猿の惑星

PLANET OF THE APES
監督 ティム・バートン
出演 マーク・ウォールバーグ  ティム・ロス  ヘレナ・ボナム・カーター  マイケル・クラーク・ダンカン  エステラ・ウォーレン  リサ・マリー  クリス・クリストファーソン  チャールトン・へストン
音楽 ダニー・エルフマン
2001年 アメリカ作品 119分
毎日映画コンクール…宣伝賞(最優秀宣伝)受賞
ゴールデンラズベリー賞…ワースト助演男優(チャールトン・ヘストン、対象作品は他に「キャッツ・アンド・ドッグス」“Town and Country”)・ワースト助演女優(エステラ・ウォーレン、対象作品は他に「ドリヴン」)・ワーストリメイク賞受賞
評価☆☆☆★ 

1968年作の「猿の惑星」は、あっと驚く衝撃のラストシーンで有名な作品であり、今回、ただのリメイクでは失敗するのは、チャレンジする前から目に見えていた(たとえば前作をそのまま踏襲してしまった「サイコ」のように)。だいいち、68年作のラストのオチは有名であるだけに、同じ手を使っても今度はオチるわけがなく、それは許されない。

ティム・バートンが監督をすると聞いて、同じものを作るわけがないが、さて、どんな映画を作ったのか、と興味しんしん観てみた。結果、ラストのオチも変わり、なかなか楽しめる映画になっていた。リメイクではなく、リ・イマジネーションだというティム・バートンの言葉の通りだ。

猿の支配する星に人間が迷い込み…という物語のベースがすでにある作品ということで、ティム・バートン独特の奇妙なユーモアの色調を発揮できる場面はほとんどなかったが、彼の作品に一貫して流れる「異形の悲しさ」という点から見れば、すでに猿そのものが異形と見ることができ、じつは彼のテーマには合っているのかもしれない。

猿のメイクは見事なもので、見所のひとつ。
そして、猿の将軍セードを演じたティム・ロスの演技は、まったくもって素晴らしい。気が荒い攻撃的なチンパンジーを、遠い昔の野性の時代に先祖がえり(?)したかのように嬉々(キーキー?)として演じた。
あるインタビューで、素顔が出ない役はイヤではなかったか、という問いに対して、彼は、悪役は楽しくて、やりがいがあるよ、というようなことを答えていた。その通り、猿メイクの上からであっても表情は見事に出ていたし、あっぱれな猿真似だった。

奴隷商人役の猿が出てきたときには、某CMを思い出して笑ってしまった。映画に登場する猿が本当にそのままCMに出ていたんだな、と妙なところで感心してしまった。

68年作「猿の惑星」主演のチャールトン・へストンがゲスト出演しているというが、どうもセード将軍の父親役だったらしい。猿メイクなので分からなかった。

音楽は、ダ二ー・エルフマン。これまでもティム・バートン作品にぴったりフィットして、もはや欠くことのできない感のある人だが、私には彼の音楽が肌に合うというのか、今回のスコアも好みだった。

最近の映画のオープニングクレジットは、物語が進行していく本編のシーンの上に出演者やスタッフの名前が出る、という形が多いのだが、この映画では昔風の、いかにも映画らしい、きちんと独立したオープニングクレジットが採用された。これは逆に新鮮で嬉しかった。

猿のメイクを観賞し、ティム・ロスに感心し、猿軍団と人間集団の白兵戦へと展開する、実にシンプルなストーリーに身をゆだねていれば、じゅうぶんに楽しめる。
ただし、タイムトラベルのごとき時間の歪みについて考えはじめると、頭を使うことになる。それを考えるのは、ネタばれページに譲ろう。

                   〔2001年8月4日(土) ワーナー・マイカル・シネマズ 大井〕
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