原題は
「母と子」。それが率直に映画の内容を言い表している。
監督はロドリゴ・ガルシア。以前の作品
「彼女を見ればわかること」(1999年)のときは、とても感動して映画館に2回観に行ったほどだった。
今回は、
ナオミ・ワッツさんが出演するので、やっぱり見ないわけにはいかないのである! そして、相変わらず女性の生き方を真摯に描くガルシア監督。なんで男性なのに女性の人生についての脚本を書くのがお好きなのでしょう。
美しく絵になるからというのもあるだろうけど、
女性は「子どもを産む」役割をになうことによって背負い込む決定的な大きなものがあるからだと思う。
いわゆる「母性」、子どもは母親が自分の身をもって体内で育て、外の世界へ生み出す、言ってみれば分身みたいなものでも有り得るのではないかという気がする。
そして、一般的には男はいくつになっても、女性に母性を見る。あこがれと尊敬を抱く。
ナオミたんは、複雑な心のうちをもった役を好演。
アネットさん、すごく、いい女優さんになってます。
子どもを産むこと、母親であること、不本意に子と別れてしまった母、生みの親を知らない娘…。
この映画には、多くの「母と子」が登場する。それぞれに母と子の関係性は違うが、
どの「母と子」も素晴らしく、見ていて気持ちがじんわりとしてしまう。
14歳で妊娠し、生まれた娘をすぐに手放した母にアネット・ベニングさん。その娘ナオミ・ワッツさんは、いまや、やり手の弁護士になっている。
実の親を知らない娘は、まるで得られなかった愛情を埋め合わせるかのように、大胆に男と性交渉をもつ。その一方で、他人との関わりを避けようとするのは、人に心を許さずにひとりで生きてきたことの現われでもあろうか。
また、養子をもらおうとする夫婦の話が同時進行で進み、最後に、いい締めくくり方につながっていく。
こまやかな描写で、グッと感情に訴えかけてくる場面も多い。たとえば…
ある検査結果を知ったあと、ナオミ・ワッツさんがテーブルの上の物をなぎ払う場面。私は普段だったら、こんなことするなんてオーバーな表現だろうと思うはずだが、この映画では納得できる気がした。
アネット・ベニングさんが、養子をもらった女性の情報を知って笑い出す場面。その理由を言葉で説明せずに、その後の映像で見せていくところは、観客に「ああ、そうだったのか」と思わせながら、彼女の気持ちを知って、じーんとしてくる。じつに上手い。
ほんの少し行動を変えてみれば、未来は、まるで違っただろうし、信じられないような不運もあった。でも、それも人生なのか。
どの母と子も、自分なりに今をいっしょうけんめいに生きているのだ。どんな明日が待っていようとも。
この世の中に生きるみんなが、何か幸せなことを、ひとつでも持っているように。そう願う。
そうでなければ、この世は悲しすぎる。