3月31日
明日から妻と長女は、以前入院中に仲良しになったおかあさんとその子供さんとで
長崎まで一泊二日の旅行である。
この話はこの前の在宅のときからの計画を立てていたものである。
思い起こせば、結婚してからほぼ10年・・・家族でどこかになんてことは皆無、ましてや長女は
どこにも連れて行った事はなかった。
せめてもの罪滅ぼしで、ゆっくりしてきてほしい

ゆうすけは、オトウチャンとお留守番しましょ!
私は今日から病院にお泊りです。
炎症反応、血液検査、筋肉破壊酵素、胸部X−Ray、etc
全てのデ−タが快方へとむかっている!

3月22日
今日病院に行って、むちゃくちゃ腹がたった!(下記の場合はいつものことなのだが・・)
院内で携帯電話をしている人の姿が多すぎる。職業柄いつも注意するのだが、今日のチトちがう。
いつもだったら、注意すると『すいません・・・』といって電源を切ってくれるのだが、
今日の人は『アンタ、病院関係の人か?関係ないやろ!』 と いってつっかかってきた。
売り言葉に買い言葉、キレたわたしは、
『プロの通信士(これはホンマです)や!無線技術屋じゃ!モンクあるんかっ?』
とタンカをきってにらみつけた。
相手がひるんだスキをみて、矢継ぎ早に口角泡ヨロシク電磁波理論でセめまくった。
コテンパンに相手を理論的にやっつけ、電源OFFを勝ち取ったのじゃ!!

電波の取り扱いは非常にムツカシイです。
郵政省からも
『携帯電話は院内・人ごみのなかは使用をやめてください。
ペ−スメ−カ−からは22cm以上離す必要があります。』
と、ガイドがでています。
今この日記をよんでいるア・ナ・タ。
院内でケ−タイしている人が、いたら注意してさしあげましょう。

3月21日
今日は呼吸器(New-Port)から以前の呼吸補助装置(カンタムPSV)への切り替えの日。
前日に聞いてはいたものの、病院について病室に入るのには少し勇気がいった。

カンタンに説明すると、前者は生命維持装置で、後者はあくまでも呼吸補助装置である。
通常、後者はNIPPV(鼻マスク式)として使用されるのであるが、ゆうすけの場合
気切部に接続してもらっていてこれとすこぶる相性がいい。

部屋に入ると、そしらぬ顔でゆうすけが静かに呼吸していた。
胸の盛り上がり具合で、『どや?オトウチャン?』
ゆうすけが、そう言っているかのようだった。

3月15日
この季節は異動のシ−ズンでもあります。
ご多分にもれず、先生や看護婦さんも例外ではありません。
じつは、3月いっぱいでゆうすけの主治医の先生、看護婦さんが異動もしくは退職されるのをききました。
発病当初からお世話になっている方ばかりで、語ろうとも語り尽くせない・・
私たちの陰になり日向になってくれました。
ゆうすけが危険な状況に陥ったとき、はたまた快復してきたとき、
ともに喜び、ともに涙をながしてくれたそのやさしい心に何度、救われたか・・・

本当に今までありがとうございました。
ゆうすけはきっとよくなります。

逢うは別れのはじめ・・
なんて、沁みいる言葉なんだろう?

3月10日
このあいだとはうって変わって今日のゆうすけは絶好調!
妻の顔色も明るい、こんな時は他愛のない会話もはずむ。

呼吸器のコンディションも20回/min、40%(酸素)とかなりHeavyであるが、これもゆうすけが少しでも
楽になって体力がついてくれれば・・・
サチュレ−ションも100と優秀!しかも、吸引後のリカバリ−が遅いのだが確実に数値が追従してくる!
呼びかけに対しても、体を触っても、反応が確実となる。まぶたで返事をしてくれる、
『オトウチャンのいうこと、ボク、わかっとるで!』

先生や看護婦さんのがんばりに感謝!
ゆうすけのがんばりに感謝!
妻のがんばりに感謝!

3月7日
昨日から、呼吸補助装置から呼吸器へと切り替えた。
根本的に機能が違うのと、ゆうすけの肺はさらに強制換気をかけてやる必要性がでてきたからだ。
ゆうすけはすこし楽になっているみたい。
血液検査の結果もすこしづつではあるが、快方へと向かっていってる。
呼びかけても反応はすくないが、昨日よりかは顔色がいいのでほっとする。

3月5日
いつものように仕事が終わってから、原付で病院に行く。
病室に入ると看護婦さんが吸引をしてくれていた。しかしサチュレ−ションのリカバリ−が異様に遅い。
いつもは冗談を言って明るい看護婦さんの表情が硬い。
かろうじて、90を保っている程度。顔色もどんどん悪くなっていく。
やがて85を平気で切り出し急遽バギングに切り替える。
それでも、92を超えない、どうした?、なにがおこっている?
ほとんど、パニックに近い。看護婦さんとわたしと妻と交代で2時間近くバギングをした。
バギングの手を休めるとたちまちサチュレ−ションが低下し、全くリカバリしない・・・
時計を見ながらのバギング。5秒に一回がやがて3秒に一回になる。疲れたなんて言ってられない
脈も落ち着かなくなってきた!バギングが追いつかない!
カニュ-レの先端位置がおかしいのか?分泌物が詰まっているのか?素人考えが頭をよぎる
唇の色がみるみる白くなる・・・
足が震える・・・

原因は、無気肺(肺にAirが行き届いていない症状)であった。
肺が真っ白である、
しかも、体のムクミが昨日よりひどく尿もでていない。

帰り途、ヘルメットのシ−ルドが涙でくもった。

3月3日
ゆうすけの入院から、私と長女と次男とで実家にお世話になる生活が始まっている。
入院のたび、いつも文句ひとついわず迎え入れてくれる。これには本当に頭が下がる。
私の実家、妻の実家幸いにして近い距離なので、双方の家にほんとうに苦労をかけっぱなしである。

血液検査の結果が出ているが、あまりいいものではない。
低蛋白、筋肉破壊酵素(GOT)が高くかつ炎症反応(α-CPK)が高い。
胸部X-Rayでは例によって、心肥大が観察されている。心音もギャロップ気味・・・
サチュレ-ションも90〜95とベストとは、ほど遠い値。かなりしんどいゆうすけが、浮き彫りにされていく。
なんとか、平静を保とうとするが、ひとりになったとき落ち込んでしまう。
ゆうすけに申し訳ない・・・

2月27日(1月21日の在宅開始から38日目)
朝からサチュレ−ションが一定にならず、ゆうすけの様子がおかしいのに気づく。
そういえば、2、3日前からムクミが顕著になり尿の出も悪い。・・・・
なかばイヤな予感を抱きつつバギングしながら病院へと直行する。
 
病院へ到着し当直の先生に診てもらう。
早速、血液検査、ル−トの確保、心電図モニタ−、X−Rayと慌しい。
無言で横たわるゆうすけ・・・結果、様子を見るということで入院になった。
先生から 『・・・ゆうちゃん、入院しよっか?』 と、聞かされると
一緒についてきていた長女が、悲鳴にも近い嗚咽とともに大粒の涙をポロポロとこぼす。
無理もない、1月21日に約一年ぶりに我が家にゆうすけが戻り、家族揃っての生活に慣れてきた矢先の入院である。学校から帰ってきたら、真っ先にゆうすけにいつも絵本を読んでくれていた、と妻から聞かされていた。それを思うと、ゆうすけの変化に気づいてやれなかったことが情けない。

当直であり、入院中お世話になったベテランの看護婦さんが、
『おねえちゃん、ゆうちゃんは必ず良くなるからね!おねえちゃんも応援してね!』
涙声であったが、力強く感じた。