心に響く物語。過去と今が鮮やかにリンクする。
素晴らしかった。
語り口も流れるがごとく。無理がなく、過不足のない物語のつむぎ方。
誰が誰の子どもなのか、などの人間関係に少し気をつける必要はあるかもしれないが、
ほとんど言うことなしの傑作。(もちろん私にとっては、です。)
第2次世界大戦でのユダヤ人の悲劇を描いた映画は多くある。
本作は少女サラの過去の物語だけでも心を揺さぶられる。
しかし、それだけではなく、サラの物語は、サラのことを調べていく雑誌編集者ジュリアの現在の物語と絶妙に絡まっていくのだ。
過去のサラのパート、現在のジュリアのパートともに、同等の強さで見る者に迫ってくる。このバランスの良さは素晴らしい。
サラを演じた
メリュジーヌ・マヤンスちゃん、調べてみたら、
「Ricky リッキー」に出ている! ずいぶん大人っぽくなっていて、びっくり。(まだまだ子どもだけど「Ricky リッキー」のときと比べたら、ですよ。)
以下は多少ネタばれ。
ジュリアは妊娠するが、彼は子どもはもう持ちたくないと言う。
産むか堕ろすかとは、つまり命を助けるか殺すかということ。必然的にジュリアはサラたちの
命の重さを身近に実感することになる。
ホロコーストというと、ドイツ軍だけが悪者と思いがちだが、フランスも手を下していた。
ドイツ占領下のフランスでは、ヴィシー政権がドイツ寄りの政治を行なったというが、フランスの警察によってサラたちが捕まったのも、その政策のひとつか。
人間の尊厳を奪うような扱いを、同じ人間がなぜできるのだろうと、憤りと悲しみを覚える。
しかし、そんななかでも見逃してくれた警官、かくまってくれた老夫婦などがいた。人の善意、
正義は消え去ったわけではないと思わせてくれるのが感動的だ。
私は、映画の内容については、まったく知らずに観た。原題は「彼女の名前はサラ」だが、邦題は「サラの鍵」。
原作がベストセラー小説で、タイトルが「サラの鍵」なのだった。…あとで絶対に読もう。
原題も邦題も、納得がいくタイトルだ。
ラストシーンは驚きと感動で涙を流さずにはいられなかった。
どんなことかというと…ネタばれといっても、これは書きたくない。間違って文章が目に入るといけないし。
ラストで明かされたこと。みんなにとって、よかったのではないだろうか。
とくにサラと彼女の家族にとって。
帰り道、ラストシーンを思い出して、また泣いていた。
見た映画の内容を忘れがちな阿呆の私の、忘れられないラストシーンのひとつになるかもしれない。
…いま書いていて思い出しても泣けるし。