メメント

MEMENTO
脚本・監督 クリストファー・ノーラン
出演 ガイ・ピアース  キャリー=アン・モス  ジョー・パントリアーノ
2000年 アメリカ作品 113分
アメリカ映画研究所(AFI)賞…脚本賞受賞
ロサンゼルス批評家協会賞…脚本賞受賞
全米放送映画批評家協会賞…脚本賞受賞
シカゴ批評家協会賞…脚本賞受賞
インディペンデント・スピリット賞…作品・監督・脚本・助演女優(キャリー=アン・モス)賞受賞
評価☆☆☆★

映画の冒頭に映るのは、1枚のポラロイド写真。そこには転がった人間らしきものが写っている。それが見る間に…あら不思議!

主人公は、妻を殺されて、犯人への復讐を誓った男。
だが、彼は事件の後遺症で、10分として記憶がもたないようになっていた。

そこで彼は考えた。
ポラロイドで写真を撮って、余白にメモを書いておけばいい。それを見れば、写真に写っているものと自分との関係が分かる。(分かる、のであって、思い出すのではない。
自分にかかわっている人間はもちろん、泊まっているモーテルも忘れないために撮っておく。
絶対になくしたくない情報は、体に刺青(いれずみ)として残しておく。
そのようにして、男は妻殺しの犯人を追う。
そして、たどりついた結末とは…。

主演のガイ・ピアースは、私にとって、「L.A.コンフィデンシャル」を観た年には、個人的に、主演男優賞をあげたいほど注目した俳優だ。(とはいっても、その後、彼の映画を、あまり観てはいないのだが)
記憶をなくすということが、どれほどの絶望や孤独を生むのか、実際にその立場になってみなければ分からないだろうが、きっと耐えがたいことに違いない。
そういう渦中にいる男を、ガイ・ピアースが演じて、クールに決めている。
心の空虚さも垣間見えそうな、乾いた感じといえばいいだろうか。
犯人探しを手伝うのが、これまたクール・ビューティーなキャリー=アン・モス。友人として協力するのがジョー・パントリアーノ。
この2人、味方のように思えるが、男には、じつのところはよく分からない。

前向性(順向性)健忘という、昔の記憶はあるが、発病後の記憶がなくなる症状は、実際にあり、治療法はまだ発見されていないということだ。
その症状を普通に映画にするだけなら、とりたてて騒ぐこともない。
だが、この映画は、その構成がきわめてユニークなために話題となり、リピーターまで出現するヒットとなった。

その構成については、ご存知の方もいるだろうが、観るときには予備知識がないほうが面白いだろうと思うので、構成の詳細はネタばれページに譲ることにして、読みたい人だけが読めるようにしておこう。

私の評価としては、この構成は斬新だと思う。だが、それを除けば普通になってしまう話ではないか。そう考えてしまうのだった。
だからさ、それを斬新な構成にしたところがすごいんじゃないか、と言われれば、まあ、そうなのだけれどもね、と答えるしかない。

つまり、この映画の価値は、主人公の経験する記憶の喪失を、観客にも擬似体験させることであり、それをどう評価するかが人によって分かれるところなのだと思う。

自分の頭の中では、いちおう、事件の解決はついたと思われるので、それが正しく「つじつま」が合うかどうかを確認するのは、テレビで放送するときでいいかな、と思っている。
〔2001年11月17日(土) シネクイント〕



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