マカロニ・ウエスタンの元祖「荒野の用心棒」が、黒澤明監督の「用心棒」をネタにしたイタリア製西部劇なら、元祖ともいうべき日本で、日本らしい西部劇があってもいいじゃないか。
というので、
源氏と平家の争いに用心棒を加えて、マカロニ・ウエスタン風にしてみました。
という映画。
初日初回に行ったのに、席はガラガラ。映画館は銀座の「丸の内TOEI」。地下鉄が走る音が聞こえるという環境のせいか? 観るほうとしては、込み込みよりも楽でいいけど。
三池監督といえば、観ている映画の本数は数少ないけど、いまのところ私は
「カタクリ家の幸福」が、いちばんよかったなあと思う。
お遊びいっぱいで、ベタで、ホラーで、ブラックで、コメディで、おもしろかった。
本作は、ほとんどが
日本人俳優なのに、セリフは英語だ。マカロニ(本来はスパゲッティだけど、淀川長治さんが改名したというのは、知る人ぞ知る)やるんだったら、やっぱり日本語は合わないかもしれないね。
日本語使えば、もろ日本映画だもん、イメージとして。当たり前だけど。
金が埋まってるといわれる村に、
トレードマーク赤の集団、平家ギャングがやってくる。ボスは清盛(佐藤浩市)。壇ノ浦の戦いから数百年後なので、清盛といっても、平家が歴史の表舞台から姿を消してから、ずっと後の子孫というわけだ。
そこへ、義経(伊勢谷友介)率いる、
トレードマーク白の源氏ギャングがやってくる。お宝発見は平家にやらせて、そこを横取りしようという腹だ。
赤が勝つか白が勝つか!?
村に流れ着いた、腕の立つガンマン(伊藤英明)は、どちらかに加勢するのか?
というわけで他にも、清盛の言いなりになってる弱々しい保安官(香川照之)やら、清盛に夫を殺されてから義経の女になったダンサーの静(木村佳乃)やら、静の義母(桃井かおり)やら、平家物語とスキヤキが好き(?)なガンマン(クエンティン・タランティーノ)やらが出てくる。
そうそう、オープニングで
SMAPの某メンバーがゲスト出演していたね。
オープニングタイトルでは、出演者の名前は漢字だ。セリフは英語なのに、出演者名は漢字。このへんは、俺らは日本人なんだぜ、という主張がある…ような気がする。
この漢字が、力強いし、カッコイイんだなあ。
筆で書いた漢字の形って、美しい芸術品だと思った。
ほとんどの出演者は、思ったより英語が上手で、その点は聞いていて変でもなかった。
セリフ覚えるの、大変だっただろうなあ。
石橋貴明が弁慶役。最後の、オカマ風になって…という場面は笑いどころだが、安直すぎるギャグで、くだらない。たぶん私はもともと、石橋のキャラが好きではないからだろう。
香川照之の二重人格ひとり芝居も少し、しつこい。平家につくか、源氏につくか、というので二重人格になるのは分かるが。
木村佳乃に対する扱いは、
サディスティックさが、ちらほらとして、監督らしい一面が見えているようにも思った。
発音が不明瞭な年老いた村長のそばに、村長の言葉をはっきり伝える役の男がいたのは、おかしかった。
同時通訳みたい。しかも、村長についている男は外国人だから、なおさら通訳っぽくて笑える。こんな細かいところでも楽しませようとしているのは、いいですねえ。
終盤、おじじとおばばの悲しい恋に、泣けてしまったよ…。この映画で泣くなんて人がいる?
ジャンゴというのは、
マカロニ・ウエスタンの傑作「続・荒野の用心棒」(1966年)の原題。
棺桶も、ガトリング銃(機関銃)も、「続・荒野〜」のアイデア拝借である。
これで、♪ジャンゴ〜という主題歌が流れれば楽しいのになー、でも、他の映画の曲だから使えないか、と思っていたら、なんとこれが流れたのである!
しかも、北島三郎の演歌なまりな歌で!
「続・荒野の用心棒」、観たくなった。