マシン持ってなくてもLaoXとかの電器店に行って、店頭デモ機を使って簡単なプログラム組んだりしちゃってさー‥‥‥ああ、そしてそれから幾星霜、僕はたぶん生まれて初めて、その時コンピュータを「家具」として扱ったんだよね。

■有り難いお説教を聴くようにして20年間モニターを注視し・コンピュータに意識を集中しながらコンピュータを扱ってきました。だけど、土曜の午後にインターネットラジオを聴いてたとき、僕の中からコンピュータに対する意識は消えていた。サティの「家具としての音楽」じゃないけど、存在を主張しないかたちで、初めてコンピューターを使ったなって思ったんだよね。

■もちろん、こうして僕がやってるみたいにモニターに正面から向かって、ガチガチに注視しながら文章書いたりとかそういう使い方がなくなっちゃうわけじゃない。でも、ネットにつながった状態で・そっと背景に溶け込みながら、気持ちに気持ちいい出力を続けるコンピュータもいいもんだなって再確認したよ。

■コンピュータに関するイメージって、家中のオートメーションを1台でコントロールできちゃうみたいな、例えると大統領かロックスターみたいなものだったりするじゃない? もちろんそれもいいんだけど、家具みたいに薄い存在で部屋の中にバラバラ散在し・それぞれの機能をそれぞれ寡黙にこなす、そういういわば「DJ」とか「VJ」とか「照明さん」みたいなコンピューターも悪くないと思うんだけど、どうか。

■なんか、何年かして読んだら相当つまんなく見える話をしてる気がしてきました。というか逆に、この話がつまんなく見える未来になって欲しいと先生は思います。そんなところで、それじゃ、またね。


08.14.2001 (Tue):『バイパス』

■こんにちは。一週間の夏休み突入中のspinnですか? はい、そうですよ〜。ここ数年を思い返すとどの夏休みも出勤しがちだったのですが、今年の僕は「休日にちゃんとリフレッシュする良い子」を目指し、全身全霊・フルパワーで休憩中。それが私の、21世紀の挑戦です。

■さて、そんな休日のトップバッターを務めたのは、おなじみの同人誌即売イベント・コミックマーケットでした。また今回もスタッフ参加とかいって、暑さと湿気のなか列を整理したり他。いつも思うけど、どんなに弱い表現力や気持ちでも存在できちゃうこの場所は、まるで出力したい気持ちの熱帯雨林みたいだなって。最近は本を買いたくてしょうがないオスのオタクが猛ダッシュしたり座り込んだりするので、正直不快なことも多いけど、やっぱいい場所だなって思ったよ。

■けれど、そうはいっても3日も会場にいるとさすがにグッタリしてきます。まっすぐ帰ることすら面倒な、帰宅に集中できないレベルのグッタリ加減。そこで僕は、電車を一切使わない・以前から考えていた想像上のバイパスルートを実際に試すことにしました。

■まずは水上バスに乗り、国際展示場から日ノ出桟橋(≒JR浜松町駅)を目指します。暮れゆくビルに明かりが灯るのを眺めながら、東京湾をクルーズ。潮風を頬にうけ・裸足で駆けてく(後半ウソ)‥‥‥あー気持ちいいわー。肌レベルから少しリセットされて、20分ほどで終点。誇張じゃなく、生気が戻ってくる感じ。

■桟橋から5分程歩いて浜松町駅についたら、こんどは東京モノレールで浜松町から羽田空港まで。モノレールから見える、すっかり暮れた夜景にうかぶこの地域のビルには、どこか高度成長期の匂いがあるんだよね。モノレールの開業は1964年、35年前のハイテク。浜松町の駅ビルでもある世界貿易センタービルを離れ、21分後の未来には羽田空港ターミナル・ビッグバードに到着。

■モノレールの駅を降りたら、あてもなく出発ロビーをうろうろと。航空会社のかっちりした意匠・広い空間・かすかなざわめき‥‥‥と、さっきまでのコミケがウソのような・正反対の雰囲気に和むぜ。ほら、マニアさんのざわめき・騒ぎ声って周波数成分が他と違うような・ちょっと気に障るとこあるじゃない? それを3日に渡ってきいてきた耳に、空港の静かでクリアな空間が何よりのごちそうだ。コミケを悪くいうつもりはないけど、ずっとだとね、やっぱり疲れちゃう。

■で、そんな空間をひととおり堪能したら、当然6Fの展望デッキにいくぜ。夜の空港で佇む、つややか過ぎるぜジェット旅客機。エンジンの轟音。離陸する翼端灯。ライトに照らされた滑走路。あーベタだけど好きだわー(←ベタ過ぎ)。小一時間ほど、夜風をあびながらチルアウト。

■で、(空港ビルにありがちな)和風レストランで適当に食事したあとは、京急・羽田空港連絡バスで新横浜までの45分。空港を出て高速へアプローチする頃にはすっかりおネムで夢の中へ‥‥‥&到着した新横浜駅からは、横浜市営バスにて自宅まで。そんな電車レスで・ちっとも速くないバイパスルート。

■遠回りができるのは、その日に・また翌日に余裕があるからだよね。忙しく働いてる人には申し訳なく思いつつ、わざと遠回りするバイパスルートには「旅行」の気持ち良さのエッセンスが詰まってる気がしたよ。目的地ではなく、過程にこそ旅はあるっぽい、なんてね。それじゃまた。


08.19.2001 (Sun):『ワールド・ダイレクト』

■こんにちは。一週間の夏休みグランプリもコーダに飛んで、まったりとファイナルラップの最終コーナーを立ち上がるspinnです。休めなかったみんなには悪いんだけど、コミケ行ったり・冷蔵庫買ったり・レコード棚しつらえたり・本を読んだり・親しい人の近日結婚が発覚したり・実家帰ったりなどいろいろあって。うん、わりといいグランプリだったな。

■で、そんな日々にかがやく絵日記レベルの思い出の一つが、東京証券取引所の社会科見学でした。日本や世界の株を扱まくる・いわば日本経済の最前線。ガゴゴーン(効果音)。平日の昼間しか一般の見学ができないから、こんな休みでもないと行けないんだよね〜。

■何が見たかったって、例のシリンダー状にガラスで囲まれたマーケットセンターであり、そのジェニー・ホルツァーよろしく株価情報が流れるLED電光掲示板。そうさ、僕好みのピカピカ光るインフォメーションなのよさ。そして金曜日の昼下がり、営団地下鉄の茅場町駅で降りたら歩いて5分、僕は兜町の一角にあるそのビルを訪ねました。

■厳重な持ち物チェックのあと見学者証をもらい、エレベーターで2階まであがります。暗い回廊をすすみ、人影まばらな白くてキレいな空間を見おろすと、ああ、直径17mのシリンダーに沿った電光掲示の上を、最新の株価が流れていくよ。壁面には巨大なプロジェクションモニターがそびえ、マーケットセンターの机の上には数え切れない程の液晶ディスプレイがひしめく。空港の出発ロビーをはじめとする大画面での情報表示マニアにはたまらない、ここは天国?それともラスベガス?状態ですよ奥さん! ううーん‥‥‥格好いいわ‥‥‥。

■この東証の電光掲示で格別ぐっとくるのって、何といってもその値のマジさ加減・リアルタイムさ加減なんだよね。ザラバ方式(←覚えたてなので使ってみたかった)で取引される、今まさに変化している値・そして企業や投資家をはじめたくさんの人が本気で参照してる値が、計測され・表示される。そういう「事象と直結した値」を大量に浴びるのって、まるで世界の動きをライブに感じちゃうような体験だった。

■しかもさー、見学者用の廊下には、短波ラジオの株価速報が延々流れ続けてるんだよ! 例えるなら「終わらない競馬中継」とでもいうような、機械的に株価を読み上げつづける音声が、控え目なボリュームでさりげなく廊下に響く。これもまた、世界と時空と事象との直結を感じる経験だ。聞いて・見てみよう。楽しい〜。

■ご存知の方も多いと思うのでぶっちゃけると、これって地球や人体などの動きを感じるプロジェクト・センソリウムと凄く似てる仕組みだと思う。地球の自転スピード。全く同じ時間に、地球上には昼の場所と夜の場所・冬の場所と夏の場所があること。日頃感じることのなかった世界の動きや変化や違いを(コンピューターかなんか使っちゃって)コンバートして、感じてなかった感覚・見えてなかったイメージに到達するのは、かなり普通におもしれーと思うんだけど、どうか。

■さて、今回はひさびさに登録をいただいた来訪者リスト・*riders の更新いってみましょう。#60にwolfmanさんがエントリー。たぶん初めましての方‥‥‥ですよね? これからもよろしくお願いします。

■今回の事象との直結話って、じつは掲示板・*open storage に書いた話を自分で再利用したもの。書き込んだあとで物足りなくて・もうちょっと丁寧に書いてみたかったとかそういう事情です。長めの更新間隔のあいだにも、掲示板のほうにはマメに書き込んだりすると思うので、そっちもよろしく。それじゃ、またね。


09.03.2001 (Mon):『シンキング・タンク』

■こんにちは。2週間ぶりのspinnですがご機嫌いかがか? 僕はといえば1週間の休みで失った仕事ペースを取り戻しながら、先週の土曜日・会社の先輩に連れられて神奈川県立近代美術館でやってた「バックミンスター・フラー展」を見にいってきました‥‥‥のでその話をしていくのが今回。実は会期が昨日(9/2)までだから、やや遅きに失してるんですけどね。すまん、許して。

■展覧会の内容はこことかみてもらうとして、いやー面白かった。最小の資材(またはコスト)で最大の容積を生み出すジオデジックドーム。メルカトル図法を離れた世界の認識をうながす独自の世界地図。「風を味方にする」流線型のボディを持ち、後輪操舵で小回りも効いたダイマクション・カー。20世紀アメリカ生まれのイカレ親父が考えたオモロすぎの新アイデアの数々を、心ゆくまで堪能しました。

■地球46億年、世界と歴史の間ではこれまでいろんな人がいろんな新アイデアを生み出してきたわけですが、その中でもフラーの新アイデアで僕が素敵だなーと思ったのは、そういったアイデアが綿密な理屈の積み重ねというか・かなり論理的に導き出されてる感じがするとこなんだよね。戦後の住宅事情を改善したい→資材が高い→人件費も時間もかかる→標準化でコストダウンできる→ていうか少ない資材で家を建てるべき→少ない資材で最大の容積を得るには?→ダイマクション・ハウス、みたいなね。

■この点が、よくわからないモノによくわからないタイトル(『都市の心象(リゾーム・III)』とかな!)がついてるタイプの新アイデアと違う部分だと思うんだ。フラーの場合、理屈の各ステップの意味が明確で・そのシンプルな積み重ねからアイデアが生まれてる気がするんだよね。なんか、数学でキレイな証明を読むときに近い感じだった。

■強烈な新アイデアが生まれるときって、なんだか理屈を越えた、異次元から来た奇跡の閃きが必要だったりしそうじゃない? 確かにそういう面もあるんだろうけど、でもフラーのアイデアを見る限り、僕には理屈からも素敵アイデアは導き出せる気がしたんだ。

■もちろん日頃僕がはまるように、理屈をこねまわしてると五里霧中の袋小路に迷い込んだり・逆ギレに近い混沌としたアイデアに到達しちゃったりします。彼が凄くてミラクルで是非見習っていきたいのは、「こうだったらいいな」とかって希望的観測とか、借り物のアイデアを確認しないで使うとか、その手の不純な考えに邪魔されてなさそうな所なんだよね。

■生涯一貫して100%ピュアな思考をキープし続け、ちゃんと素敵新アイデアに到達してる、そのある意味キチ○イじみた不屈の思考戦車ぶりに驚かされるよ。完成直後のドームの天井からロープでぶらさがって遊んでるポートレートがあるんだけどさ、そこからも彼の無敵のピュアさ加減が伝わってくる気がするんだけど、どうか。

■さて今回の更新はというと、来訪者リストこと*ridersの#61にタバタシンタロウさんがエントリー‥‥‥ってうわ〜久しぶり〜。彼が「Answer Me!」、僕が「pickles spinn」ってWWWページをやってた頃以来だから、5年ぶりとかですよね。お元気でした?

*open storageで紹介したsplash!を運営してる彼とも5年ぶりでメールとかやりしたり、今度は世界機械のナルキさんとか・あのLOVE FONTSの彼と今度会うことになりそうだし、96年学生WWWページつながりみたいな、何だか今はそういう時期なのかも。

■そういう9月が僕を撃ちます。みんなはどうですか? それでは、またね。


09.12.2001 (Wed):『ストレス・アウト』

■これが本当のことだなんてね。

■世界も時間も僕もみんなも当事者も被害者も、そしてひょっとしたら「犯人」もそう思ってるんじゃないかなって。それこそアメリカが全力をかけて描いてきたイメージが、紛れもない事実としてTVから流れる。その「紛れもない事実としてTVから流れる」部分さえ、何度も何度も繰り返しイメージされ・描かれてきた筈なのに。事実の重さが、やっぱり現実感の無さとして感じられちゃうんだよねー。

■こうして事実は、確実に世界と時間と僕とみんなと当事者と被害者と、そしてひょっとしたら「犯人」にも大型で強い勢力のストレスを加えるんだ。そして加えられたストレスは、A:逆ギレに近い不謹慎なジョーク、B:深い理由のないシンプルな恐怖、C:八つ当たりめいた復讐心、D:透きとおるような無関心などに変換・増幅されて分岐する。僕の場合はAに分岐した。あのとき委員長系メガネっ娘がいたら、「好感度」が確実に下がってたよ。

■今こうして文章を書いていても、「真面目にならなきゃ」「重く受けとめなきゃ」って強迫観念が僕を襲いやがります。これもまたストレスのしわざなんだろうなって思うし、なんか気持ち悪いし否定したいし何だかたまらんです。

■つけっぱなしのCNNでは、事件発生以来ずーーーっと中継が続いていて、同じ人が同じ場所に立ち、同じ背景の前でしゃべり続けています。そしてコメントされる百万のネガティブ形容詞。疲れるだろうな。憶測が憶測としてられちゃったりとか、事実が生んだ避けようのないストレスと、その結果を感じます。

■今回みたいな強力なストレスへの対処として、僕は素直にストレスをストレスとして受けとめることにしました。風邪をひいたときだって、「風邪の自分」を否定してもしょうがないわけだしね。そして一拍休符をいれて、少なくとも・どんなことがあっても、自分とその周りだけは、ストレスを変換・増幅してまき散らさないようにしたいなって。

■‥‥‥なんて書いてみて気がつくのは、あーなんかそれって別に当たり前のことじゃないかと。困ったね。普通の当たり前が見えなくなっちゃうのも、事実が生んだストレスのしわざ。ここは音楽でも聴いて、平安な時代を取り戻していきたい。

■台風の後の夜、窓の外では虫がないています。東の空には再び登場のオリオン座。まったく、やつらストレス・フリーだぜ。それじゃ、またね。