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虜屋視聴記 (aka 鳥小屋視聴記 ) - ヘッドフォン - 開放型


開放型


Sennheiser/HD590
※120Ω・97dB/mW・開放型・ミニプラグ+ミニ→標準変換(寸胴式)
装着性:★★★★☆
遮音性:☆☆☆☆☆
音楽性:★★★★☆
推奨度:★★★☆☆ …装着性を求めるならこれ以外にはなし。もう少し大人しければベストだけど。


 遮音性がほぼ皆無のため、訳知らぬ人が周囲にいる環境での使用はお勧めできない。

 ヘッドバンドの調整幅は左右35mm程度だが、固定側の長さが短くアールが緩いため(私の場合は)限度まで伸ばしてようやく実用となる状態だった。
 #HD590のレビューに関しては「みんな同じコメントを書いている」所からすると、この「めい一杯伸ばした」状態が実 はもっともフレキシブル(無調整適応させやすい位置)なのかもしれません…

 パッドの開口径は幅45mm高さ65mm厚み25mm程度の上半円+V字組型。
 眼鏡を掛けたままでの装着にもほぼ問題はなく、若干フレームとイヤパッドの間でのタッチノイズが気になる程度。
 ヘッドフォン装着with眼鏡の組み合わせ環境では、これより良いものはなかなか見つからないと思われる。
 パッド開口径が大きい分側圧をあまり感じず、耳に触れる部分も少ないため、装着性は(HD600と比較しても)非常に良 い。
 パッド表地は黒色化繊布のため埃が目立つ。掃除用にエチケットブラシを要するかもしれない。

 音質傾向は明らかな高音過多、ある程度の低音過多である。
 HD600との比較では、500Hz以下で約2dB&3.5kHz以上で4dB平均ほど持ち上がった特性になっている。
 この独特なトーンコンパスは利用用途をある程度狭くしている。具体的には
  ・「まともなアンプを乗せられない携帯機器を利用し通常音量で聴く」
  ・「まともなアンプが乗った機器を利用し小音量で聴く」
が適切であり、これらの条件においては不足しがちな高音・低音域をうまく追補する方向に働き、適切なトーンコンパスを再現する。
 また逆説的に言えることとして、「まともなアンプの乗った機器を利用しての大音量再生には全然全く向 かない」ことも真であり、Bruckner1曲どころかポップス数分の演奏でさえも耐え難き状態に陥る可能性がある。

 MDプレーヤ(Panasonic/SJ-MJ50)に接続した場合はATRACフォーマット特有の選択性ひずみ感が素直に再現されており、聴いていて 不安になるようなアンバランス感や不自然さは特に感じられなかった。おそらく類似の傾向を持つであろうシリコンプレーヤでも同様の傾向を得られるであろ う。

 携帯機器を使用し大音量で聴く場合にはギリギリのライン。
 より小音量で聴く場合はさらにインピーダンスの高い(or能率の低い)ヘッドフォンも選択可能であるが、このあたりは使う人の事情によるだろう。
 一般的な家庭(部屋)において使用する限り、(大編成クラシックを聴こうとする場合を除けば)音量不足や能率不足などの問題は発生しない。

 ヘッドフォン側に3極ミニミニプラグがあり、これに接続するミニミニプラグ-ミニプラグの3極ケーブルが標準添付される。
 当然接触不良は起こりうる(というか、私が購入したHD590は半 年ほどでこの症状に悩まされ始めている)ため、高頻度挿抜やコネクタ付近へのインパクトは絶対厳禁。ま た、ヘッドフォン側ジャックを清掃する何らかの手段を用意しないとならない(ミニプラグではないので、綿棒+アルコールでの簡易処置ができず面倒)。
 容易に挿抜可能な(そして構造的に脆弱な)ミニミニプラグを採用した事自体は「コネクタ根本での断線や接触不良が頻繁に起こる」ヘッドフォンの問題を回 避する上手い手法に見えるが、ヘッドフォン本体側のジャックがいかれてしまっては元も子もない。コストはかかるが、
防水コネクタの様な構造を作りつけた方が根本的対策に なって良いような…。
 懸念されるセパレーションについてはほぼ問題ないレベルであり、一般的な4線3極式イヤフォンなどと比べても特に気になる点はなかっ た。
 ただし、構造上の問題から4線4極式プラグへの接続は大変困難(ヘッドフォン側プラグを改造するか、直出し仕様に改造するしかない)なのは致し方ない所 か。
 この仕様のため、無改造でのフルブリッジ方式ドライブは出来ない。…それをする人が居るかどうかは別として。

 ユニット背面側はユニット直背部分がパンチングメタルで、下部と内部フレームが成形プラスチックという構成。そのためか音抜けは良く、ダイナミック型に ありがちなこもり感が非常に少ない
 #開放型でも背面が成形プラスチックの場合、「厚みがあるためにこもり感を感じる」ことがありますので…。

 同社製ヘッドフォンにおける音質的評価はHD600/580の方が上だが、装着性がべらぼうに良い点を含めて考えればHD590はほぼ同等の魅力を持っ ており、特にヘッドフォンの装着性について悩み続けてきた人には、案外こちらの方がお勧めかもといえる(もう少し緩い 音が好きな人にはHD570/HD575がお勧めかもしれない)。
 また、ヘッドフォンアンプを別途用意し使用することに抵抗を感じる人(=携帯機器などへの直結使用しかしない人)にとっても、それを必要としない本機は まさに的を射る選択と思われる。

 想定されるユーザー:
 -別途ヘッドフォンアンプを用意したくない(あるいは何らかの事情により用意できない)環境の人。
 -ヘッドフォンアンプがらみの泥沼にはまりたくない人(笑)。
 -電子音響EQはキライだが、自然なMID落ち特性は得たいという人。
 -携帯機器での利用頻度が多く、それらに合わせたヘッドフォンを必要とする人。
 -小音量でのリスニングが中心であり、過去に他のヘッドフォンを聴いて小音量時の痩せた音色に失望したことのある人。
 -いわゆる「大人しいヘッドフォン」に物足りなさを感じている人。
 -長時間ヘッドフォンをかけて聴かねばならない理由がある人。


→価格:25,000円税込み(ヘッドフォンショップAIRY・輸入品・保証1年付き(HD580以上・同店独自保証))、交換用イヤパッド:3,500円(同店利用者限定価格)。

 国内販売元(ゼネラル通商)の値付けは「保証を付けねばならない」正規代理店の立場からすれば妥当な価格かも。壊れやす そうなところが盛りだくさんだから、たぶんその辺のコストが上乗せされていると思われます。…のハズが、AIRYでは価格据え置きで1年間の自主保証を開 始。


 【参考までに…】
 HD590のオーバーブライトな音質をおとなしくさせるためのイコライザーファイル。
 WINAMP向け、HD590+ONKYO/SE-U55Xの組み合わせ環境専用。
 【ThisMakesHD590Gentle.EQF
 HeadRoom Corporationの平均化グラフを参照にしているので、ある種のフィルタが掛かっています。

date:2002/12/28 +2003/01/14 +2003/01/26 +2003/03/09(書換) +2003/04/05 +2003/05/04 +2003/06/01
- Sennheiser HD590 -


STAX/Nova Classic System I
※145KΩ・100dB/100Vr.m.s・開放型・イヤスピーカ「Lambda Nova Classic」+汎用ドライバ「SRM-3」・RCAピンジャック
(現行ClassicIIとは当然別物)
装着性:★★★☆☆
遮音性:☆☆☆☆☆
音楽性:★★★★☆
推奨度:★★★★☆ …掛け値なしで、ふつーに良い。あとはパッドの質感とシェルを何とか…

 遮音性はほぼ皆無、Sennheiser/HD590と同じく音漏れする。

 イヤスピーカは通常のイヤフォン・ヘッドフォンと異なる駆動方式をとるため、通常のヘッドフォンアンプやヘッドフォンケーブル、ヘッドフォン本体を流用 することが出来ず、専用設計のイヤスピーカ用アンプとイヤスピーカを組み合わせて使用する構成となる。
 自作アンプを別とすればイヤスピーカ用アンプもイヤスピーカもSTAX専用設計であり(静電方式に関しては、ダイナミッ ク方式と異なり標準化された規格が存在しない)、組み合わせによる変化を楽しむほどの選択肢がない。
 #悩まずにセットを購入できるというメリットがあるため、一概に悪いとは言えない。

 音質傾向はこれといって特徴的なことが無く、一聴して惚れ込んだりするような強烈なインパクトが全く無い。聞いていても楽しい音ではな いし、特に何かに特化した音を聞かせるわけでもない。誰にでもすぐ解るような「突出する何か」を何ら持っていない。
 おそらく「所有する喜び」という点では、他の同額ヘッドフォンに対しかなり劣ると思われる。
 また、今時のヘッドフォンと比べてレンジ感が狭く感じる点も気に掛かる。特にドンシャリなヘッドフォンに慣れた人にとっては違和感を感じるかもしれな い。

 その代わり、長時間聞き込んでも音質に対する不満点や心配になる点、破綻感、アンバランス感などはほとんど感じられず、「所有による後悔」を感じること も無いはず。
 たいていのヘッドフォンが、わずかではあっても音質的不満を持ちやすいところと比べればこれは特筆すべき点と言っても良く、所有の価値は十分にある。
 簡単に言えば、「長時間聞いていても疲れない音」であり、神経質になりがちな人でも安心して聞ける、精神衛生上良さげな音色を持つ。

 イヤスピーカ側の機械ノイズが若干多い点は気になる。顔を動かすと、アーム回りなどがプラスチック的歪み音を奏でる点が気になる。他の ヘッドフォンと比べてみたが、他のヘッドフォンと比べても若干耳に付きやすい音がでている。また、背面シェルがプラスチック網のため、 (Sennheiser/HD600と比較すると)プラシェル特有の反射音がある程度明瞭に聞こえる。このへたれシェルが原因で、「コンデンサ式発音体」 がもつ多くの美点をぶちこわしている感じがした。
 装着感は可もなく不可も無く…という感じ。合成皮革パッドのさわり心地が若干悪いが、パッド自体の厚みは十分で、天側のヘッドバンド も具合良く調整可能であり、長時間の試聴にも問題は起きないはず。

 まずがっかりしない、でもなかなか感動出来ない…なかなか他人様にお勧めするには勇気が要るシステム。
 なかなか良さを説明するのも理解してもらうのも大変かもしれない。
 個人的にはすごく気に入っているだけに、何だかすごくもどかしい…
 「がっかりすることが何よりもイヤ」という人にこそお勧めかもしれない。

 ちなみに、これをPCに接続する場合は「それなりの覚悟」が必要。
 ただし、恣意的に嫌みな音を吐いたりすることはないので、各機器の音質傾向さえつかめば安心して聴けるようになるかと。
 たとえばPC用DAC(
ONKYO/SE-U55X) を通してMP3やOggVorbisをソースに聴いていると「こういう鳴り方をするんだ」とか「こんな音がきちんと残ってたんだ」など、いろいろと発見で きるので、結構やみつきになったりする。
 ※残念ながら、「トゲを抜いたような」圧縮音楽というソース自体は、本機の美点を発揮させる為に適した素材ではない。


 想定されるユーザー:
 -とりあえず「絶対に」ハズレを引きたくないという人。
 -メーカー独自の音づくりに悩まされ続けている人。
 -ヘッドフォンアンプやケーブルの違いによる音色差に取り憑かれて困っている人。
 -真っ当なコンデンサ方式ヘッドフォンを欲する人。
 -様々なことに対し、過分に神経質になって疲れてしまうことがある人。
 …BasicII+高透湿パッドという裏技もアリか?できればClassicII以上をお勧めする。
 

→価格:不明(中古入手のため)。これから購入するなら新版(ClassicII)を推奨。

date:2003/01/26 +2003/02/21 +2003/03/09 +2003/04/05
- STAX Nova Classic System I -


Sennheiser/HD600
※300Ω・97dB/mW・開放型・ミニプラグ+ミニ→標準変換(寸胴式)
装着性:★★★☆☆
遮音性:☆☆☆☆☆
音楽性:★★★★☆
推奨度:★★★☆☆ …販売価格が仮に2万5千円近傍なら★4つ。ゆえにHD580でもよければお勧め。


 ※かなりの部分をSennheiser/HD590と比較しつつ書いています。

 遮音性は当然のごとくほぼ皆無、Sennheiser/HD590よりもさらに激しく音漏れする。

 パッケージは最外面が薄段ボール箱、中には有名な蝶番付きのストレージボックスが入っている。
 ストレージボックスの中はGRADO/SR60などよりもまともなスポンジケースとなっていて、非使用時には(開梱時と同様に)収容できるようになって いる。
 ただしミニ→標準変換プラグはあらかじめミニプラグケーブルに取り付けられたままとなっていて、専用のスペースは確保されていない。収納時にも変換プラ グの暴れを防止するために、結局ミニプラグケーブルに取り付けねばならず、何のための変換プラグなのかがわかりづらくなってしまっている点は残念 (HD590の飾り箱にすら変換プラグを納める為の場所があるというのに…)。

 HD590で気になっていたヘッドバンドの調整幅については問題なく、最大位置までのばさずともフィッティングできた。
 ただし、ユニット背面がほぼ全面パンチングメタルシェルであり、これはHD590と比べて「開口部自体が大きい」「より肉薄な板をぎ りぎりまでパンチングしている」「メタル形状がより扁平に近い」といった感じであり、とんでもなく心許ない。少なくともユニット背面に手のひらを当てつつ ヘッドバンドを指で引き寄せて縮めていくような(どのヘッドフォンでも出来そうな)事が怖くて出来ない。もし多少なりとも荒く扱う可能性 がある人なら、間違いなくHD580(プラシェル)の方がおすすめ。
 #プラシェル特有の反射音を嫌う人は、やはりHD600を選択せねばならないが。
 もっとも、いくらメタルシェルとはいえ所詮はダイナミック型であり、(ノイズに近い)微細な表現、特に打 楽器の初期音リアル楽器が持つ初期発音(アタック音など)を表現するのはめっぽう苦手…という特性 はそのまま。HD600はその辺のごまかし方が極めて上手い、という感じがする。
 #これをごまかしすぎるとHD590の様な特異な代物ができあがるのだろうか。

 取り外し可能なヘッドフォン本体側のコネクタは端子間隔4mm弱、長さも4mmと、何も知らずに通販購入をしようものなら面食らう可能 性があるほどに小さい。感覚的には「マザーボードについているヘッダピンの先頭に金メッキをしたような物」であり、いかにも挿抜負けしそうなメス側コネク タがついていそうだと勘ぐりたくなる。おそらくは安全上の問題から抜けやすいプラグを使っているので あろうが、何もここまで小さくしなくても…という感じを受ける。
 店頭デモ用の一部機種では扱いのラフさが災いして、カプセル(メス)側接点が逝かれているものも散見されるため、カプセル部付近への負荷掛けは厳禁。
 また、カプセル(メス)側接点については「単なる接点不良であっても適切な清掃方法が無い」という問題もある。
 (注:安全面を本当に考えるならばケーブル中間に易断部を設けるべきなので、正しく はメンテ目的だろう)

 掛け心地に関しては、HD590と比べて「平面的な威圧感」を受ける印象がある。
 単に「側圧が強いから」というわけではなく、頬や首筋などに圧迫感を感じ、長時間付けているとかなり疲れるのだ(HD590のパッドは下部がV字にすぼ まっており、そのような不快感はない)。
 耳たぶに干渉しない程度までヘッドバンドを短くして、ユニットが若干後方に位置するよう装着する事で、このような干渉はおおよそ解消されるが、それでも やはり付け心地に関しては「(HD590と比べるならば)明らかに劣る」と言わざるを得ない。
 ただし、眼鏡使用時の掛け心地に関しては特に装着感を損ねるような事はなく、HD590と同様に眼鏡をかけながらでも安心して使える。

 音質的な点を言えば、HD590とはうって変わって穏やかな表現。
 ユニットの性質にもよるだろうが、大胆に背面解放している点も大きく関わっていると思われる。
 たとえば英語アナウンスを聴いてみると、HD600は子音の強調などもなく比較的素直に聞こえる。HD590の場合は子音強調が激しく、たとえて言うな らば「語学学習に向いている」といった感じのトーンになる。 

 開放型の宿命として、ユニット背面側に障害物(手など)があると、障害物に反射した音まで聞こえてこもった音となる問題があるが、 HD600はこの反射音に対する音の曇り具合が比較的素直。HD590で同じ事を行うと、若干奇特な反射音が混ざり不快な気分にさせられたのと比べれば、 かなり応答状態は良い。

 携帯機器などへ接続して音量チェックをしたが、HD590と比べて「確かにちょっとだけ音量は小さいな」と感じる程度であり、フルボリウム時にはそれな りの音量を確保できた。
 (注:MDプレーヤ/Panasonic/SJ-MJ50利用時には、フルボリウムでようやく実用十二分の音量を確保で きたのみであった。従って、平均録音レベルの低いソースを再生した場合には音量不足に陥る可能性が高い)
 ただし、小音量時にはやはり物足りなさを感じる。比較的大音量での聴取時にトーンバランスが適切となるよう作られているらしく、小音量で 聴いた場合の質感に関してはHD590と大差ない性能にとどまってしまう。

 なお、リード線両出し&取り外し可能との点を生かしてデュアルモノ駆動が可能(HD580/HD600共通)。安価に始めたい人は、純正コードを1本買 い足して、片方をLチャネル専用、もう片方をRチャネル専用…として使えばOK。
 デュアルモノ駆動用アンプには同質の別構成アンプが1組2台必要となるが、左右ボリウムを別々に調整する事になってもかまわないならばCEC/HD-51(ヘッドフォンアンプ2ch×2回路)を1台のみ使用する形で簡易的なデュアルモノ駆動が 可能(同時に操作するなら前段にプリアンプかアッテネータを別途要する)。ちなみに、CEC/HD-51HD580/HD600・純正ケーブルの3点を同時発注するならばheadphone shop AIRYが適切(純正ケーブルは取 扱店が少ない扱い価格が高い店が多い)。もちろん、高価なサードパーティー製ケーブルを用いるならば話は別だが…。

 少なくとも、携帯機器への直結のみを目的としてHD600を入手しようと考える事はおすすめできない。
 本機のポテンシャルを最大限に引き出すならば、「必ず」真っ当なドライブアンプが必要であり、プアなアンプで駆動した場合の音質に関しては 「STAX/ClassicI(旧版)よりも劣る」というのが正直な感想。
 ドライブアンプを用意しないならば、おそらくHD580でも事足りるだろうし、むしろ扱い易いパッケージであり適切である。
 また、大音量再生を全く考慮しないならば、HD600を選択肢に加える事自体がそもそも間違いかもしれない。
 小音量再生のみを行うならば、HD590かHD570の方がより聴き心地の良い環境を提供できる。

 想定されるユーザー:
 -小音量再生に全然全く魅力を感じていない人。
 -ヘッドフォン専用アンプを持っている(or至近購入予定である)人。
 -コンデンサ方式特有の力感のない音色に呆然としてしまった人。
 -コンデンサ式ヘッドフォンに必要な専用アンプの存在にうんざりしている人に、代用品として。
 -開放型ヘッドフォンのリファレンスを必要とする人(…にはHD580が向いている気もするけど)。
 -ドイツ製品崇拝者。
 …やっぱり、HD590シェルを使用しHD600とHD590の中間音質を実現させた「HD620」あたりを出してほしいところ。
で も、HD600とHD580って、応答具合だけを見ていると全然違う代物にしか見えないのは気のせい?

→価格:37,500円税込み(ヘッドフォンショップAIRY・輸入品・保証1年付き(HD580以上・同店独自保証))、交換用イヤパッド:3,500円(同店利用者限 定価格)、交換用純正ケーブル:3,000円(同店利用者限定価格)
→価格:32,800円税別(K's LAB・輸入品・初期不良対応(保証1週間)
 国内販売元(ゼネラル通商)の値付けは「保証を付けねばならない」正規代理店の立場からすれば妥当な価格かも。壊れやす そうなところが盛りだくさんだから、たぶんその辺のコストが上乗せされていると思われます。…のハズが、AIRYでは価格据え置きで1年間の自主保証を開 始。

date:2003/03/16 +2003/04/05 +2003/05/10 +2003/06/01
- Sennheiser HD600 -


Grado/SR-60
※30Ω・97dB/mW・開放型・ミニプラグ+ミニ→標準変換
装着性:☆☆☆☆☆ 【←2003/05/20:1=>0】
遮音性:★☆☆☆☆ 【←2003/05/20:0=>1】
音楽性:★★★☆☆
推奨度:☆☆☆☆☆ 【←2003/07/13:2=>0;代わりにShure/E2を購入することを推奨】 … アウターパッドの自作が必要です、たぶん。


 いわゆる耳乗せ型パッドを採用、恐ろしく座りが悪い。
 眼鏡併用時の装着感はかなり悪く、おそらくAudioTechnica/ATH-T2に迫る勢い。
 両耳同時にきちんと装着するのは難しいので、まずはアームをのばしきってから、片耳モニターの要領で一番座りの良さそうなところを探 し、位置が決まったところでアームを縮めていく…という手順を踏むと良い。
 当然こんな仕様なので、さっと付けてさっと外して…というスタイルはまず無理。


 パッドは装着感が悪くなったと評判の(苦笑)ドーナツ型。従来品のような古いヘッドセットばりのパッドではなくなってい て、パッドが発音をじゃまする事はなくなっている。

 ソースに対する忠実性を詰めた様子はそれほど無く、むしろ「魅せる」傾向に傾いた表現という感じ。
 聴いていてすぐに思い浮かんだのは「映像DVDソースにマッチするかもしれない」ということ。解像度が低い訳ではないので、映像DVD 収録の音声では圧縮具合が気になり若干不満もあるかもしれないが、少なくとも今まで聴いたヘッドフォンの中では一番生き生きとした表現だと感じた。
 ただし、映像+音声ソースの場合は圧縮音楽の醜悪点をうまく映像側が隠してくれるので問題はないが、圧縮音楽そのものとの相性はそれ ほど良くない(悪い点を若干さらけ出すきらいがある)。


 コードは十分に太く、ラフな扱いにも耐える仕様。またプラグ側も断線しがたい構造(一点に力が集中しがたい)であり、 ケーブル自体を持って挿抜しなければかなり長い間生きそう。
 シェルやヘッドバンドの構造自体も単純であり、発音体自体がくるくると360度回せる仕様のため、フラットな状態にして収納する事ができる(ヘッドバン ド自体の破損やねじれが起きにくい)。
 薄い箱(内寸で160x220x40mm程度以上)に収納して「移動時用ヘッドフォン」として使うことができるという点は他のヘッドフォン (2004/10/19:
ATH-ES5@Audio-technicaの様な例外も存在するが)には無い 魅力 であり、インナーイヤフォンでは満足できない人には良い選択肢となりそう。

 ちなみに、装着感の悪さを嫌ってパッドの改造やアウターパッドの制作を行う人もいる。HeadWize - Project The Collected Grado Headphone Mods by Skippy et al.では様々な提案があ り、GRADOヘッドホン「SR-60」@ヘッドフォンナビでは簡易的かつ適切な 手法を提案している。

 想定されるユーザー:
 -挿耳型イヤフォンは嫌いだが、かさばるのもイヤという人。
 -「音が良ければすべて良し、耳の形はそのうちヘッドフォンに慣れる」が持論の人。
 -映像併用ソースにマッチしそうなヘッドフォンを探している人。
 …Grado社製ヘッドフォンを購入する意志があるならば3桁台を購入するべき。


→価格:11,500円税込み(ヘッドフォンショップAIRY)、GRADO汎用交換用イヤパッド:2,700円(同店価格)、SR60専用交換用イヤパッド:1,800円(同店価格)

date:2003/04/05 +2003/05/10
- Grado SR60 -


audio-technica/ATH-AD300
※32Ω・96dB/mW・開放型・ミニプラグ+ミニ→標準変換
装着性:★★★☆☆ 【携帯機器向けの耳乗せ型に慣れている人にとっては★4つかと】
遮音性:★☆☆☆☆
音楽性:☆☆☆☆☆ 【←2004/03/03:1=>0】
推奨度:★☆☆☆☆ 【装着感が良ければそれで良い、という人には素直にオススメ可能。】 【←2004/03/14:2=>1】

 audio-technica社の「ウイングサポート」採用機種の中でももっとも安価な「エントリ機種」。

 開放型であるにもかかわらず(安物の)テクニカ製密閉機種と同様の違和感が音の端々 に出てしまっており、極端に言えば「安値の密閉機を背面解放としたらほぼ同じ音かもしれない」といった感じです…実際には解放構造向けのチューニングはな されているようですが、期待は禁物です。
 少なくとも、多少なりとも良い音を求めるならば「本機は買うだけ無駄」かもしれず(少 なくとも気になりだしたその瞬間に後悔することは確か)、素直に上 位機種を選択すべきです
(最上位機種であっても差額は6千円程度)

 但し、ヘッドフォンの外装やウイングサポート機構、パッドの形状などはATH-ADx00シリーズ内でほぼ共通のため、 一番下の本機であっても装着感に大きな相違はありません。
 パッド自体の作りは「耳乗せ型かつ耳覆い型」といった感じであり、純粋な大口径耳覆い型(Sennheiser/HD590など)が好みだという人には 耐えられないかもしれませんが、ポータブル機に多い耳乗せ型に慣れた人であれば、本機であっても十分に満足できるはずです。
 #耳たぶへの加圧をどの程度まで許容できるかが判断の分かれ目でしょうか。


 結局のところ、このシリーズは「携帯機器ユーザのステップアップ用」なのかもしれず、確かにその目的を果たすには十分な 性能とラインナップを揃えていると思います。

 想定されるユーザー:
 -屋外使用しているヘッドフォンが耳乗せ型の人。
 -5000円前後の予算で「とにかく掛け心地の良い」ヘッドフォンを探している人。
 -テクニカの廉価機を使用した経験があり、既に音の傾向を知っている人。
 …音質差が気にならない人に対してであれば、(事前に説明をして了解を得ることを条件に)自信を持ってオススメしても構わない気がします。


→価格:5,000円税抜き(ヨドバシカメラ仙台店)

date:2004/01/01
- audio-technica ATH-AD300 -


AIWA/HP-AK100
※16Ω・100dB/mW・開放型・ミニプラグ+ミニ→標準変換
装着性:★★★☆☆
遮音性:☆☆☆☆☆
音楽性:★★☆☆☆ …価格をふまえて評価しても構わないのであれば★3つが適当。
推奨度:★★☆☆☆ …価格をふまえて評価しても構わないのであれば★3つが適当。

 SONY/MDR-F1の廉価 版としか言いようのない存在ながら、「こだわりを捨ててしまえば、真っ当な体裁のままで安価な16Ωヘッドフォンにもなる」ことを証明して見せた意欲作、 という側面も持ち合わせています。
 ただし、
インピーダンスが16Ωと低いためか機器常在ノイズを拾いやすいというのは(この価格帯においては)結構致命的な問題です。ま た、これに対する対策(ごまかしとも言う)がなされておらず、これこそが「AIWAのAIWAたる所以」なのかもしれません…要するに「ノイズ管理が甘い 携帯再生機器での聴取には向かない」わけです。
 #常識的には十分に高価で、なおかつヘッドフォンマニア(?)にはエントリ帯と見られがちなこの価格帯に、本機が位置す ること自体が間違いのような気もします。あと2~3千円高いか安いかの方がよほど文句の付けようが出てしっくりくるのに…。

 他のヘッドフォンと同様に、アンプ側の出力構成や出力インピーダンスに応じて、特に高音域の表現方法に変化が見られます。
 この手の価格帯としては珍しく、あまり圧縮音源や携帯再生機器との相性はよくない(圧縮ノイズがかなり強調されてしまう)ので、イコライザを持たない携 帯再生機器しか持っていない人にとっては「買うだけ無駄な一品」になってしまうかもしれません。

 一方では「見た目に見合った開放感」や「開放型の割には量感のある低音」、「なんとかそのままでも使い物になるAKG似のオートアジャストバンド」や 「長すぎるかもしれない5mケーブル」などの(使用用途によってはまさにハマる)スペックを備えています。
 #ええと、スペックや装備から愚直に察すると、本機の一般的な使用用途は「ホームDVD視聴専用」なんですね、たぶん。そうであれば多少ローインピーダ ンスであっても問題なさそうですし。

 映像なしのオーディオ用として購入するならば、唯一重要なことはとにかく「16Ωヘッドフォンをノイズなく鳴らせる環境かどうかを確認しておくこと」で す。
 駆動力の問題ではないので、いわゆるヘッドフォンアンプの導入は全くの無駄です(大抵はさらにノイズが増えるだけです)。
 あくまでも、はじめから常在ノイズをなるべく吐かない機器を選ぶという方向で逃げてください。

 掛け心地については…前後方向の余裕は十分にあっていい感じなのですが、(欲を言うならば)上下方向の余裕を(Sennheiser/HD590ばり に)広めにとってほしい気もします。
 眼鏡使用時のずり上がりはやり起きてしまいますが、幸いにもバンドに仕込まれたバネ(ゴムバンド?)は十分に弱く、購入時ままでも使い物になる状態にあ ります。

 想定されるユーザー:
 -SONY/MDR-F1を買うべきかどうかで数年来迷い続けている人。
 -5000円前後の予算で「とにかくこもり感のない」ヘッドフォンを探している人。
 -ヘッドフォンに興味を持ちだしたお子様。
 …現行(VAIO風味)ロゴ品はHP-AK101で、HP-AK100は旧ロゴまま。


→価格:4,680円税抜き(ヤマダ電機)

date:2004/03/03
- AIWA HP-AK100 ( HP-AK101 ) -


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