ミスター・ロンリー

監督 ハーモニー・コリン
出演 サマンサ・モートン  ディエゴ・ルナ  ドニ・ラヴァン  ヴェルナー・ヘルツォーク  レオス・カラックス  ジェームズ・フォックス  ジョセフ・モーガン  メリタ・モーガン  リチャード・ストレンジ  アニタ・パレンバーグ  レイチェル・コリン  クエンティン・グロセット
脚本 ハーモニー・コリン  アヴィ・コリン
撮影 マルセル・ザイスキンド
編集 ポール・ザッカー  ヴァルデス・オスカードゥティル
音楽 ジェイスン・スペースマン  ザ・サン・シティ・ガールズ
2007年 イギリス・フランス・アイルランド・アメリカ作品 117分
評価☆☆☆


もちろん、これはマリリンがらみなので観た作品。
マイケル・ジャクソンのインパーソネーター(ディエゴ・ルナ)が、マリリンのインパーソネーター(サマンサ・モートン)と出会う。
マイケルはマリリンから、インパーソネーターたちが共同生活をしているスコットランドに来ないかと誘われ、美しい自然に囲まれた古城へと向かう。

インパーソネーターというのは「ものまね役者」という訳になったりするが、英語で意味するところは、単なる真似ではなく、もっと真剣にその人になりきる感じであるらしい。

マリリンは結婚していて、夫がチャールズ・チャップリンのインパーソネーター(ドニ・ラヴァン)、娘がシャーリー・テンプルのインパーソネーターだ。一家そろって、という設定は、すごいですね。本当のマリリンの夫だったジョー・ディマジオだったら、よかったのに。でも、ディマジオだったら、何を似せたらいいのか難しいか。(笑)

ヴェルナー・ヘルツォーク、レオス・カラックスといった著名な監督が、俳優として出演しているのも見どころだ。

あまり話を知らずに、これから本作を観たいという方は、この先、読まないほうがいいかもしれません。
知らないことが多いほうが、新鮮に映画に対することができるので。

共同生活の仲間になったマイケル。マリリンの家族の他には、ジェームズ・ディーン、マドンナ、リンカーン大統領など、さまざまなインパーソネーターがいる。彼らは芝居小屋を建てて、公演を計画する…。

もうひとつ、まったく別進行の話がある。それは、神父とシスターたちの話。彼らは、飛行機から貧しい人たちのために食料を投下している。
そこで奇跡というか、不思議な出来事が起きる。
この話と、インパーソネーターたちの話が、何の関連があるのだろう、というのが難しい。
なんなの、これ? と思ってしまうような、不思議な感覚の映画なのである。

この映画が言いたいことは、ペシミズム(悲観主義)なのではないか、とか、いや、それを越えた上で、その逆なのでは、などと考えた。
それに、人間、神の領域に近づこうなんて高慢な考えを持ったら、しっぺ返しを食らうぞ、というのも、あるのかも、とか。
そんなこんなありまして、いまのところ到達している考えは、生きることの難しさと愛しさ。人それぞれの人生だけれども、嫉妬をしたりする弱い存在だけれども、悲しいこともあるけれども、何があるか分からない、時には無情な人生だけれども、それでも生きていこうとする者には、幸あらんことを。あなたは、ひとりじゃないよ。
つまり、人間を、あったかく見ている映画ではあろうと、とらえておきます。
(あとで知ったのだが、監督は「純粋さと社会性の対立」の話と言っているらしい。なるほど。)

映画祭で発表された他は、あまり公開されていないようで、日本公開はイギリス・アメリカ・フランスよりも早いらしい。
たまーに、そういう作品ありますね。

マリリンを演じたサマンサ・モートンは好演。演技派女優なので心配はしていなかったが、きちんと、こなしてます。
たまーにマリリンっぽく見えることもあり。
衣装は「七年目の浮気」でスカートがひらりと舞い上がるときの白いドレスがメイン。

マリリンの衣装は、フランスのファッションブランド、アニエスベー(agnes b.)による特注。
アニエスベーは私の大好きな映画「マルホランド・ドライブ」(デヴィッド・リンチ監督)でも衣装も担当していて、そのときから私は注目していたが、今回もマリリンの衣装である!(そういえば、アニエスベーは、リンチ監督の次作「インランド・エンパイア」でも衣装協力してたっけ。)
アニエスベーは映画会社「ラブストリームス」をもっていて、今回は製作にも関係している。
また、青山店で2月18日まで写真展、2月中旬から一部店舗で「ミスター・ロンリー」Tシャツの販売があるという。これはチェックしなきゃ。

ひとつ、注意してほしいことがある。
公式サイトにある「STORY」は、結末まで、すべて書かれているので、観る予定がある方は読まないほうがいい。
そこまで書くなら、なぜ「結末まで書かれています」と前置きをしておかないのか。
ちょっと信じられない配慮のなさだ。

追記:読売新聞に載っていた監督の話。そっくりさんたちと尼僧たちの物語の共通点は「強迫観念にとらわれた夢追い人が社会に戻ろうとした時に、泡がはじけるように起こる悲劇」であり、「互いの物語を寓意的に補完する、詩的なアクセントでもある」とのこと。




〔2008年2月2日(土) シネマライズ〕


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