メメントの構成 ネタばらし


冒頭のポラロイド写真。写った画像が、だんだんと消えていく。
え? 普通は、だんだんと画像が出てくるはずでは?
逆じゃないか。
観客は、そう気づく。
そこからは、もう、観客は注意を集中して展開についていかなければならない。ぼけっとしていたら、何がなにやら分からなくなるだろう。

それも当然なのだ。
この映画は、後ろから話を並べてある
後ろから、といっても、最後からまったく逆に、ではない。

時間通りに流れる話全体を、10個に切り分けるとしよう。切り分けて、順番に1、2、3…と番号を振る。
それから、10、9、8…と並べ替えるわけだ。
そして、9の部分を見せるときには、9だけではなく10の頭の部分までつなげて、いまの話は、その前に見せた10の前に起きた話なんだよ、と理解させるのだ。(分かりましたでしょうか?)

そこに黒白映像の電話のシーンが何の説明もなく挿入されてくる。この部分は時間は順行しているはずだ。

そんなふうにできているから、理解するのが難しい。面倒くさい。
頭の刺激にはなる。
このアイデアは確かに脚本賞ものだ。

主人公は前の記憶がない、という設定。
その主人公の不安な状態を観客に擬似体験させるためにはどうするか。
われわれ観客は記憶をなくすことはできない。だから、前の出来事を知らない、という構成にすればいい。そうすれば主人公と似たような不安な状態を味わえる。
そうした考えから、この構成は生まれたのだろう。

話が以前のことに進んでくると、あの人間が、じつは、前にあんなことをしていたのだ、という予想外の事を見ることになる。
その面白さは、この構成なくしてはありえないもので、新鮮な快感といえる。

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