あの日、欲望の大地で

THE BURNING PLAIN
脚本・監督 ギジェルモ・アリアガ
出演 シャーリーズ・セロン  キム・ベイシンガー  ジェニファー・ローレンス  テッサ・イア  J・D・パルド  ホセ・マリア・ヤスピク  ヨアキム・デ・アルメイダ  ジョン・コーベット  ダニー・ピノ  ディエゴ・J・トーレス
撮影 ロバート・エルスウィット
編集 クレイグ・ウッド
音楽 オマール・ロドリゲス=ロペス  ハンス・ジマー
2008年 アメリカ作品 106分
ヴェネチア国際映画祭…新人賞(ジェニファー・ローレンス)
評価☆☆☆★


この女優が出ているなら、きっと映画館に観に行く。
そんななかの1人が、シャーリーズ・セロン嬢である。

シリアス(深刻)な作品から娯楽ものまで、彼女の演技幅は広く、今回の映画は、きわめて深刻なほう。
なにしろ、作った人が「21グラム」(2003年)、「バベル」(2006年)などを書いたギジェルモ・アリアガだ。本作は、彼の初監督作。
シャーリーズは、製作総指揮のメンバーに名を連ねて、気合いが入っている。

この作品も、アリアガの以前の脚本作と構成が似ていて、いくつかの場面が、時間の順番に関係なく、ばらばらに並んで出てくる
だからといって、難解なわけではない。少しは気を張って見ていないといけないかもしれないが、決して、わけがわからなくなるほどではない。
こういう構成の映画を見慣れている人も、少なからず、いるはず。

原題は「燃える平原」。まさに、平原の中にポツンとあるトレーラーハウスが燃えているシーンから始まる。
この光景が、登場人物たちの多くに、とくにヒロインのシルヴィア(シャーリーズ・セロン)に、娘時代から重大な影響を及ぼしているのだ。

いやー、シャーリーズ、いいですね!
疲れた、すさんだ、重荷を背負った女を演じても、すばらしい。
早々にオールヌードがあり、生活感がある裸を見せつける。
基本が美人だから、疲れた女でも素敵なんだよなあ、じつに。

こういう難しい演技を積んでいくことは、もっと素敵な女優になっていくことだと確信する。

シャーリーズに負けず劣らず、すばらしかったのは、シャーリーズの娘時代を演じたジェニファー・ローレンス
とりわけ、クライマックスのトレーラーハウスの前でのリアルな演技は、見事なもの。
ヴェネチア国際映画祭で新人賞に輝いたのも、うなずける。

雰囲気や話し方は、シャーリーズに努力して近づけているように思える。
撮影時に17歳だったらしいが、この先が楽しみ。

シャーリーズの母親を演じたキム・ベイシンガーも好演。
お歳は召したけれど、円熟味が増して、いいよねー。

これは、シャーリーズ、キム、ジェニファー、3人の女優を見る映画ですね。

男は添え物にしか過ぎない。
たとえ女たちの人生が、男に左右されるとしても。
それは、女たちの選択によるものなのだから。
(ええ、私は基本的に、女性賛美者ですからね。)

ヒロインのシルヴィアの人生の過酷さ。その奥底にある、決定的な出来事が、やがて語られる。
これは…重い。

ラストの女の子の、ひと言。
これには涙が崩壊した。
シルヴィア、これから、がんばって。
そう応援する声をかけてあげたかった。




〔2009年9月27日(日) Bunkamura ル・シネマ1〕


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