この女優が出ているなら、きっと映画館に観に行く。
そんななかの1人が、
シャーリーズ・セロン嬢である。
シリアス(深刻)な作品から娯楽ものまで、彼女の演技幅は広く、今回の映画は、きわめて深刻なほう。
なにしろ、作った人が
「21グラム」(2003年)、
「バベル」(2006年)などを書いたギジェルモ・アリアガだ。本作は、彼の初監督作。
シャーリーズは、製作総指揮のメンバーに名を連ねて、気合いが入っている。
この作品も、アリアガの以前の脚本作と構成が似ていて、
いくつかの場面が、時間の順番に関係なく、ばらばらに並んで出てくる。
だからといって、難解なわけではない。少しは気を張って見ていないといけないかもしれないが、決して、わけがわからなくなるほどではない。
こういう構成の映画を見慣れている人も、少なからず、いるはず。
原題は「燃える平原」。まさに、平原の中にポツンとあるトレーラーハウスが燃えているシーンから始まる。
この光景が、登場人物たちの多くに、とくにヒロインのシルヴィア(シャーリーズ・セロン)に、娘時代から重大な影響を及ぼしているのだ。
いやー、シャーリーズ、いいですね!
疲れた、すさんだ、重荷を背負った女を演じても、すばらしい。
早々にオールヌードがあり、生活感がある裸を見せつける。
基本が美人だから、疲れた女でも素敵なんだよなあ、じつに。
こういう難しい演技を積んでいくことは、もっと素敵な女優になっていくことだと確信する。
シャーリーズに負けず劣らず、すばらしかったのは、シャーリーズの娘時代を演じた
ジェニファー・ローレンス。
とりわけ、クライマックスのトレーラーハウスの前でのリアルな演技は、見事なもの。
ヴェネチア国際映画祭で新人賞に輝いたのも、うなずける。
雰囲気や話し方は、シャーリーズに努力して近づけているように思える。
撮影時に17歳だったらしいが、この先が楽しみ。
シャーリーズの母親を演じた
キム・ベイシンガーも好演。
お歳は召したけれど、円熟味が増して、いいよねー。
これは、
シャーリーズ、キム、ジェニファー、3人の女優を見る映画ですね。
男は添え物にしか過ぎない。
たとえ女たちの人生が、男に左右されるとしても。
それは、女たちの選択によるものなのだから。
(ええ、私は基本的に、女性賛美者ですからね。)
ヒロインのシルヴィアの人生の過酷さ。その奥底にある、決定的な出来事が、やがて語られる。
これは…重い。
ラストの女の子の、ひと言。
これには涙が崩壊した。
シルヴィア、これから、がんばって。
そう応援する声をかけてあげたかった。