スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ

監督 三池崇史
出演 伊藤英明  佐藤浩市  伊勢谷友介  桃井かおり  木村佳乃  香川照之  安藤政信  松重豊  堺雅人  石橋貴明  クエンティン・タランティーノ  小栗旬  塩見三省  石橋蓮司  田中要次
脚本 三池崇史  NAKA雅MURA
撮影 栗田豊道
編集 島村泰司
音楽 遠藤浩二
主題歌 北島三郎
2007年作品 121分
評価☆☆☆


マカロニ・ウエスタンの元祖「荒野の用心棒」が、黒澤明監督の「用心棒」をネタにしたイタリア製西部劇なら、元祖ともいうべき日本で、日本らしい西部劇があってもいいじゃないか。
というので、源氏と平家の争いに用心棒を加えて、マカロニ・ウエスタン風にしてみました
という映画。

初日初回に行ったのに、席はガラガラ。映画館は銀座の「丸の内TOEI」。地下鉄が走る音が聞こえるという環境のせいか? 観るほうとしては、込み込みよりも楽でいいけど。

三池監督といえば、観ている映画の本数は数少ないけど、いまのところ私は「カタクリ家の幸福」が、いちばんよかったなあと思う。
お遊びいっぱいで、ベタで、ホラーで、ブラックで、コメディで、おもしろかった。

本作は、ほとんどが日本人俳優なのに、セリフは英語だ。マカロニ(本来はスパゲッティだけど、淀川長治さんが改名したというのは、知る人ぞ知る)やるんだったら、やっぱり日本語は合わないかもしれないね。
日本語使えば、もろ日本映画だもん、イメージとして。当たり前だけど。

金が埋まってるといわれる村に、トレードマーク赤の集団、平家ギャングがやってくる。ボスは清盛(佐藤浩市)。壇ノ浦の戦いから数百年後なので、清盛といっても、平家が歴史の表舞台から姿を消してから、ずっと後の子孫というわけだ。
そこへ、義経(伊勢谷友介)率いる、トレードマーク白の源氏ギャングがやってくる。お宝発見は平家にやらせて、そこを横取りしようという腹だ。
赤が勝つか白が勝つか!?
村に流れ着いた、腕の立つガンマン(伊藤英明)は、どちらかに加勢するのか?

というわけで他にも、清盛の言いなりになってる弱々しい保安官(香川照之)やら、清盛に夫を殺されてから義経の女になったダンサーの静(木村佳乃)やら、静の義母(桃井かおり)やら、平家物語とスキヤキが好き(?)なガンマン(クエンティン・タランティーノ)やらが出てくる。
そうそう、オープニングでSMAPの某メンバーがゲスト出演していたね。

オープニングタイトルでは、出演者の名前は漢字だ。セリフは英語なのに、出演者名は漢字。このへんは、俺らは日本人なんだぜ、という主張がある…ような気がする。
この漢字が、力強いし、カッコイイんだなあ。筆で書いた漢字の形って、美しい芸術品だと思った。

ほとんどの出演者は、思ったより英語が上手で、その点は聞いていて変でもなかった。
セリフ覚えるの、大変だっただろうなあ。

石橋貴明が弁慶役。最後の、オカマ風になって…という場面は笑いどころだが、安直すぎるギャグで、くだらない。たぶん私はもともと、石橋のキャラが好きではないからだろう。
香川照之の二重人格ひとり芝居も少し、しつこい。平家につくか、源氏につくか、というので二重人格になるのは分かるが。
木村佳乃に対する扱いは、サディスティックさが、ちらほらとして、監督らしい一面が見えているようにも思った。

発音が不明瞭な年老いた村長のそばに、村長の言葉をはっきり伝える役の男がいたのは、おかしかった。同時通訳みたい。しかも、村長についている男は外国人だから、なおさら通訳っぽくて笑える。こんな細かいところでも楽しませようとしているのは、いいですねえ。

終盤、おじじとおばばの悲しい恋に、泣けてしまったよ…。この映画で泣くなんて人がいる?

ジャンゴというのは、マカロニ・ウエスタンの傑作「続・荒野の用心棒」(1966年)の原題。
棺桶も、ガトリング銃(機関銃)も、「続・荒野〜」のアイデア拝借である。
これで、♪ジャンゴ〜という主題歌が流れれば楽しいのになー、でも、他の映画の曲だから使えないか、と思っていたら、なんとこれが流れたのである!
しかも、北島三郎の演歌なまりな歌で!
「続・荒野の用心棒」、観たくなった。




〔2007年9月15日(土) 丸の内TOEIA〕


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