家族って、すごいなあと感動する。
物語はごく単純で、津波に遭った一家5人が、苦難の末に…というもの。
日本では大きな津波の被害が記憶に生々しいので、いろいろな意見が本作に対してあるようだが、あくまでも「映画」としての観賞である。
まず、あれっ?と思ったのが、地震が起きずに、いきなり津波が襲ってきたこと。
2004年のスマトラ島沖地震のときの実話で、このとき、実際に地震の揺れを感じなかったのは、場所によるのかどうか分からないが、間違いではないらしい。
母と長男が、もがきながら、抵抗しながらも、漂流物にぶつかりつつ、流されていく描写が、おそろしいほど真に迫ってくる…。
母親役の
ナオミ・ワッツさんが、傷だらけのメイクで熱演。
「マルホランド・ドライブ」から、ずっと彼女のファンである私が見てきた、彼女の映画のなかでも、かなりいい演技と感じる。
演技といっても、大けがを負ったために寝ていることが多いのであるが。
自分の具合は悪い、そんななかでも、そばにいる息子を気遣う気持ちや、家族への思いなどが表情でうかがえる。…逆に、表情や声だけで表わさなければいけないのだ。
母親といっしょにいる
長男が、じつのところ、この映画の主役といえる。
母はベッドから動けないとなれば、どうしたって彼がひとりで行動せざるをえない。
この長男の成長物語という側面が大きい作品なのだ。
そして、この子(トム・ホランド)が、かっこいいのだよ!
次男も幼いなりに、三男の世話をしなければならず、いやがおうでも、たくましくなる。
自然災害の大きな力には、ほとんど、なすすべもないけれども、そのなかでも見られる、いや、そんななかでさえも見られる
「人間の愛や思いやり」は、このうえなく尊く、見ていて何度も泣けてしまう。
この映画は、ほぼ1家族5人のことを中心にしてしか描いておらず、もっと悲しく悲惨な場面が山のようにあったであろうことは忘れてはならないだろうが、「この一家が遭遇した途方もない体験」に焦点をしぼって映画にしたということでいうなら、見事な作品といえる。。